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独公的金融、リストラ進む、ベルリン州、株売却、来秋までに――民間銀、取得に意欲。
2006/12/05, 日経金融新聞, 9ページ, 有, 1675文字
民営化、改革のカギに
【フランクフルト=石井一乗】ドイツで自治体などが出資する公的金融機関のリストラが進んでいる。州立銀行の間で再編が相次いでいるほか、ベルリン州は八一%を持つベルリン州立銀行(LBB)の持ち株会社株を来秋までに売却する。欧州連合(EU)の民業圧迫批判を意識しているためだ。民間の大手銀行もこうした株の取得に前向きで、大再編に発展する可能性が出てきた。
「LBBに興味ありますか」。ドイツの民間大手銀のトップは最近、報道機関からこんな質問をよく受けるようになった。銀行側も「多くを語りたくない」(ドレスナー銀)、「新聞で見る以上のことは知らない」(コメルツ銀)など微妙な言い回しで答え、否定することはない。
民間の各銀行が無関心ではいられないのは、LBBは傘下に地元ベルリンの貯蓄銀行を抱え、密接に連携しているためだ。関連金融機関も含めると、ベルリン地域での個人顧客のシェアは五〇%近くに達する。LBBを買収できれば顧客基盤を飛躍的に拡大できる。
民間銀行を圧倒するドイツの公的金融。州政府などが出資する州立銀行「ランデスバンク(LB)」が十一あり、その傘下に、地方自治体が出資する貯蓄銀行「シュパーカッセ」を持つ。緩やかな官製金融グループを形成し、全国でも個人預金の半分ほどを握る。
州政府などがリストラを急ぎ始めたきっかけは、EUの行政を担う欧州委員会による「欧州の他の民間銀との競争を阻害する」との警告。これまで州政府が州立銀の債務を保証し、「絶対につぶれない」と安心させ資金を集めていたが、昨年七月に州政府保証を廃止。州立銀は民間とほぼ同じ土俵で競うようになった。「ぬるま湯経営」は見直され、業務のリストラを迫られた。
官同士で再編
州政府などが真っ先に手掛けたのが貯蓄銀の統合だ。二〇〇〇年に全国で五百六十二あったが、昨年末までに二割弱に相当する百行が減った。
上部団体である州立銀の再編も進んでいる。数自体は合併で二行減った。合併ではないが、買収による事実上の淘汰も増えてきた。バーデン・ビュルテンベルク州立銀(LBBW)は昨年、ラインラント・プファルツ州立銀(LRP)を一〇〇%子会社にし、北ドイツ州立銀行はブレーメン州立銀株の九二・五%を、バイエルン州立銀はザール州立銀株の七五%を握って、傘下に収めた。
公的金融のリストラはいまのところ官の間の再編が主流だが、民への売却も動き出した。デュッセルドルフを営業地域に持つウエスト州立銀行は十月下旬に他の州を拠点にするHSHノルトバンクの株式を米機関投資家グループに売却した。
これに先駆け、民間最大手のドイツ銀行は今年六月、LBBの子会社の一つであるベルリン銀行の買収を決めた。ベルリンで三十万人の個人顧客を抱え、この地域でのシェアはざっと一割ほど。ヨゼフ・アッカーマン頭取は「(同じ民間の)コメルツ銀の買収には興味はない」と語り、買収ターゲットとしての官業のうまみを指摘する。
郵便貯金の世界では、ポストバンクが一足先に民営化し、不動産金融やコンサルティングサービスで成長を続けている。これに対して、州立銀自体はまだ完全民営化に踏み切っていない。LBB株が民間銀行の手に渡れば、他の州立銀も民営化に動き出すきっかけになる可能性がある。
民業圧迫続く
とはいえ、LBB買収のライバルは他もいる。ウエストLBなどが連合を組んで買収するとの観測が浮上。さらに貯蓄銀行業界が連合を組んで逆に出資するのではとの見方さえある。ウエストLBのトーマス・フィッシャー社長は「選択肢のひとつ」と語る。
だが、官の間の資本移動にとどまるなら、官業全体のリストラは進むが、それでも、本当の改革とは言えない。公的金融のプレーヤーが減るだけで、民業圧迫は実質的に続きかねないためだ。
日本でも政府系金融の再編の枠組みが昨年固まったが、組織自体が減るだけで改革にはほど遠いとの批判がなお強い。
官は民も担える金融業務から撤退し、民間にそれらを委ねることができるか。日独の金融行政にとっての宿題は重い。