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トヨタで死んだ 30歳過労死社員の妻は語る(2) 利益1兆円を生む「賃金のつかない業務」
林 克明
11:46 11/13 2006
トヨタ堤工場前で夫の遺影を持つ内野博子さん。夫は、写真背後の堤工場内で死亡した。
過労のためトヨタ堤工場で死亡した内野健一さん(当時30歳)が亡くなって4年。妻の博子さんは、労災を認めさせる裁判を続けている。内野さんは、1ヵ月の残業が144時間にも達していたが、それに加え、創意くふう提案、QCサークルといった数々の “インフォーマル活動”によって、疲労が急激に蓄積していった。トヨタ自動車は、インフォーマル活動は「自主活動」であって業務外であるとしているが、その実態はサービス残業そのもの。前回に引き続き、妻の博子さんに聞いた。
【Digest】
◇カムリ、ウィンダムの品質検査業務に携わっていた夫
◇「必要なものを、必要なときに、必要なだけつくる」トヨタ
◇謝罪、怒鳴られるのが夫の仕事だった
◇休みの日も班長会の広報担当として就業
◇昼に組合・職場委員の会議、土日には組合研修も
◇交通安全リーダーとして連日「話し合い実施シート」作成
◇自主活動「創意くふう提案用紙」を提出、チェック
◇倒れる直前、朝6時16分まで自宅パソコンで仕事
◇もう、頭がまわらない・・笑顔もなくなった夫
◇連日の朝帰り「ライトを点けて帰りたい」
◇家族最後のレジャーは半日休日で出かけたモンキーセンター
◇「カムリ」の不良品多発で月144時間の苛酷残業
◇最期の日「子どもに雪を見せたい」と言った夫
◇カムリ、ウィンダムの品質検査業務に携わっていた夫
「夫の内野健一は、1989年に入社以来トヨタ自動車堤工場で働き、『カムリ』や『ウィンダム』のボディー品質検査業務に携わっていました。
変則的な夜間勤務で家族水入らずで過ごす機会は少なかったのですが、最初はそれなりに過ごしていました。しかし、昇進してEX(エキスパート=班長)になった2000年くらいから残業が増え始めました。
それでも、EXになった当時は、一直(早番=6:25〜15:15)勤務のときには、残業を済ませて夕方6時に帰って、6時半くらいに食事できていました」
だが、夫の健一さんの様子が明らかにそれまでとは違うと内野さんが気付いたのは、亡くなる前年の2001年夏からだという。
「この年(2001年)の子どもの誕生日6月12日の2連休が、最後に自分の都合でとれた予定年休でした。蒲郡にある『子どもの国』に遊びに行って楽しく過ごしました。
このときから亡くなるまでの9ヶ月間は自己都合の休みはとれていませんでした。その9ヶ月間の働く様子は、明らかにそれ以前とは違って異常だったと思います。
『休みはとれないの?』と聞くと、『ちょっと無理だな』と言っていました」
こうして健一さんの疲労は蓄積していったのだが、彼の日常や工場での仕事内容、とりわけ神経をすり減らした生産ライン以外の仕事内容は具体的に何だったのか。
◇「必要なものを、必要なときに、必要なだけつくる」トヨタ
妻の博子さんの話や、これまでの法廷で明らかになったことをまとめれば、どのようにして一社員が追い詰められていったかが見えてくる。
「他の社員と同じように、夫は車で通勤していました。自宅から工場の駐車場まで約25分。工場はとても広いので、職場につくまでに時間がかかります。地下道を通って工場の門に入り、それから各工場の横を抜けて、車体工場まで入ります。
その途中にあるロッカーで着替えるのです。夫は車体部品質物流課で勤務していました。
始まる30分か1時間近く前には着くようにしていました。渋滞などを考慮して、みんな早めに着くようにして、何かしらやっていましたね。
その時間の半分くらいは仕事として認めてもらいました。
残業には2つあります。ひとつは車をつくるラインに就いている人の残業です。車を作る人はそこに張り付いていなければなりません。EXになってから夫はライン外の残業をするようになりました」
夫の健一さんが働いていた車体部品質物流課は、製造される自動車のボディーに、ゆがみや傷、くぼみがないかどうか品質管理をする部署だ。
自動車の生産ラインはいろいろな工程があるが、健一さんの部署の前段階がプレス工程、後の工程は塗装・組み立て工程だった。健一さんは組み立てラインの外にいて、ライン作業者からの情報を受けて、前工程や後工程にフィードバックしていた。
トヨタでは品質管理が徹底していて、総合的品質管理(TQC活動)が非常に重視される。「ジャスト・イン・タイム」方式といって、必要なものを、必要なときに、必要なだけつくる方式だ。
たとえば、1台の自動車をつくる過程で、組み立てに必要な部品が必要なだけ、そのたびに生産ラインの脇に到着する。こういうやり方が徹底されると在庫がほとんどなく、とても効率的だ。
これに加えて厳しい品質管理が要求されるのである。
◇謝罪、怒鳴られるのが夫の仕事だった
「夫の仕事だった品質管理ですが、ふつう品質管理というと出来上がった自動車をチェックするのだと思われるかもしれません。
しかし、生産ラインの塗装、組み立て、といろいろある全ての工程でライン作業を行ないながら完全な品質チェックがされて次の工程に送られるのです。
ひとつの工程できっちりとチェックして不具合を改善しないと、次の工程に引きつげません」
各工程のラインの脇に、必要なときに必要な量だけ部品が届けられるジャスト・イン・システムが成り立つには、健一さんが行なっていた各工程での品質チェック・不具合処理が不可欠。
各工程で不良品を出して、ラインを停止させるようなことがあれば、トヨタシステム(在庫をかかえない)の確立はありえない。不良車が発見されたときは、次の工程に行ってGL(グループリーダー)かCL(チーフリーダー=工長)に謝罪する。
それと同時に不良車を出した部署にすぐに連絡。不具合の修理担当者を決めて、具体的な修理の段取りも指示しなければならない。
このときに、ラインを動かしながら修理するのか、ラインから車を下ろして修理するのか、それともライン全体を止めるのかなどの重大な決断が健一さんらに求められていたのだ。
効率最優先のトヨタ・システムで、万が一にもラインを止めることになれば、大変な失点となる。
「とにかく、不具合を解消するためのトラブル処理がメインでした。前の工程と後の工程を夫は行き来し、対応します。足りないものを調達したり、予定どおりに行かなかったときは、関係部署にいって謝罪したり、激しく怒鳴られるのが仕事だったそうです。
謝るのが仕事みたいなものですが、謝る相手は上司ですから、よけいにストレスがあったのではないでしょうか。
よく怒鳴られたそうです。亡くなった日も、ずいぶん怒鳴られたそうです。いつもと違って顔がこわばっていたと上司から聞きました。後でこのことを聞いて胸が痛みました」
◇休みの日も班長会の広報担当として就業
「生産ラインの残業が増え、それが終わってからの残業もだんだん増えていきました。とくにEX(エキスパート)になってからは、いろいろな役職がつきました。
これからお話することは、通常の業務における残業ではなく、それ以外にしなければならなかった仕事のことです。
たとえばEX会の仕事。班長会のようなものですが、EXになったら必ず入らなければならない会で、夫は役員に選ばれました。定例役員会は月1回。定期総会は1年に1度ありました。
昔は娯楽が中心でしたが、何年か前にレク活動は廃止の方針になっています。本来会社が行なうはずの地域参加のイベントや、EX社員の士気を高める弁論大会が主な活動でした。
弁論大会では弁士として、EXでない上司と何度も打ち合わせをして、工場大会まで出場しました。横のつながり、連帯感をもたせるための親睦会もあります。EX会の広報担当係でした。
いろいろなイベントがあるので、そのつどチラシやポスターの作成、細かな段取りや打ち合わせ準備、そして当日は実行・・・とやることは沢山あります。
イベントは休日に行なわれますから、その責任者である夫にとっては、表向きは休日でも身体を休めることができず、実質的には就業でした。
亡くなる1週間前の一直(早番6:25〜16:10定時)明けには職制会もありました。これは、CL(チーフリーダー)、GL(グループリーダー)、EX(エキスパート)の三層で行なう三層会です。
EXは現在は職制ではないそうですが、慣例として職制会として基本的に参加です。お酒は一滴も飲めないのに、会終了までつきあわされて、自宅と反対方向に住む上司二人を車で送ってから、夜中の3時半に帰ってきました。
この日は早番でしたから、ほぼ24時間起きていたことになります。会社に抗議の電話をしようかと思いました」
◇昼に組合・職場委員の会議、土日には組合研修も
「組合の仕事も、トヨタのなかでは仕事のひとつです。それで、組合の職場委員も何年かに一度はやらなければなりません。ここで年休調査、誰がどれだけとっているか調査などをします。
それから組合の評議会から降りてきた情報を皆に伝えたり、意見をまとめたりする仕事もありました。こういう仕事をしないと昇進できません。福利厚生業務が主であり、組合活動というより、会社の人事の業務という感じがします。私たちも組合会館(カバハウス)で結婚式を行ないました。
実は、組合というのものが、会社の中を変えようという組織だという概念が私には全くなかった、というより知らなかったのです。組合での夫の仕事を見ていて、労働組合の活動というのは会社の仕事・業務だと思っていたんです。
EXになるかならないかくらいのときに組合の職場委員は2年はやらなければなりません。夫の場合は、任期途中で海外出張になったので、1年半くらいで職場委員を辞めてしまいました。
そして、帰ってきてあと半年復帰するのかと思ったらそうではなく、亡くなる半年前の忙しい時期にもう1年任命され、任期半ばで死んでしまいました。
職場委員の会議は、お昼休み。だからお昼抜きになってしまうこともあります。お昼休みの職場委員の会議出席簿もあります。泊まりがけの組合研修が土日にあります。前の金曜日が遅番であれば参加できないので、そのような場合は、職場命令で金曜日が休みになりました。
ですからとりたくてとる年休ではないんです。
でも、裁判で被告の国からは『年休をとっているじゃないか』と言われてしまいました」
「お昼ご飯も食べられないこともあるんですから、組合がなければだいぶ楽だったと思います」と内野さんが言うのもうなずける。
「『評議会ニュース』をしょっちゅう持って帰ってきましたが、目を通せないくらいの多さでした。どういう状況か本人もわからなかったと思います。
職場状況の改善を目指す自覚的な組合活動だったら、自分の働き方や置かれた状況がわかるんじゃないでしょうか」
◇交通安全リーダーとして連日「話し合い実施シート」作成
さらに、健一さんは、交通安全リーダーも任されていた。車をつくる会社として、交通安全には細心の注意を払わなければならず、事故など絶対あってはならないことだ。
したがって交通安全リーダーの役目は重い。
「日常的な仕事としては、交通安全ミーティングの執行と小グループ話し合い実施シート(画像参照)の作成があります。また『ヒヤリハット』と言って、ひやっとした、はっとしたことがありますか、とこういう質問に答えるものもあります。
通勤の間にそういうことはなかったかと用紙に書き込む作業があり、それを集めてまとめる仕事もしていました。誰がこうした、ああしたというのを彼が集めてまとめていたのです。社員としての義務。
これは毎日やっていたようです。万が一、同じ組で交通事故を起こしてしまった場合は、事故の対処もします。新入社員が運転免許を取ったときの指導も交通安全リーダーの仕事です。
猿投神社さなげじんじゃ というところに正月休みの最後には、みんなでそろって交通安全祈願に行かされていました。休み中とはいえ、そこに行かないなどということは許されません。
体調が良くなかったのですが、リーダーとして断るという選択はないです。栄養ドリンクを飲みながら後輩を乗せて行きました」
◇自主活動「創意くふう提案用紙」を提出、チェック
「創意くふう提案用紙というものも書かなければなりません。これは期間従業員も含めてすべてのトヨタ自動車の従業員が月に1度提出することになっています。
現状と問題点、改善案、その効果を具体的な数値で表します。そして改善に必要な費用も書き込みます。いわゆる改善活動です。EXになるとまとめ役。月に1回全員が提案表を書かなければならないのです。
しかも、勤務時間中に書いちゃダメです。これは会社側いわく“自主活動”であり自主的にやっているから仕事ではない、と。
この用紙をみると、こういうことをやると、これだけ能率があがる、ということを数字まであげて検証しているのです。どうみても仕事のように見えます。
いいものを書くと賞金が出るんですね。500円とか。本当に優れているものには5000円。夫が死ぬ2ヶ月前に書いたものは、2週間前に休日出勤をして再度上司と練り直し、6000円(画像参照)がついています。
亡くなった後に振込みがあって分かりました。(班の中で)ひとつはいいものを出さなければならないので、他の人の提案用紙も夫はチェックしていました。
『書き方はこうしたほうがいい』というアドバイスもしなければならないのです。なかには、たまに書かない人もいたようです。仕事じゃないからやらないという意思表示をする方も、まれにはいらっしゃるようです。そういう方は、相当な覚悟をしなければなりません。
しかし、書かないと会社の評価は下がるし、夫はEXとして皆に出すように言わなければならない立場です。書かない人の分を書いていたこともあります。
しかも、提出するときに何回も上司に書き直されたこともあります。たとえば、6000円がついたものがその例です。そして、内容については実際に職場で改善をしてから報告をしているケースもあれば、内容が良いからとその後に実際に現場で改善されるケースもあります。
いずれも会社のコスト削減に一役も二役もかっているのです。
夫の祖父もかつてはトヨタの従業員でしたが、創意工夫による改善が特許に値するほどのもので、大臣表彰を受けています。ですから、祖父は創意工夫が仕事でないなんておかしいと言っています。
これが自主活動ですか?
どう考えても業務です。
それなのに、トヨタの社員に聞くと、『インフォーマルだ』と言うのです。どこまでが仕事に入るかわからないけれど、こういうことをやるからトヨタはいい会社だ、という考えになっちゃっている。
『仕事じゃないけど賃金のつかない業務』といって社員も納得するそうです」
◇倒れる直前、朝6時16分まで自宅パソコンで仕事
これも“インフォーマル活動”かと、外部の人間には不思議でしかたない作業が、「QCサークル活動」である。.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
【参考】
・トヨタで死んだ 30歳過労死社員の妻は語る(1) 生体リズム壊す変則勤務体制[My News]
http://www.asyura2.com/0601/social3/msg/610.html
投稿者 XL 日時 2006 年 11 月 03 日 11:58:02: 5Sn8OMNzpaIBE