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報道に対する脅威 [ル・モンド・ディプロマティーク]
http://www.asyura2.com/0610/hihyo4/msg/525.html
投稿者 white 日時 2007 年 1 月 27 日 12:26:32: QYBiAyr6jr5Ac
 

□報道に対する脅威 [ル・モンド・ディプロマティーク]

 http://www.diplo.jp/articles07/0701.html

報道に対する脅威

イグナシオ・ラモネ(Ignacio Ramonet)
ル・モンド・ディプロマティーク編集総長

訳・土田修

原文
http://www.monde-diplomatique.fr/2007/01/RAMONET/14331

 活字メディアは史上最悪の危機を迎えている。3年前から、フランスだけでなく世界中で、ル・モンド・ディプロマティークを含むあらゆる新聞は、読者が年々減少するという事態に直面している。読者の減少は、新聞社の財政基盤を弱め、ひいては民主諸国における言論の多様性を脅かすことになる。

 たとえば、最近ではフランスの日刊紙リベラシオンが難局に陥った。ここにも、活字メディア全般のおかれた憂慮すべき状況が象徴的に表れている。主要な原因は一体どこにあるのか、可能な範囲で突き止めてみたい。

 まず、「無料紙」の乱入が挙げられる。この呼称は一種のペテンだ。その読者は、情報がタダでつくられていると思っているが、広告を介した課金という目に見えないかたちで「無料紙」の代価を払っているからだ。この課金は、彼らが購入する消費財の値段に組み込まれている。「無料紙」は、ここ数年で、販売部数ランキングの上位に食い込むようになった。その影響は多岐にわたる。多くの人々が有料日刊紙を買うのをやめたこと、広告主が「無料紙」に移り始めたこと、などだ。だが、新聞の収入源の上位2つはキオスク(新聞雑誌の売店)での売り上げと広告である。3つ目が定期購読である。

 活字メディア低落の第2の原因は、インターネットが出現し、音楽、出版、映画、テレビといった文化活動全般を大きく揺さぶったことだ。情報通信の分野もまた例外ではない。最近、フランス24という新しい国際ニューステレビ局が立ち上げられたが、その第一声がまずウエッブ上で流されたのは象徴的だ。ケーブルテレビと衛星放送の開始は翌日になってからだった。報道をチェックするためにインターネットに接続するという人は多い(1)。なかには、それで新聞を買うのをやめた人もいる。彼らもまた、「無料紙」の読者と同様に、キオスクから足が遠のいた。それがキオスク減少に拍車をかけ(2)、あらゆる有料定期刊行物は、いずれも部数がどんどん落ちている。

 インターネットには無料で利用できるサイトが多数ある。自己表現の場(ブログ)を持つこともできる。あらゆるテーマについて容易に意見を交換できる。こうしてインターネットは多くの利用者を魅了してきた。ネットが自由な空間を大きく広げたことは否定できない。しかし、そこに少なくとも2つほど、留保をつけておく必要がある。1つ目の問題は悩ましい。大多数の活動グループは、参加型民主主義という意気込みの下に、ネットを使って密度の濃い議論や討論を内部で実施することに躍起になった。ところが、彼らは細分化され分断され、非力あるいは自滅に近い状態に陥ってしまった。

 2つ目は、アメリカの研究者エリック・クライネンバーグの現状認識である。「インターネットの特徴は長い間、両極端も含めた多様な政治的見解を表明する無数の新サイトの存在にあった。しかし今や、最も人気のあるサイトは強大なメディア企業グループの系列サイトになっている」と彼は書く。それはつまりこういうことだ。情報通信の歴史の常として、18世紀の新聞雑誌や、1970年代の「自由ラジオ」、現在のインターネットといった新しいメディアが登場するたびに、表現の自由が拡大されたような印象が生まれるが、やがて金の力によって牛耳られるようになってしまうのだ。それは標準化への道でもある。既に、検索エンジンの利用によって描き出された読者プロフィールが、潜在消費者を絞り込もうとする業者に売られているような状況だ。

 フランスでは、大手メディアはいくつかの産業・金融グループの傘下に集中している。うち2つは、アシェットを所有するラガルデール、ソクプレスを所有するダッソーという兵器メーカーである。この憂慮すべき事態を見た市民たちが動き出し、反撃のためにル・モンド・ディプロマティークのような独立系メディアの支持に向かうのは、当然のなりゆきだ。

 ここで改めて本紙の資本構成について述べると、半分(51%)はル・モンド・グループが、もう半分(49%)は読者と編集部が持っている。この2つ目の特徴は、フランスだけでなく世界中のメディアの中でほとんど唯一のケースである。それにより、あらゆる政治権力、メディア権力、金融権力からの完全な独立が保証されている。さらに、こうした本紙の特異性が外国で大いに評価された結果、国際版は30言語以上で60あまりを数えるまでに拡大した(3)。これもまた、世界のメディアの中では希有なことだ。にもかかわらず、フランス国内での購読者数、つまり本紙の財政基盤となる販売部数は低下した。

 ル・モンド・ディプロマティークがメディアの分野で闘っていくために、何よりも頼りにしているのは、読者との連帯であり、「ル・モンド・ディプロマティーク友の会」との連帯だ。本紙は新たな出発の決意表明として、次号から数々の新機軸を打ち出していく。事実を尊重するジャーナリズムの姿勢をあくまで保ちつつも、これまでとは違うテーマにも取り組み、新しい欄も設ける。紙面レイアウトを全面的に刷新し、一面トップ記事も変える。これらは、活字メディアが最近乱発しているような「リニューアル」ではない。本紙の編集部が読者のみなさんに向けて発信する、運動開始、結集行動の合図なのだ。

 編集部の既定方針により、紙面に占める広告の比率は、今後も売上の5%に抑えられる。通常は50%を超える他の大多数の活字メディアに比べれば、極めて低い水準である。反対に、5年間据え置いてきた価格は、来月から1部4.50ユーロに引き上げる。ただし、年間購読料40ユーロ、2年間の購読料73ユーロについては、向こう数カ月は変えない。

 情報通信産業の巨大企業に対して非対称戦争を挑んでいる本紙を定期購読することは、抵抗を示す行為であり、本紙を支援くださる最良の方法だ。自由な活字メディア、思想の多様性、現に独立したジャーナリズムへのアンガージュマンだ。画一的な報道という脅威に立ち向かうための、最も効果的な反撃なのだ。

(1) 最近レイアウトを全面的に変更し、無料で閲覧できるテキストをさらに増やした本紙サイト(http://www.monde-diplomatique.fr)にも、多くの利用者が訪れている。
(2) ここ数年でフランスのキオスク数は3万6000から2万8000に減った。
(3) ドミニク・ヴィダル「世界に広がるル・モンド・ディプロマティーク」(ル・モンド・ディプロマティーク2006年11月号)参照。
(ル・モンド・ディプロマティーク日本語・電子版2007年1月号)

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