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旧UFJ銀、貸付先の“脱税”承知で10億回収
旧UFJ銀行(現・三菱東京UFJ銀行)が2004年、豚肉の差額関税62億円余を免れた食肉卸「フジチク」グループ(名古屋市)の脱税を把握した上で約10億5600万円の貸付金を返済させていたことが、関係者の話でわかった。
同銀行はフジチク側が名古屋税関から追徴課税された後、回収分が納税に充てるべき資金だったとする税関側の指摘を受け入れ、肩代わり納付した。大口債権者の銀行が融資先の納税を肩代わりするのは極めて異例で、株主などから責任を問う声が上がりそうだ。
同銀行が06年6月に納税を肩代わりしたのは、グループの豚肉輸入部門を担う「フジチクインターナショナル」(FIC)。同銀行は、04年6月に配当金名目で返済させた約10億5600万円を、肩代わりして納税する「第三者納付」の原資に充てた。銀行側はFICにも第三者納付したことは通知していなかった。
関係者によると、FICは00年9月の設立時からUFJ銀行の前身・東海銀行の事実上の管理下に置かれ同銀行からの出向職員4人が経理業務などを担当。輸入資金を融資し、輸入元の台湾の畜産貿易会社に送金するため、金融機関向けの輸入信用状も発行した。
FICは、豚肉の仕入れ価格を水増しした申告書を税関に提出して関税を免れたうえで、別の食肉会社などに売却。出向した職員や同銀行の審査担当者は、こうした仕組みを把握しながら、利益の大半を同銀行への利払いや元本の返済に充てさせていたという。
FICを巡っては、差額関税62億8000万円を免れたとして、05年5月にグループを統括する藤村芳治被告(64)らが関税法違反で名古屋地検特捜部に逮捕された。藤村被告は名古屋地裁で牛肉偽装事件による補助金適正化法違反などの罪と合わせ懲役8年、罰金3億円の判決を受けた(控訴中)。
一方、名古屋税関は05年8月、FICに約70億円を追徴課税。同税関では、FICは経営実態からみて実質的に脱税のため設立された企業で、豚肉の売買益の大半が融資返済に回っていた点を重視し、納税に応じないFICに代わって同銀行側に水面下で納付を打診したとみられる。
三菱東京UFJ銀行は06年9月、フジチクグループ3社を相手に、肩代わりの10億5600万円を含め総額507億円の返済を求めて、同地裁に提訴した。同グループは大幅な債務超過で、ほぼ全額が回収不能。納税を肩代わりしたことで、フジチク側への焦げ付きを膨らませる形になっている。
UFJ銀行は02年1月、東海銀行と三和銀行が合併して発足。06年1月には東京三菱銀行と合併し、三菱東京UFJ銀行となった。
三菱東京UFJ銀行広報部の話「係争中でもあり、個別案件の話は控えたい」
(2007年1月4日8時38分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070104it01.htm