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http://www.bund.org/editorial/20061215-1.htm
住民無視の空港建設は無理だった
羽田24時間運用で沈む成田空港
安倍首相は11月24日に開催された経済財政諮問会議の席上、「空港や港の24時間化が難しいのは分かっているが、時間を置かずに安倍内閣で解決する」と24時間運用可能な空港・港に強い意欲を表明した。 首都圏で24時間運用が可能な空港は羽田しかない。安倍発言は、羽田の24時間国際空港化を宣言しているのだ。国策の名の下強引に建設された成田空港の存在価値は下がる一方だ。空港反対派の勝利が安倍により宣言されたに等しい。
成田空港は24時間運用できない
安倍首相は首相就任後の所信表明演説で、「アジア・ゲートウェイ構想」を提唱した。この構想は、ヒト、モノ、カネ、文化、情報の流れの中で、日本がアジアと世界の架け橋=玄関となることをめざすものだ。構想の実現のためには、ヒトやモノの流れの中心となる空港と港湾の24時間運用は必須の課題となる。
経済財政諮問会議での安倍発言の背景には、このままでは急速な成長を遂げるアジア経済圏の市場開放に乗り遅れてしまうという、経済界の焦りが見え隠れしている。会議の席上、根本匠首相補佐官(経済財政担当)は、アジアとの交流促進には国際物流機能の強化が必要だと強調した。
すでに港湾では2001年より荷役業務の24時間化に道を開いており、「地元の需要があればできる」(国交省港湾局)状態だ。国交省は2005年度に、港湾の24時間運用に必要な施設整備を支援する制度を新設している。
これに比して遅れているのが空港問題だ。国際航空市場では、ビジネスのグローバル化により年々需要が増加しており、今や国際空港の24時間運用はスタンダードとなっている。国際線では到着時刻が何時間も遅れたりするのは日常茶飯事で、深夜に到着したり、空港周辺で一泊せずにトランジット(乗り継ぎ)するためには、24時間利用可能であるにこしたことはないのだ。
関西国際空港や、昨年オープンした中部国際空港は、いずれも24時間利用可能な海上空港として建設された。深夜の離発着でも、騒音問題をクリアーできるからだ。
しかし首都圏の「空の玄関」となるべき成田空港は、内陸空港という「致命的欠陥」を抱えている。成田では空港周辺に住宅地が広がっているため、今でさえ深刻な騒音問題を抱えている。ましてや、24時間化による深夜の航空機運行など不可能だ。
安倍首相はこうした成田空港が抱える事情を承知した上で、1966年の閣議決定以降40年国策として推し進めてきた「成田国際化」の看板を降ろすことを言いはじめたのである。空港反対派が「成田は欠陥空港」と言ってきた中身を認めたようなものだ。
成田空港は、アジアのハブ空港となることを目指して高度経済成長期に着工された。しかし、地元住民は一方的な建設工事に対し空港反対同盟を結成して徹底抗戦し、全国から多くの支援も寄せられた。反対の理由には遠いアクセス、狭い空域、騒音問題、地元との合意の未形成などがあった。当初政府は、札束による買収と機動隊の暴力によって簡単に住民を追い出すことができると考えていたが、粘り強い反対運動は今日まで続いている。
3本の滑走路建設計画は未だに完成していない。現在は4000メートル滑走路1本と、当初計画の2500メートルより短い2180メートルの暫定滑走路が供用されているだけだ。
現在韓国の仁川空港や中国の上海空港、香港空港などがアジのハブ空港として機能するなか、成田空港は完全に時代に取り残されているのである。
国策の担い手であった新東京国際空港公団は2004年民営化された。成田国際空港株式会社となったのだ。安倍首相は「競争原理」を盾に民営化された成田を切り捨てようとしているのだ。
40年に渡る国策の誤り、地元住民の勝利だ。政府として土下座して反省すべきではないか。
米国の横田空域返還の狙い
東京湾沖に広がる羽田空港は、2009年12月に4本目の滑走路の供用を開始する予定だ。騒音問題はあるが、既に国際チャーター便に限って深夜の航空機の就航が認められている。沖合い拡張後に周辺自治体との合意が形成されれば、フルに24時間運用できる。
唯一懸案だったのが、米軍横田基地が管理する横田ラプコン空域の返還問題だ。羽田拡張後、離発着する航空機の数は40%増となる見込みだ。しかし羽田離発着便は、隣接する横田ラプコンによる制限が解除されない限り、これ以上増加させることは困難だった。
現在羽田空港では、横田空域を迂回して離発着、飛行を行なっているために様々な問題が生じている。目的地別に離陸経路が複線化できない上、横田空域を避けるために離陸の際には高度を一気に上昇させ、その後1万フィートの水平飛行を保つ必要があるのだ。
到着機は、こうした出発機の上昇を避けてルート侵入しなければならない。航空会社にとっては急上昇によって燃費が悪化する上、過密化や技術的危険性と隣り合わせの運行を強いられる。
こうした事態のなかで日米安全保障協議会は、2006年5月に発表した「再編実施のためのロードマップ」で、2008年9月までに羽田空港の西側に隣接する横田ラプコンの南約40%を日本側に返還すると発表した。「ついに在日米軍は日本の首都上空の管制権を一部でも返還したのか」と思えてしまう発表だ。しかし喜ぶのは早すぎる。
今年6月23日、在日アメリカ大使館のジェームス・P・ズムワルト経済担当公使は、日本経団連アメリカ委員会において、「日米経済統合」と題する講演を行った。講演では、1998年の日米覚え書きで確認された2年以内の航空自由化が未だ達成されていないことへのクレームが語られる一方で、「われわれは、小泉首相が、対日直接投資を日本のGDP比5%にまで倍増させるという目標を設定したことをうれしく思います」「国境を越えた合併についても、国内合併にすでに与えられているものと同様の扱いがされるよう求めています」などと要望した。
アメリカの軍事戦略は、アメリカの国益と明確にリンクしている。米軍が横田ラプコンを返還した狙いは明らかだ。アメリカは、羽田の24時間国際空港化を契機に日米航空自由化を実現し、同時にアメリカ資本が対日企業買収などを加速するためのインフラを整えようとしているのだ。
日本企業のM&Aに乗り込んでくる大量のビジネスマンにとって、日本の表玄関となる空港は、首都からのアクセスが便利な24時間空港でなければ困るのだ。
11月18、19日にベトナムのハノイで開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の開催直前、アメリカは「APEC域内の自由貿易圏(FTAAP)」構想を提案し、首脳会合で討議された。
このFTAAP構想は、APEC参加国間で自由貿易協定を結び、多くの品目の関税をなくし貿易や投資を活性化させようというものだ。アメリカは、21の国・地域が参加し、世界経済の約半分を占めるAPEC内の自由貿易を拡大し、ドル市場へと組み込もうと躍起となっている。とりわけ中国やインド、ベトナムなど最近の経済発展がめざましいアジア諸国に、アメリカはこれまで以上の市場開放を迫っている。
安倍政権は「アジア・ゲートウェイ構想」を打ち上げ、羽田24時間国際化によりアジア経済圏の自由化の流れに追いつこうと必死なのである。羽田24時間運用も、要はアメリカの言うことをきいているだけなのだ。日本が第一次産業に強いアメリカやオーストラリアと自由貿易協定(FTA)を結べば、日本国内の第一次産業のほとんどは壊滅的な打撃をうけるだろう。
しかしともあれ羽田が24時間運用の国際空港となれば、成田空港は貨物空港になっていくしかない。いずれにせよ、空港絶対反対住民の勝利なのだ。
http://www.bund.org/editorial/20061215-1.htm