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社説:中南米選挙 階層分裂の流れに歯止めを
ブラジルの大統領選挙で貧困対策を優先する左派、労働党のルラ氏が2002年に続いて再選された。昨年11月から今年末まで中南米では12カ国で大統領選挙が続く。いずれの国も貧富の格差が大きな争点になっている。
中南米は80年代から90年代にかけて、規制・補助金撤廃など市場競争重視の新自由主義に経済運営を切り替える国が相次いだ。21世紀に入り、経済成長は回復しても、格差はむしろ広がり、各国で社会の階層分裂が懸念される状況だ。「左派政権」と単純に表現される場合が多いが、実際は民営化から福祉まで左右両派の政策を組み合わせている。新自由主義の推進だけでは国内の不満は解決できず、既成体制の打破を主張する政治家が人気を集める傾向がある。
ルラ氏は労働者から国家指導者に上り詰めた出世物語が支持された。勝因の筆頭は「ボルサ・ファミリア」という家計支援制度。子供の通学を条件に、貧困家庭に毎月最大約5000円を直接、支給する。反対派は「福祉のバラまき」と批判したが、受給者は1100万世帯に達しルラ氏の票田となった。貧しい農民が多い北東部で圧勝したが、比較的豊かなサンパウロ州など南部では勝てなかった。貧富の分裂だけでなく南北の地域分裂も反映した選挙だった。
ブラジルはロシア、インド、中国とともにBRICsと呼ばれ、21世紀の大国に成長すると注目されている。だが、ルラ政権1期目の年平均成長率は2%台にとどまり、インドや中国のような高度成長は実現していない。1億8000万人の人口と豊かな資源が持つ潜在力を引き出し、貧困層の自立を促す指導力に期待したい。
人口が1億人を超えブラジルと並ぶ地域大国メキシコでは、7月の大統領選挙で当選した中道右派、国民行動党のカルデロン氏が12月、就任する。野党の左派候補との得票差はわずか0・58%で、ほぼ同数の国民が左右に分裂した結果になった。親米路線のカルデロン氏は、対米輸出の工場が多く成長率も高い北部で支持されたが、貧しい南部は野党が制した。ブラジルと共通する南北分裂だ。発効から12年たつ北米自由貿易協定は米国との経済一体化を進め生活水準を上げる狙いだが、貧困率は47%と高く、米国での仕事を求め国境を越える国民が続出した。国内雇用を高め移民しなくてすむ成長を作り出すことが課題だ。
各国の選挙では、メキシコやコロンビアで保守・中道右派が勝利し、ブラジル、ペルーやチリでは左派・中道左派が勝った、とされる。米国では、チリやブラジルなど市場経済で現実路線の「良い左翼」と、ベネズエラやボリビアのような反米急進派の「悪い左翼」に分ける左派二分論が議論されている。レッテルを張って色分けするより、各国ごとに異なる事情に目を向け社会の分裂を防ぐことが重要だ。エネルギー、鉱物、食糧と資源が富み、33カ国計5億6000万人の中南米は日本にとって大事なパートナーであり、きめ細かい交流を重ねたい。
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/shasetsu/news/20061106k0000m070107000c.html
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