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いまこそ「平和主義」が生きる 「還暦」迎える日本国憲法(西日本新聞の社説)
http://www.asyura2.com/0610/senkyo27/msg/1102.html
投稿者 スタン反戦 日時 2006 年 11 月 02 日 05:45:28: jgaFEZzEmIsYo
 

http://www.nishinippon.co.jp/nnp/column/syasetu/20061101/20061101_001.shtml

 日本国憲法が3日、公布から60年を迎えます。人間で言えば満60歳の誕生日、還暦です。

 本来なら国を挙げて祝ってもいいところでしょうが、いま、そういう雰囲気はなぜかありません。

 聞こえてくるのは、時代に合わなくなった、憲法が掲げる理念と現実との「ずれ」を何とかしなくては、といった憲法改正論です。

 確かに、近年のこの国の平和と安全をめぐる国際環境や、社会や市民意識の変化を考えれば、憲法の理念や規定と、直面する現実の「ずれ」は、無視できないレベルに達しています。

 その意味では、憲法はその役割が限界にきている、そういう見方もできるかもしれません。いま政治の場で語られている改憲論の多くも、この憲法限界論に拠(よ)っています。

 だからといって、戦後60年、私たちの国を支えてきた現行憲法を簡単に「勇退」させていいとは思いません。この憲法には、まだまだ「現役」として十分に働ける精神と知恵が備わっていると考えるからです。

 むしろ、いまの時代にこそ、この憲法が掲げる「平和主義」の精神と基本原則が生きる。それを生かすことが、この国が今後も目指すべき方向ではないか。私たちはそう考えています。
改憲論を見極める目を

 憲法は「国のかたちと生き方」を支える「国の綱領」とはいえ、社会を律する法制の1つです。

 むろん「不磨の大典」でも、不朽でもありません。国や国民にとって本当に都合悪いところがあれば、改正の是非を論じるのは当然でしょう。

 そのとき大切なのは、憲法を変えたときに「この国のかたち」と私たちの「生き方」がどうなるか、という視点です。言い換えれば、改憲論の中身とそれが目指している方向を見極める眼力が欠かせません。

 例えば、改憲論の焦点となっている「9条」。1項で「戦争の放棄」を誓い、2項でその目的を達するために戦力の不保持を規定し、交戦権を否認しています。

 しかし、現実には世界有数の装備を持つ自衛隊が存在しており「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」とする9条2項の前段規定とは明らかに矛盾しています。現実との「ずれ」を象徴する規定として、改憲論の大きな根拠にもなっています。

 国民のほとんどが自衛隊の存在を是認するいま、現憲法を変えるとなった場合に、憲法上、自衛隊をどう位置づけるのか。そのときは私たちも条文の修正は必要と考えます。

 しかし、9条改正を目指す改憲論が指摘する「現実とのずれ」はそれだけにとどまりません。「交戦権の否認」規定も大きな標的になっています。

 主権国家ならどの国も当然、国を守る権利=自衛権を有しています。「国の交戦権は、これを認めない」とする規定は、そうした個別の自衛権まで否定するものではありません。

 政府もそう解釈していますが、いま政治の場で語られている改憲論は、この自衛権を広げる方向の議論が主流です。日本の安全のために同盟国との共同軍事行動や国際部隊への参加が必要という考えが背景にあります。

 現条文のままでは、海外で武力行使できる集団的自衛権は認められない、という現在の政府見解です。憲法を変えることによって、この「足かせ」を取り払おうというわけでしょう。

 こうした改憲論は、米国同時中枢テロ後の米国の戦略や国際情勢の変化、核をめぐって緊迫する北朝鮮情勢など日本の安全にかかわる脅威の変質や拡大と無関係ではありません。

 もちろん北朝鮮の暴発は食い止めなければなりません。国際テロ封じ込めの国際連携も欠かせません。そのための日米安全保障体制の円滑運用も、極めて重要な問題です。

 だからといって、国際情勢の「現実」に憲法規定を合わせろという論理は短絡的すぎます。国際情勢は時代によって変わるものです。ブッシュ政権の戦略が10年、20年後に米国の政策として引き継がれている保証はありません。朝鮮半島やアジア情勢も大きく変わっているかもしれません。

 確かに、直面する「現実」だけを見れば、9条2項はいま非現実的と言えるかもしれません。しかし、憲法は国際情勢の変化にも耐えられる普遍的な価値を示すものでもあるはずです。

 この憲法があったからこそ、アフガニスタンやイラクへの戦闘部隊派遣を回避できた。言い換えれば、9条の存在が「歯止め」になった、憲法の平和主義が生きた、といえます。

 時の勢いに流されず、そうした視点から改憲論議の中身と方向を見極める。それが、いま何より必要です。

 現憲法が掲げる平和主義、その原点である敗戦を教訓にした「不戦の誓い」だけは絶対に守る。その決意を持ち続けておけば、「変える」にしろ「変えない」にしろ、新しい憲法のあり方もおのずと見えてくるはずです。

 それが、60年の間、私たちの国を支えてきてくれた憲法への恩返しになる。そう、思います。

=2006/11/01付 西日本新聞朝刊=

2006年11月01日00時32分

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