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始めから地上に道はない(保坂展人のどこどこ日記)
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投稿者 天木ファン 日時 2006 年 11 月 06 日 17:35:47: 2nLReFHhGZ7P6
 

始めから地上に道はない

身辺コラム / 2006年11月06日


永田町の世界に身を置いてから、10年の節目を迎える。1996年9月に土井たか子党首が村山富市元総理からバトンタッチする時の協議に立ち会った私は、9月30日に立候補することになり、10月20日に当選して、11月7日に初登院した。ふりかえれば10年の月日は、一瞬の風塵と共に、猛進するジェットコースターのごとく過ぎ去った。政治家のひとりとして申し訳ないことに、政治の現場は5年5カ月の小泉時代をへて劣化し、国会の場が機能不全に陥っている。もはや、10年前に言われた「政治不信」という言葉も聞かれなくなった。「劇場」という媚薬を味わった政治家が、「政治ネタ」を笑い飛ばし、「お笑いより面白い永田町」めがけてひた走る。

10年間は長く苦しい持久戦だった。徒労と挫折、いくらかの成功と希望を噛みしめながら、戦いは間断なく続いた。「自社さ」政権時代は、自民党との連立を揶揄されながら、「日米ガイドライン=周辺事態法」の整備や「盗聴法」に反対し、「NPO法案」や「情報公開法」「国家公務員倫理法」を推進した。「脱官僚支配」の政治をめざす少数与党の苦悩があったが、霞が関を監視するシステム構築をめざした。98年、社民党は連立離脱を決断。その後の参議院選挙後にやってきた「金融危機」、そして自民・自由連立、さらに公明も加わった「自自公巨大与党」時代が始まった。

99年は怒濤のように、「周辺事態法」「憲法調査会設置法」「住民基本台帳法」「国旗国歌法」「盗聴法」などが巨大与党の手で成案をみた年だった。社民党が連立政治の中で止めてきた堰が崩れて、濁流は波打って勢いを増した。00年には、解散直前に森総理の「神の国発言」があり、社民党も19人と議席増をはたした。この選挙の後で、私は衆議院議院運営委員会のオブザーバー理事となり、1年半を院内と呼ばれている国会議事堂の中で終日過ごした。与野党解決の最前線である「議運」の場での経験は、与野党国会対策委員会の主なメンバーの構成や習癖も含めて、奥深い国会運営の妙を知るいい機会となった。

01年春。不評だった森政権の10%を切った低迷する支持率から、100%に近い90%に近い支持率を勝ち得た小泉政権の登場は、まさに「野党の不覚」だったと思う。その年の都議会議員選挙・参議院選挙で自民党は圧勝する。「聖域なき構造改革」という看板を掲げて、野党の主張を吸引する形で小泉政治は「与野党支持者」を惹きつけることに成功した。そして、失速しかけた頃に世界を驚愕させたアメリカでの同時多発テロ事件(真相には疑問の声があがっているが)でふたたび持ち直す。

北朝鮮核実験に揺れた臨時国会の冒頭から後半戦に入ろうとしている今、この国の民主主義を根幹から揺さぶる「右寄り」の政策メニューを隠し持った安倍政権が誕生した。先週、行った「いじめ自殺ゼロの原因追及」の論議こそは、私が20代から30代にかけて10数年にわたって取り組んできたテーマそのものである。きりもみ状態の中で、突き抜けるような青空を探して今日もひた走る。

そんな時、「絶望の虚妄なることまさに希望と相等しい」(魯迅)の言葉通り、本当の闇は、希望を打ち捨て、すべてをあきらめた時に訪れるのだと自分に言い聞かせつつ。今年になってから、応援してくれる人の輪が一段とふくらんでいる。まだ、細いささやかな流れかもしれないが、途絶えていないことが重要だ。安倍政治という太い流れに対抗しながら、誰もが行かない道を徒手空拳で私たちは切り開きたい。心の中で、こう唱えながら、だ。

始めから地上には道はない。多くの人が歩き、それが道となる。(魯迅)


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