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【あねざきしょうこ】
対話と場
2006年08月23日
あねざきしょうこ
●自由な議論もっと大切に●
夏も終わりに近づいた。私が住む校区の盆踊り大会は、「サマー&サンセットフェスティバル納涼踊り」というゴージャスな名称である。多分、地域の世話人たちが、若い人たちをもっと呼び込もうと、考えた末につけた名前だと思う。
日が暮れて、会場の小学校校庭には、公民館や地元商店街の露店も出た。浴衣を着せてもらった子どもたちがはしゃいで走り回っている。暗がりであやしく光る3色の腕輪が人気で、腕にはめたり、投げ合ったりして遊んでいる。私も3個入りを150円で買ったが、1人でうまくつけられない。低学年くらいの女の子に頼むと「こうやってポキポキと曲げると光り出すんだよ」と得意げに教えてくれた。ここでは、子どもたちは、暗くても知らない人とでも安心して会話している。地域の顔見知りの大人たちが、汗を滴らせて焼きソバを焼き、カキ氷を回し、ヨーヨーや光る腕輪を売っている姿に親しみを抱くのだろう。大人たちが気軽に話せる雰囲気や開放感は、子どもにもちゃんと伝染する。
∞ ∞ ∞
大人同士が気軽に会話できる場所といえば、最近ではカフェやファミレス、なじみの居酒屋などだろう。先日、私は街中のカフェバーで、ある論争光景に遭遇した。内容はともかく、はっしと受けて立つ双方の態度に久々に圧倒された。
「そんなこと私は言ってない! 私の話をよく聞いて!」「いいえ、あなたのわがままな論理を受け入れるわけにはいかない!」
お互い今にも噛(か)み付かんばかりだ。でもどちらも決して相手をののしったりはしない。論争のルールをわきまえている。2人が対等に応酬するのを聞いていて、私にはどちらの主張も正論に思えてくる。やがて店を後にするときは、笑ってさよならを言える、そんな身近に安心して言いあえる場を、私たちはどのくらい持っているだろう。また、子どもが警戒することなく、知らない人とも口をきける場を大人はどのくらい提供できているだろう。
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この国では言いたいことは何でも言える。しかし言いたいことを言いたい時、言いたい相手に、しかるべき場できちんと言えているだろうか。
言うべき相手に自分の思いを伝えられないで、その結果、関係がこわれたりしてカウンセリングに訪れる人は多い。極端に言えば、身近に安心して語れる場があればカウンセリングはなくてもいい。近所の一杯飲み屋、ファミレス、喫茶店といったような、気軽に話ができ、自由に議論ができる場所をもっと大事にして、活用していけばいい。盆踊り大会など、地域の活動を再評価するのも大事なことだ。親しく語る場を得れば、人はまた元気になれる。
祭りの晩、光る腕輪は3時間で消えてしまった。朝目覚めた時、子どもはがっかりするかもしれない。しかし、夏祭りの楽しさが、その小さな記憶から失われることがないよう、大人は身近なところから対話の場をつくっていかなければならない。
(セクシュアリティ・カウンセラー)