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族議員ぞろぞろ登用の危うさ [東京新聞]
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投稿者 white 日時 2006 年 9 月 30 日 10:19:32: QYBiAyr6jr5Ac
 

□族議員ぞろぞろ登用の危うさ [東京新聞]

 http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20060928/mng_____tokuho__000.shtml

族議員ぞろぞろ登用の危うさ

 26日に発足した安倍新内閣。閣僚には、総裁選の論功行賞の末、念願のポストを射止めた族議員も少なくない。小泉政権下で鳴りを潜めていた族議員主導の政治や、封印されてきた予算のばらまきは復活しないか。迎える省庁側にも歓迎と戸惑いも相半ばするが、族議員の大臣起用の危うさを探った。 (山川剛史、片山夏子)

 「民主党は食料自給率を100%にするというが、一体どれだけの耕作地が必要になるか。農業に十二兆円の補助金を出すともいうが、国際的な流れとは逆だ。責任ある政党の言うことなのか。補助金のいらない世界に冠たる日本農業をつくっていきたい」

 二十六日深夜、農林水産省内で記者会見に臨んだ松岡利勝農相はこう熱弁をふるった。

 安倍内閣では、特定分野で業界や省庁の主張を代弁してきた族議員の入閣も少なくないが、農水族といえばまず名前が挙がる松岡氏はその典型だ。林野庁OBでもあり、貿易自由化の流れをつくった約十年前のウルグアイ・ラウンドをめぐっては、コメの部分輸入と引き換えに、国内対策費(補助金)の増額に奔走するなど守旧派イメージが強い。ただ、会見では国際派であることを再三にわたって強調した。

 自民党内では「農業も自由化の流れは確定的で、守り一辺倒では立場がない。松岡氏は小泉政権になったころから大きく変わった」というのが定説。農水省内には、かつて補助金などをめぐって松岡氏から怒鳴られた経験者が何人もおり、どちらが新大臣の本当の姿なのか見定めようとの雰囲気も見える。

 「論功行賞内閣と言われると私の立場がない」

 経済産業相に就任した党前政調会長代理の甘利明氏。二十六日の閣議後の記者会見で、新内閣の顔ぶれについて「適材適所、仕事師内閣と言ってもらいたい。それぞれの持ち味をいかしたエキスパートが対応している」とアピールした。

 小渕内閣で労相を務めたが、党内では、商工部会長などを歴任した有力な商工族として知られる。経産相は待ちに待ったポストだけに、「ご指名は大変ありがたく思っている」とほくほく顔で、「経済産業施策は私のライフワーク」と繰り返した。

 甘利氏は、自民党の企業統治委員会の委員長として、ライブドア事件対策に取り組み、不公正取引や粉飾決算の罰則強化などを推進。その一方で、もめにもめた貸金業の上限金利問題では、「業界寄りの対応」(同党関係者)も指摘されていた。

 貸金問題を問われた二十六日の会見では「上限金利を下げることですべて解決するという発想はよくない。まずは総額管理をし、これ以上借りることができなくすることが大切」と述べ、違法取り立ての厳罰化の必要性などを訴えた。

 安倍内閣の重点政策の「再チャレンジ支援策」。各省庁の概算予算要求額が約一千億円にのぼり、歳出カットの流れとは逆に、族議員による予算ぶんどり合戦の様相を呈している。経産省でも、再チャレンジ支援窓口相談事業として約十四億円を予算要求しているが、甘利氏は「能力向上の手だてを作り、人生のあらゆる段階で再チャレンジできるようにすることが大事」と意欲をにじませた。

 それでは、こうした有力な族議員を迎える省庁の反応はどうか。
 農水省の幹部は「農水の強力な応援団長が来てくれた、という思いはあるが、かつて大声で怒られた記憶が消えない。農水族がトップになって予算が簡単に増えるわけもなく、やりやすいかと聞かれれば微妙だ」と複雑な心境をのぞかせる。
 別の幹部は「野心家なので、すぐにも実績を安倍首相に示したいはず。来年には参院選があり、目に見える施策をすぐ出せと言われるだろう。かなり厳しいことになりそう」と警戒心もにじませる。
 農林水産業への就業者増を狙った支援を大幅拡充して予算要求している「再チャレンジ支援策」については「族議員が大臣だから有利とは思わないが、そこは知恵の出しどころ」との声も聞かれた。
 経産省のある官僚は、有力な商工族でもある甘利氏の就任について「100%ではないが、省内は大歓迎だろう」と話す。甘利氏が政調会長代理をしてきたことに加え、「エネルギー問題などをはじめ事情に詳しい。持論があり、他の官僚の言いなりにならず、役所と一緒にやってくれるという意味で省内にとって幸運」。
 懸念は「前任の二階氏に比べ、政治力が弱いこと。閣僚の中でどのくらい力を持てるかがポイント」と言い、「業界とのつながりが深いことはメリットだが、特定業者の優遇につながる危険がある」という。
■即応できる力はある
 経済アナリストの森永卓郎氏は安倍内閣の布陣を見て「来年の参院選まで大過なく過ごす暫定内閣」と断言する。
 「経済財政諮問会議の担当大臣には役人を仕切れない民間人を任命し、財務相は早くも消費税アップの一年先送りを言い始めた。参院選までを何とかしのぎ、勝ったら憲法や教育基本法の改正など一気にやりたいことをやる戦略だろう。だから、今回は論功行賞を最優先して借りを返した。結果として族議員が何人も入った」とみる。
 政治ジャーナリストの山村明義氏は「側近で内閣を固め、やれと言えば即応できる体制」と実行力には一定の評価をしながらも、「その割には喜びでいっぱいのはずの側近の間に不安がのぞいているのが気にかかる」と話す。
■競馬ならオッズ20倍
 族議員の閣僚への起用そのものについては、予算削減により影響力行使の場が封じられているとしてあまり問題視はしていない。ただ、「ポスト安倍が見通せないまま政権に求心力がなくなり、政界が予測不可能なカオス状況になった時が怖い。族議員にとっては好機。だれかが昔ながらの利益誘導をやり始めると、あっという間に族議員政治が幅を利かせることになる」と予測。「新政権を競馬になぞらえると、大半の場合、賭け金のすべてを失うオッズ二十倍」と国民にとっては相当に危険度が高い内閣だと警告する。
 漫画家のやくみつる氏は安倍首相について「経済分野をはじめとして専門性に乏しく、補佐官や族議員などに補ってもらう分野が広すぎる。船頭ならぬ補佐役が多すぎて沈没しなければいいが」。「『族議員』の研究」などの著書がある日本大学法学部の岩井奉信教授も、族議員への対応についてこう危惧(きぐ)する。
 「自民党内では郵政以外は族議員の体制は崩れていない。これまでは、小泉さんが人気で押さえ込んできた。それを、官邸主導のチームでやろうとする安倍氏が、どこまで押さえ込めるかが今後の課題」
<デスクメモ> 司馬遼太郎原作「功名が辻」で、主人公の戦国武将、山内一豊が念願の一国一城の主に出世したのは、関ケ原の合戦直前、居城を東軍に差し出して味方した功名だった。何ごともやるからには徹底的ということか。それに比べりゃ、結果が見えていた自民党総裁選での功名争いも、論功行賞の結果も興ざめだ。 (吉)

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