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安倍「あいまい・変節」戦略の波紋 [文藝春秋]
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投稿者 white 日時 2006 年 11 月 10 日 10:22:01: QYBiAyr6jr5Ac
 

□安倍「あいまい・変節」戦略の波紋 [文藝春秋]

▽安倍「あいまい・変節」戦略の波紋(1)

 http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20061110-01-0701.html

2006年11月10日
安倍「あいまい・変節」戦略の波紋(1)
若き宰相の政治手法は“変人”小泉より、“風見鶏”中曽根に似ている
「私は大の映画ファンです。初めてのデートで観た映画は今でも憶えていますが、家内の手前、題名は言えません」
 十月二十一日夜。六本木ヒルズの一角、グランドハイアット東京での東京国際映画祭の開会セレモニーに登場した首相・安倍晋三は軽妙な挨拶で沸かせた。新政権が船出してほぼひと月。浮沈をかけた衆院ダブル補欠選挙の投票が翌日に迫る中、若き宰相の余裕を目一杯、演出して見せた。
 この日中、安倍は富ケ谷の私邸を動かなかった。神奈川十六区は自民党勝利が見えたが、大阪九区は接戦が伝えられた。何としても二勝が至上命題。最後のお願いに前週末に続く大阪への「安倍再投入」も浮かんだが、見送った。北朝鮮の不穏な動きに備えた危機管理を口実にしたが、本当は再度現地入りして負ければ打撃が大きすぎる、と安倍は慎重に腰を引いたのだ。
 翌二十二日夜、安倍も司令塔の幹事長・中川秀直も愁眉を開いた。首相就任直後の中韓電撃訪問でアジア外交を一挙に打開し、勢いでダブル補選を勝ち切る──二人があうんの呼吸で描いてきたロケット・スタート戦略はとにかく、当たった。九日朝、安倍が北京からソウルに飛び立った直後を狙ったような北朝鮮の核実験は皮肉な追い風となった。内閣支持率は七○%を超え、安全保障上の危機に与野党を通じて安倍倒閣の策動は当面、封じ込まれた。
 ただ、中川は開票結果に気を引き締めた。関心の低い補選で投票率は急降下。特に神奈川で顕著だが、両区とも得票数、得票率ともに昨秋の郵政選挙より民主党に差を縮められた。各紙出口調査によれば、大量の無党派層が棄権し、投票した無党派層のうち約六割が民主党に流れた。前首相・小泉純一郎のように無党派層を引き付ける「何か」が安倍には欠けていないか。そんな不安も消えてはいない。次の関門、福島と沖縄の両県知事選も厳しい情勢が続く。
 東アジア積極外交は内閣支持率を跳ね上げた半面、安倍に重荷も背負わせた。
「私が靖国神社に参拝したかしなかったか、するかしないかについて申し上げない。双方が政治的困難を克服し、両国の健全な発展を促進するとの観点から、適切に対処する」
 十月八日、北京で国家主席・胡錦濤、首相・温家宝、全人代常務委員長・呉邦国の中国三首脳と相次いで会談した安倍は、靖国神社への参拝問題を巡って誤解を与えないよう、三首脳に同じ台詞を繰り返した。
 靖国に行くか行かないかはっきりさせずに中国側と折り合おうとする「あいまい戦略」。安倍は「在任中は参拝しない」とまで密約してはいない。ただ、官房長官だった四月に敢行したような極秘参拝は、昼夜を問わず番記者が張り付く今後は不可能に近い。となると、この戦略は結局、「行かない」間しか成り立たない。行けば即、対中関係が崩れるリスクは何も変わらない。
 日中外交当局は安倍訪中の成功を受け、来年早々の温家宝の訪日へ向けて調整に入った。その後に胡錦濤訪日もにらむ。安倍は政権の命運をかける来年七月の参院選までは対中外交の立て直しを優先する。さらに胡錦濤が江沢民一派を抑えて権力基盤の完成を狙う来秋の中国共産党大会まで靖国参拝を自重する選択肢も視野に置く。ただ、その先、来年中に一度も参拝しないままだと、小泉時代に「次の首相も必ず参拝すべきだ」と公言してきた政治信条からの「変節」批判は決定的になる。この矛盾をどう克服するのか、いずれ問われる。

「造反組」の復党は?
「あいまい戦略」と「変節」はこのひと月半の安倍の政権運営の至る所につきまとう。
 無党派層にウイングを広げるより、自民、公明両党の支持基盤をガッチリ固めて二勝したダブル補選は逆に参院選の厳しさを浮き彫りにした。そこで、特に地方の一人区での勝利を確実にするために、総指揮官の参院議員会長・青木幹雄を中心に、郵政民営化法案に反対して離党した「造反組」の復党を急ぐ動きに拍車がかかった。
「首相指名選挙で私を指名し、所信表明演説の方向性に対して同じ考えを持っている人たちにどう対応するか、幹事長をはじめ党本部で対応していきたい」
 二十三日夕、安倍も中川に具体的な調整を進めるよう指示したと記者団に明かし、復党容認への傾斜をにじませた。昨年の郵政選挙で無所属で当選した十三人のうち野呂田芳成を除く平沼赳夫、堀内光雄、野田聖子ら十二人は首相指名で「安倍晋三」と書いており、第一の条件は問題ない。
 所信表明演説についても、「美しい国創り」「イノベーションの力とオープンな姿勢」「成長なくして財政再建なし」「主張する外交」など、抽象的なスローガンの羅列なので、障害にはなりそうもない。
 安倍は総裁選圧勝を見越してA4でたった四枚、項目だけを並べた政権構想しか示さず、所信表明でも「政治姿勢を明らかにする」の名の下にほとんど具体的な政策を語らなかった。踏み込んで言質を取られ、手足を縛られるのを警戒したゆえの「あいまい戦略」だが、巧まずして造反組の復党のハードルを低くする効用も持っていた。


▽安倍「あいまい・変節」戦略の波紋(2)

 http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20061110-02-0701.html

2006年11月10日
安倍「あいまい・変節」戦略の波紋(2)
若き宰相の政治手法は“変人”小泉より、“風見鶏”中曽根に似ている
「党の方針を完全に支持することが必須条件だ。それに郵政民営化も当然、入る」
 安倍発言を受けて中川はこう強調したが、既に昨年秋の特別国会で小泉が再提出した郵政民営化法案に、十二人のうち平沼を除く十一人は苦渋の選択で賛成票を投じており、平沼の扱いが焦点になってきた。
 ほんとうは造反組の罪状は郵政民営化法案への反対だけではない。その後の解散・総選挙で党公認がないのに、公認を受けた刺客候補に対抗して立候補したこと自体に反党行為の烙印を押された。ただ、平沼や古屋圭司ら造反組に思想信条が近く、親しい議員が多い安倍は小泉の刺客戦術に当時から距離を置いていた。組閣で閣僚や副大臣に小泉チルドレンを一人も登用しなかったのも造反組への親近感の表れだ。
 さすがに刺客戦術の先頭に立った前幹事長・武部勤は「参院選で数合わせをする自民党というイメージだけは避けなければならない」とクギを刺した。二十四日、首相退任後はほとんど雲隠れ状態の小泉から「特定郵便局長とか既得権者の票を当てにしたら絶対勝てないぞ」との「ご託宣」も引き出したと触れ回った。一方、岡山選挙区で平沼の支援がないと当選が危うい参院幹事長・片山虎之助は記者会見で「大きな政治課題を処理していくためには勢力大結集が必要だ」と武部を一蹴、早期復党への圧力を一段と強めた。
 安倍の思い切った「変節」は総裁選まで支持基盤の最もコアな部分を形成してきた保守派の陣営にも混乱を引き起こした。
 民主党代表代行・菅直人「首相は従軍慰安婦に関する一九九三年の河野洋平官房長官談話を受け継いでいると言うが、首相自身が受け継いでいるのか」
 安倍「当然、私は首相ですから、私を含め、政府として受け継いでいる」
 菅「歴史認識に関する村山富市首相談話も踏襲すると発言したが、内容も首相の考え方ということか」
 安倍「韓国の方々、中国の方々をはじめ侵略をされた、植民地支配にあったと。まさにわが国が閣議決定した、国として示したとおりだと私は考えている」
 十月五日の衆院予算委員会。八日からの中韓歴訪を目前に控えた安倍は菅の追及に、かつて疑念を呈した河野談話も村山談話も引き継ぐ姿勢を明言した。主要紙が「安倍個人としても踏襲」と報じたため、安倍のブレーン五人衆の一人、伊藤哲夫が所長を務める保守系団体、日本政策研究センターはホームページであわてて「悪意の『誤報』に惑わされるな」と安倍の歴史認識は変わっていないと釈明するはめに陥った。
 続いて波紋を広げたのが十八日に発足した安倍直轄の教育再生会議の人選だ。
「果たしてこのメンバーで安倍首相が総裁選で掲げた教育再生の具体策を示すことができるのでしょうか」
 五人衆の一人、高崎経済大教授・八木秀次が立ち上げた民間組織、日本教育再生機構はホームページで「左翼的主張を繰り返してきた」ヤンキー先生こと横浜市教育委員・義家弘介が事務局中枢に入ったことに「強い疑問」を表明した。委員になった元文部事務次官・小野元之を「ゆとり教育導入時の次官」と指弾し、文部科学省寄りの色が濃い顔ぶれに失望をあらわにした。
 民主党代表・小沢一郎「就任前は自分の思いを素直に語っておられた。就任後は何かに包んでおられる印象だ。言語明瞭、意味不明瞭と言われた人もいますがね」
 安倍「亡き父は小沢さんと私が論戦するなど想像だにしなかったでしょう」
 十八日の初めての党首討論。論戦の冒頭、小沢は「言語明瞭、意味不明瞭」と言われた元首相・竹下登に安倍をダブらせ、皮肉って見せた。安倍は小沢が亡父・晋太郎と親しかった話を持ち出して「旧世代の政治家」のレッテルを貼り、やり返した。

小泉とは対極
「若い政治家と、首相という重い立場と。やはり、よく考えて話さないといけないということをやっと安倍君は分かってきた」
 政治家にとって「変節」は必ずしもマイナス要因とは限らない。安倍の後見人を自任する元首相・森喜朗は、無難な滑り出しに及第点を付ける。安倍が教育再生会議の座長にノーベル賞学者でリベラル派の野依良治を据えるなど中道色に腐心した裏には文教族のドン、森への目配りものぞいた。「参院選で勝ったら、好きなようにやればいい」と説教する森の目に、「変節」は、宰相に必須の「君子の豹変」であり、権力を維持するしたたかさと好ましく映る。


▽安倍「あいまい・変節」戦略の波紋(3)

 http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20061110-03-0701.html

2006年11月10日
安倍「あいまい・変節」戦略の波紋(3)
若き宰相の政治手法は“変人”小泉より、“風見鶏”中曽根に似ている
 十九日、衆院本会議の後、国会内の自民党幹事長室に小泉がふらりと現れた。
「昨日の党首討論を見ても小沢は怖くないだろ。安倍さんはね、あんまり小沢攻撃なんかやらないほうがいいよ」
「参院選に向けた秘策は社会保険庁の民営化だよ。郵政と一緒だ。四十五分働いて十五分休憩、なんて民間じゃ考えられないだろ。これで演説すれば必ず勝てるぞ」
 小泉は居合わせたチルドレンの一人に参院選対策をこう説いて見せた。
 だが、「小泉継承」を旗印に総裁選で圧勝した安倍はどうやら、小泉流とは全く異質の権力者の相貌を見せ始めている。
 小泉は郵政民営化でも靖国参拝でも、まず自らの政治信条をマニフェスト(政権公約)に公然と掲げて政権運営の旗印を立てた。その賛否で敵味方を峻別して閣僚・党役員人事を断行し、反発を押し切ってでも構造改革を推進。最後は「国民に聞いてみたい」と郵政解散まで突き進んだ。
 総裁選の政権構想から「あいまい戦略」に徹し、政権基盤安定のためには「変節」をも厭わない安倍流はそれとは対極に位置する。議員歴十三年の初の戦後生まれ宰相という清新なイメージとは裏腹の老獪さと超がつくほどの現実主義が際立っている。
 電撃アジア外交、靖国参拝を巡る慎重姿勢への転換、「成長なくして増税なし」路線、そして「戦後レジーム」からの船出──安倍と二重写しになるのは小泉ではなく、元首相・中曽根康弘だ。就任直後の電撃訪韓、靖国公式参拝の断行から中止への急転回、「増税なき財政再建」路線、スローガンは「戦後政治の総決算」。悲願とする憲法改正まで含め、瓜二つなのだ。
 ただ、中曽根の場合、やはり首相直属の臨時教育審議会を設けて取り組んだ教育改革は竜頭蛇尾に終わった。「増税なき財政再建」「大型間接税は導入しない」という公約も後に覆して消費税の原型である売上税の創設を目論み、失敗している。
 北朝鮮の核実験と並ぶ安倍への追い風は、十一月中旬にも経済財政担当相・大田弘子が宣言する戦後最長のいざなぎ景気(一九六五―七○年)を越える五十八カ月目の景気拡大だ。家計の実感は薄く、格差の拡大も言われる「いざなぎ越え」に内実を与えようと安倍は「成長重視」でひた走る。
「少子高齢化による人口減少、財政再建、格差。そういった問題を解消していくためにもやはり力強い成長が大切だ。成長なくして財政再建もないし、日本の未来もない」
 十月十三日、新政権最初の経済財政諮問会議。安倍は冒頭から檄を飛ばした。
 経団連会長・御手洗冨士夫「経済財政運営の理念は『成長なくして日本の未来なし』だ。創造と成長を目指して議論したい」
 経済産業相・甘利明「首相が述べている『成長なくして財政再建なし』は意義深い」
 財務相・尾身幸次「企業の国際競争力を強化しないと成長を実現できない。税制の見直しをしっかりやらないと」
 民間議員四人を代表して御手洗が「成長なくして未来なし」を宣言すると、総裁選の論功行賞で経済閣僚を射止めた甘利や尾身は民間出身の大田を差し置いて「我こそは成長戦略の司令塔」とばかりに成長政策を礼賛、安倍への忠誠心を競い合った。
「少し耳ざわりが良すぎないでしょうか」
 ただ一人、異論を唱えたのは日銀総裁・福井俊彦だった。
「成長の実現までには時間がかかる。イノベーションもむしろ、所得の差をさらに広げることを覚悟しておかねばならない」
 安倍路線の危うさを突くような物言いだった。内閣府が十八日に議事要旨を公表すると、自らのブログで安倍に成り代わってただちに福井を恫喝したのは中川だった。
「総裁選で圧倒的多数が支持した安倍の基本理念を『耳ざわりがよすぎる』とは政治的意味合いを含んでいる可能性があるのかないのか」
「党務を預かる私と意見が異なるのは構わない。しかし、安倍首相との意見の相違があるのかないのか」
 経済政策でも司令塔をうかがうのはやはり中川だ。年内にも再利上げをにらむ福井日銀が成長政策の「抵抗勢力」として血祭りに上がる気配が漂い始めた。(文中敬称略)

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