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言論とテロとナショナリズム [JANJAN]
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投稿者 white 日時 2006 年 12 月 12 日 11:25:59: QYBiAyr6jr5Ac
 

□言論とテロとナショナリズム [JANJAN]

 http://www.janjan.jp/media/0612/0612110261/1.php

言論とテロとナショナリズム 2006/12/12
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 近年、日本では言論テロともいうべき、卑劣な暴力や脅迫事件が次々とおきています。おもなところでは、田中均外務審議官自宅への発火物設置事件(対北朝鮮外交問題)、小林陽太郎氏への脅迫(富士ゼロックス会長/靖国神社参拝問題)、 日本経済新聞社への脅迫(昭和史問題)などが思い出されます。

 12月11日の夜、東京の毎日ホール(毎日新聞東京本社)で行われた「脅かされる言論の自由 言論テロにどう立ち向かうべきか」(第20回毎日新聞社編集綱領制定記念のつどい 主催:ジャーナリズムを語る会/毎日新聞労働組合)は、加藤紘一(自民党元幹事長)、溝口敦(ジャーナリスト)、牧太郎(毎日新聞専門編集委員)の3氏をパネリストに、田島素彦氏(憲法・メディア論/上智大学教授)をコーディネーターに活発な議論を行ないました。以下はその、筆者による、ごくかいつまんだ要約です。(近日、音声配信を行ないます)

増えるインターネット右翼の人たち
 今年の8月15日、靖国神社参拝問題をめぐって、自宅が放火され全焼した加藤紘一氏は「靖国参拝への疑問、日中両国の関係が良好であるべきことなどは、5年ほど前だったら話されていて当たり前のことだった。それを喋ったことで、なぜ放火までされたのかが疑問だ。11月には、私の自宅への放火を正当化する集会が行なわれ、1000人もの参加者があったのに新聞は報道しない。
 
 しかし、民主主義を壊そうとする言論であっても、その自由も守るべきなのが民主主義の根幹。放火が正当だと思う人には直に議論をしたいと思うし、そう考える人には、ぜひ、オープンな場に出てきて欲しい。またマスメディアも、いわゆるインターネット右翼と呼ばれる人たちの動向などについてももっと報道して欲しい。放火事件の翌日、私とは意見を異にする産経新聞が社説で、放火事件に抗議してくれたことには勇気づけられた」と事件を語りました。

つながりの回復、不断の対話を
 いわゆるインターネット右翼の人たちについて加藤氏は「従来の民族系右翼の人たちとは異なる側面を感じる。私たちがそもそも、家族や地域社会、職場とのつながりを断ち切られ、糸のきれた風船のようになってしまっているのではないか。そういう状態にあれば、隣国との闘争を煽ろうとする過激なナショナリズムになびく人々が出てきても不思議ではない。

 だがしかし、本来のナショナリズムは、自らの文化や地域、芸術、スポーツなどへの誇りに向けられるべきであって、じつは日本人は明治維新以来、それを捨ててしまったのではないか。ナショナリズムが正しい方向に昇華すれば、日本人が元々もっていた、そして明治維新後に捨ててしまった観のある、自然観のようなものに発展するのではないだろうか。そういう方向に私たちが向かっていくためにも、インターネット右翼といわれる人たちとも活発に真剣な議論をかわしていきたい。

 グローバライゼーションの負の側面に対抗するには、地域を再生し、私たち一人一人が人間らしいつながりを回復するところから始まるのではないか。そして、小学校区、中学校区単位で、地域の力を回復したい。

 対話や議論を構築するには不断の努力が必要だ。たとえば“これを書いたら火炎瓶をなげつけられるのかもしれない”と思うような時こそ、発言の努力をしてほしい。一人一人の努力が、言論の自由を守る」と話しました。

言論テロと組織・記者クラブの問題
 暴力団に関する報道に関して、溝口敦氏は今年7月に長男が暴力団関係者に刺されました。言論テロの被害はこれで三回目です。氏はいま、警察が実行犯のみしか裁けないため、組織としての犯罪を民事訴訟で使用者責任として追求する準備をしています。溝口氏は「言論には言論でたたかうべきであり、これといったテロ対策はない。しかし、言論テロがあったら、被害者を守り、組織犯罪の罪を追求すべきだ。

 そこでしかしマスメディアは、商業主義や記者クラブ制の弊害から、いうべきこともいわなくなっていることを猛省して欲しい。たとえば毎日新聞は総体としては、聖教新聞の印刷に関連して、かつては言論攻撃も行なった創価学会に甘くはないのか。テレビ各局は売れるタレント、くわえて同じ事務所のタレントの、スキャンダルや不祥事に甘くはないのか。だから今、女優の告白本がまた刊行されたのではないか」とマスメディアの問題点を指摘しました。

 毎日新聞が、ベトナム戦争に明確に反対した当時(1967年)に社を受験した牧氏も「昔とは違ってきている。記者クラブの弊害は大きく、国や企業、プロダクションや広告代理店の言いたいことだけ書いていれば記者は食えてしまう。食える記者はスクープをねらわなくなる」と話しました。

たよりにならない警察
 また、溝口氏は今年おきた長男の被害では、マスメディアが力となったが、警察はなかなか実行犯を逮捕できなかったこと、1990年におきた自らの重症被害では警察の対応がにぶく、実行犯すら逮捕できなかったことを指摘しました。

 牧氏も「坂本弁護士一家殺人事件の際、現場にオウム真理教のバッチがあったのにも拘らず、神奈川県警はほとんど捜査をしなかった。1986年に発覚した、神奈川県警による日本共産党国際部長宅盗聴事件を追及した弁護士事務所に坂本さんが所属していたため、県警は一家の失踪を“左翼の内ゲバ”と見ていたフシがある」(筆者要約)と語りました。

わたしたちは糸のきれた風船
 私事になりますが、大学卒業直後(1989年)に当時、牧氏が編集長をつとめる「サンデー毎日」誌のオウム真理教キャンペーンを私は愛読していました。加藤紘一さんの「私たちは糸の切れた風船のような気分ではないのか」という言をきいて、私は、オウム真理教が被害者を続出させ、サンデー毎日が健闘しても新聞は報じず、警察も動かず、牧氏も信者に狙われ、坂本弁護士一家が殺害された前後から、私たちは「糸の切れた風船のよう」だったのかもしれない、と思います。

 言論の自由などをめぐっては、インターネット右翼と言われる人たちの動向や、警察、マスメディアのあり方など、この日、4氏が指摘されたようなさまざまな課題があります。グローバライゼーションなどによる企業間・地域間の競争激化などにより、私たちは“息づまる雰囲気のような今”を生きており、過激な言論や、隣国への憎悪、いかがわしい宗教などに惑わせられやすくなっているのかもしれません。

 私たち一人一人の勇気と、人と人とのつながりの回復こそが、言論の自由をまもっていくのかもしれません。

(青木智弘)

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