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八戸タウンミーティング/『やらせ質問』の舞台裏(東京新聞)
http://www.asyura2.com/0610/senkyo27/msg/1377.html
投稿者 gataro 日時 2006 年 11 月 10 日 22:19:12: KbIx4LOvH6Ccw
 

(回答先: 「民」を偽装した教育関係者の大量動員が判明した(保坂展人のどこどこ日記) 投稿者 セーラー服ときかんぼう 日時 2006 年 11 月 10 日 21:06:18)

http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20061108/mng_____tokuho__000.shtml から転載。

八戸タウンミーティング 
『やらせ質問』の舞台裏

 今年九月に青森県八戸市で開かれた政府の「教育改革タウンミーティング」で、内閣府が同市教委などを通じて複数の出席予定者に、教育基本法に賛同する質問を依頼していたことが発覚した。同法改正は今臨時国会での審議が大詰めを迎えているが、法改正論議の裏で画策された“やらせ質問”はゆゆしき事態だ。参加者らの証言をもとに、“やらせ質問”の舞台裏を検証した。 (片山夏子、宮崎美紀子)

■教基法改正へ文科省が3案

 「教育の原点は家庭教育だと思います」−。

 九月二日に青森県八戸市で開かれたタウンミーティングで、PTA関係者が切り出した質問に、五十代の男性高校教諭は「(発言を頼まれたのは)この人か」と直感したという。

 前日、県高教組(県高等学校・障害児学校教職員組合)から、内閣府が「質問項目案」を事前に示しているというメールを受け、このPTA関係者の質問の冒頭が三番目の質問案と酷似していたからだ。

 質問は、「PTA関係の方を」と司会者が促した直後で、「会場では他にたくさん手があがっていた」。

 また、男性教諭は質問案などを見て「ここまで国がやるのか」とがくぜんとした。三つの質問項目はすべて教育基本法改正に賛成で、「改正を一つのきっかけとして」「教育の原点はやはり家庭教育だと思います」などの部分に下線が引かれていたためだ。

 別のPTA関係者の「やはり変えるべきところは時代に即した形で変えていくべきではないか」との発言にも後で質問項目案と類似した点に気付いたという。

 一方、学校から参加を呼びかけられて出席したという中学校の女性教諭(49)も、違和感を覚えた一人だ。

 会場からの質問は一人二分に限定されていたが、「文科相ら主催者など壇上からの回答は長々で、タウンミーティングと言いながら、意見交換ではなく、政府の宣伝の場のようだった」と指摘。さらに、「親の立場で学校から頼まれたり、政府から言われたりしたら断れない。教育が時の政府に利用されないために今の教育基本法があるのに、こんなやり方で現場の声をつくっていくのか。これが八戸だけのことであるはずがない」と憤る。

■『一から議論やり直せ』 

 青森県教職員組合の平戸富治執行副委員長も「これがやらせでなくて何なのか。国民の意見を聞くと言いながら、こんなやり方で改正を進めるのか。一から議論をやり直すべきだ」と怒る。

 高教組の谷崎嘉治執行副委員長は、質問依頼者の一人が「結果として加担したことを悔やんでいる」と話していると聞き、「現場の教員からの連絡がなければ、問題は発覚しなかった。質問依頼者の座席の位置まで確認して、これを発言しろと言ったらやらせでしょう。これは氷山の一角」と語った。

 こうした参加者や教育関係者の指摘に対し、行政側はどう答えるのか。

 同県教委の白石司報道監は「主催する内閣府の依頼をそのまま伝えるのが私たちの役目だと思った。やらせという認識はない」と話す。

 だが、八月二十四日、内閣府から市教委あてに、「文科省の希望で、あと三人、発言者を増やしたい。この三人については、発言内容を文科省から提示するので、その内容について発言してほしい」とのメールが届いていた。市教委の担当者は「論点整理してタウンミーティングを開きたいのだろうと、まず思った」と説明したうえで、具体的な質問内容が記載されていたことについて「ここまでお願いするのは、どうなのか」と疑問を感じたという。

■発言者“指名”10人中6人

 また、「質問案を見せられた人も、自分の意見を述べてくれたと思っているが、『やらせ』と見られてしまい、発言した人にも申し訳ない。また、たくさんの人が手をあげてくれたが、(最初に質問依頼した四人を含む)計六人を指名することになってしまい、結果的に他の発言者の機会を少なくしてしまった」と認めている。

 国民との意見交換の場であるはずが、実際は、国、地方の役所がシナリオを組んでいたことになるが、労働省(現厚労省)の元キャリア官僚である中野雅至・兵庫県立大学大学院助教授は「国の役人の意識を考えると、不思議でも何でもない」と言い切る。

 「国は、直接住民の意識を吸い上げる気も経験もない。住民の意見は水面下で聞き、表舞台はシャンシャンで済まそうという根回し文化が強い。質問が出なかったり、想定外の発言が出て大臣に恥をかかせることを、国の役人は相当恐れる」と中野助教授。政治的な意図による用意周到な「やらせ」ではない、と見ている。

■棒読みしないで…指導

 道路関係四公団民営化推進委員会の委員をつとめた拓殖大学の田中一昭教授は「いかにも役所のやりそうな話。『棒読みをしないでください』などと指導するのは明らかにやりすぎ。タウンミーティングそのものの意味を失わせる行為だ」とあきれる。

 さらに「今は、こういうことがあれば、内部告発などで、すぐに外にばれるということを理解していない。昔のように、国から県や市へと、上から下へ命じればいいと思っている時代錯誤の文部科学行政をかいまみる思いだ。今回のタウンミーティングの問題は、いじめや必修逃れなど、教育行政の問題の根っこに、文科省の時代遅れの体質があることを、いみじくも表したのではないか」と批判する。

 一方で、ある程度のストーリー作りは許容範囲と理解を示す声もある。明治学院大の川上和久教授(政治心理学)は「やり方はお粗末だが、教育基本法のようなデリケートな問題は、反対派の政治的アピールの場にならないように、バランスを配慮しておくことは、考えられる」と話す。

 その上で「タウンミーティングの参加者が自由に意見を戦わせる場になっているのか、という本質的な問題がある。活発な意見交換が行われているのなら『やらせ』が入り込む余地はないはずだ」と指摘する。

 二〇〇一年から始まったタウンミーティングは、これまで百七十回以上行われてきた。川上教授はマンネリ化を懸念する。内閣府の資料でも「可能な限り若者、女性、学生を。通常の主な参加者は40以上の男性が中心」という記述があり、“演出”に苦労していたことがうかがえる。

 「今まで足を運んでいない人も、こういうテーマなら自分も意見を言わなきゃ、と思わせる努力が必要だ。地元自治体も、国の主催だから、という意識ではなく、例えば、そのテーマについて自分たちの町の現状はどうなのか広報紙で特集を組むなど、政策の認知ををはかり、啓発することを考えるべきだ」

■やらせ質問の経緯

 内閣府は八月中旬、八戸市教育委員会と青森県教育庁を訪ね、対話のきっかけになる意見を述べる「依頼発言者」を事前に探すよう依頼。「依頼発言者」は、テーマの趣旨への賛成・反対は問わず、市教委への依頼文書でも「『さくら』ではないため、その発言を強制はせず」としていた。市教委は四人を探し、内閣府に伝えた。

 ところが八月二十四日、内閣府は、文科省作成の発言案に沿って質問してくれる人を、新たに三人探すよう、市教委に依頼。文科省作成の三項目からなる質問項目案が、市教委に届いたのは、開催三日前の同三十日だった。

 市教委は、市連合PTAを通じて、三項目のうち一項目目と三項目目に賛同する二人を見つけたが、あと一人(二項目目に賛同する人)が見つからず、県教委に協力を仰いだ。

 同三十一日、内閣府が市教委へ「棒読みにならないように」「依頼されたことは言わないでほしい」等の注意点を発言者に伝えるように指示。

 当日、市が依頼した二人は出席して発言、県が依頼した一人は欠席した。

<デスクメモ> 中央省庁の各種審議会などの議論をみれば、最初に答えありきを思わせる事例は少なくない。省益となる結論への誘導は官僚のお手のものだが、これだけ証拠が明白なやらせ行為は珍しい。ファクスでの現場のやりとりも稚拙だが、国家百年の計の改正論議でのやらせ質問はあまりにも非教育的で、情けない。 (吉)

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