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市場原理主義批判のすばらしい本が出版されました〈内橋克人著『悪夢のサイクル』(文藝春秋刊)〉
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投稿者 天木ファン 日時 2006 年 12 月 14 日 18:16:42: 2nLReFHhGZ7P6
 

森田実のホームページ(憂国の士の論説コーナー)から転載。


2006.12.12(火)


稲村公望(元日本郵政公社理事・中央大学客員教授)


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【1】市場原理主義批判のすばらしい本が出版されました〈内橋克人著『悪夢のサイクル』(文藝春秋刊)〉


 いつか、市場原理主義とはなにか、簡潔にまとめてみようと思っておりましたが、小生が作業をする前に、すばらしい本が出版されました。それは、内橋克人著『悪夢のサイクル』(文藝春秋刊)です。10月の15日に初版が出て、11月25日には4刷になっていますので、反響が大きいようです。
 著者の内橋氏は、90年代の中ごろから、市場原理主義について、とくに規制緩和論に焦点を当てて著作を発表されていますが、その最新刊は、本当にわかりやすく書かれており、序論では図表も入れて、所得格差の広がり、正社員と派遣社員の所得格差、生活保護世帯の増加、自殺者や犯罪の増加、を端的に説明しています。
 また、1980年代に行われた、ラテンアメリカでの市場原理主義の導入が、もたらした惨状を、日本の混乱と二極分化を、世界的な視野の中で、わかりやすく解き明かそうとしています。とくに第三章は、「市場原理主義の起源」と題して、市場原理主義がどこからきたのか、その内容について解説しています。
 最近逝去した、市場原理主義の旗手であったミルトン・フリードマンの人となりについて、エピソードも交えて詳しく説明しています。安倍政権が、教育の「クーポン制」を考えているようですが、これもミルトン・フリードマン・市場原理主義の実践だということがよくわかります。フリードマンが、投機という反社会的な行動にも賛辞を送り、儲かるときに儲けるのが紳士である、と述べたというエピソードを紹介して、狂気の経済学の論理であることを簡潔に証明しています。
 次の章では、シカゴ学派の連中が、南米で行った経済実験の検証をして、第五章では、日本での、その手先(?)の学者や財界人について、批判をしています、とくに、竹中平蔵氏と宮内義彦氏に、焦点を当てています。第六章では、バブル経済の時代の検証で、バブルの崩壊は、「マネー」が逃げていった現象で、それからの失われた16年は、外資の進出、ハゲタカファンドの横行、日本企業の外資化のための環境整備のために、「規制」をどんどんはずしていった過程だと結論づけています。
 第七章では、大変恐怖を覚える書きぶりです。市場原理主義は「小さな政府を標榜しながら、実は、軍事に関しては大きな政府という形態をとります。チリ、アルゼンチンの軍事政権が、膨大な軍事費を国家予算で支出しながら自由化政策をとったことを思い出してください。その源流の国アメリカではその動きは加速しています」という書き出しです。
 イラク戦争についても触れて、その本質を、テロとの戦いに名を借りて、イスラムの教えである、「正当な労働の対価以外の報酬を受け取ってはならないという」戒律を破壊しようとするものであったと指摘しています。イスラム圈の市場化こそが、戦争の目的だったの指摘です。
 社会を二極分化させることが戦争の引き金になる、若者を戦場に送りやすくするとの論点がありますが、この点は、日本のこの国でも、ノイマンの日本の兵士と農民などのくだりを思い出させますし、また、アメリカの海兵隊などイラクで死んだ多くの若者は、製造業がなくなり、荒廃して仕事もない、アメリカの学歴の低い若者たちだとも指摘しています。「下へと吐き出された若者が、逆転を狙って戦場に志願する日がやがて日本でも来るのでしょうか」。怖い話です。
 第八章では、市場原理主義の狂信に対抗する世界的な運動も高まってきていることを分析した上で、人間が市場を使いこなす提言をしています。再規制の動き、世界的な規制強化の動き、フィンランドの例などを挙げて、企業はつぶれても人間をつぶさない社会システムをつくることを提案しています。いわば、新しい第三の道を提示しており、市場原理主義の逆張りをどう具体化するかとの提案で、しかも、その実例として、北欧諸国のエネルギー政策などを例に出して議論を進めています。アメリカのブッシュの政策ばかりを追従することのむなしさがよくわかります。
 最後の節では、児童文学者のケストナーの言葉を引用しています。「愚か者の勇気は野蛮なだけであり、勇気のない賢さは屁にもならない」と。
 本当にわかりやすく、市場原理主義の虚妄について解説し、その手先の演じた、この国日本での惨害をどのように解消していくかを提案するすぐれた著作です。規制緩和などの、郵政民営化論などの、あらゆる市場原理主義の画策と陰謀をわかりやすく解説したすぐれた文献です。おそらくベストセラーになっていくでしょう。ご一読を。森田さんのサイトの読者の皆々様に薦めたいと思います。

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【2】地方切り捨ての「郵政米営化」


 小生はあいかわらず、時間を見ては全国をとぼとぼと歩いております。
 先日は、高知県の山あいの郵便局を訪ねました。高知市から車で1時間半の道のりでした。日曜日の午前中にもかかわらず、何人かの郵便局長さんに会いまして、郵便局の再編成の惨状について話を聞きました。ある局長は、決して名前を出さないとの条件で、サービスダウンが起きていると断言しました。
 郵政公社の支社や本社からの民営対応の電子メールの指令の洪水で、超勤超勤の連続で深夜までの仕事が続いでいるとのことでした。山あいの過疎の町のことですから、遅くまで電気がついているので、近隣の人から、泥棒でも入っているのではないかと注意の電話があったという笑い話も聞きました。
 ある郵便局では、今まで20人ほどの職員がいたが川下の郵便局に配置転換になり、郵便局舎はがらんどうの状態で、自分は都会でも生活をした経験があるが、ふるさとに戻ってこういう仕打ちを受けることになるとは予想しなかったとの話で、もとの部下の職員が、時々通勤の帰りに立ち寄ってくれることが慰めだとの話でした。その転勤になった部下もストレスが溜まっているので、ブリキのバケツを灰皿代わりにして、空いた局の駐車場を愚痴を言い合う慰め会の場所にしているとのことでした。
 その郵便局長は、それは悲しそうな顔をしていました。いままで、郵便貯金や簡易保険の相談もしていた郵便配達員は、分社化することで、もう郵便しかやれないことになり、地域の住民から苦情がたくさん寄せられて、困っているとの話もありました。
 本来の改革であれば、機械化をしたり、業務の改善があったりして、サービスの向上が図られるのですが、そうした気配はまったくなく、ただただ統合して、過疎の地域を切り捨てての効率化の現状が見て取れました。
 5月の全国の郵便局長の青森総会で、「取り返しのつかなくなる前に、慎重に郵便局再編を検討していただきたい」との会長挨拶があり、公社総裁からは、「民営化した以上、進めることが必要だ」との強硬なやりとりがあったことを思い出しました。民営化する前から、惨状を呈してきています。これから、山に雪が降り始めたら、どうなるのだろうかと、ある局長は天を仰ぐふうで、実践を書いた机上のプランがいかに残酷な結果をもたらすかを、今回の訪問で実感いたしました。
 そもそも、郵便貯金と簡易保険の国民資産を徴用し、また新しい銀行と保険会社に仕立て上げて、「米営化」をめざすことが事の本質ですから、いよいよ矛盾が拡大しています。
 「限界集落」という言葉がありますが、共同体として生きていくための限界にある集落などを狙い撃ちにして、崩壊させようとしていることがよくわかりました。
 もしコストダウンをめざすのであれば、情報通信技術を大いに活用して省力化を図り、また郵便機械の小型化や、郵便車両の近代化・機動化を図り、小さな町や村の郵便局の施設を活用して、諸外国で使っているような車や機械を導入して、ユニバーサルサービスを発展させるために能率的な配達をするシステムを組み上げることが改革と考えていましたが、今の集配局再編成は旧態依然の精神運動的な、竹やりで競争をさせた挙げ句に、ただの人減らしの、とくにすぐれた経営手法もない原始的なやりかたでしかありません。
 フランス郵政はルノーとカングーという見た目も美しい郵便用の軽車両を開発したり、アメリカ郵政は、それまでのジープによる配達をやめて、フォードと郵便専用の車両を調達したりしましたが、日本の郵政公社では、そんな気配は自動車会社から人が派遣されたにもかかわらず、そんな未来志向の投資は残念ながら見当たりません。過疎地の村の郵便局が機械化された話などついぞありません。そもそも、改善改革する気がなく、地方切り捨て、国民資産の乗っ取り劇だからかもしれません。
 あれだけ民営化のお先棒を担いだ、新聞や雑誌にもそろそろ、「あすなろ村の郵便局」の惨劇が始まったことが報道されるようになりました。日本の国土を崩落させることが民営化の本音でしょうが、しかし、そうしたことが国民に明らかになるにつれ、郵政民営化は失敗するとの声が高まってきているように思います。「復党などせずに」朝のこない夜はないなどと少しロマンチックなことも考えて自らを鼓舞しながら、民営化の迷妄を喧伝し始めるタイミングです。来年の参議院選挙では、アメリカの中間選挙のように、市場原理主義に歯止めをかけるべく勝利しなければなりません。》

http://www.pluto.dti.ne.jp/~mor97512/

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