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「量的緩和」策の解除とその背後にあるもの(JR貨物労組「資料室情報」)
http://www.asyura2.com/0610/hasan48/msg/383.html
投稿者 竹中半兵衛 日時 2006 年 11 月 10 日 11:13:16: 0iYhrg5rK5QpI
 

量的緩和」策の解除とその背後にあるもの
資料室NO.58

JR貨物労組
http://www2.ttcn.ne.jp/~jrfu/


3月31日づけで小泉政権下の日銀の量的緩和を歴史的かつ現在的に分析した資料です。
以下、「資料室情報」のPDF資料をテキスト化して、読みやすく改行してコピペしました。

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「量的緩和」策の解除とその背後にあるもの

資料室報N05806 −3−31

はじめに

3月9日、日銀は「政策委員会・金融政策決定会合」を開催し、現在までとってきた「量

的緩和」政策の解除を決めたのであった。この決定は即日実施されている。
言うまでもないが「量的緩和」とは、ごく簡単に述べればおよそ次のようである。
「世の中に出まわるお金の量を増やし、従来の政策である金利の変動による金融政策を、

お金の量に目標(指標)を変える」ということである。
この“率から量への転換”は、日本では無論、世界でも例を見ない金融政策なのである。
この決定について日銀当局者は次のように述べている。「景気が昨年(05年)8月に景

気の踊り場を脱却した後、回復の足取りが着実になり、日銀がすでに03年秋に示した量的緩和解除の条件を満たしたもの」と判断して解除を決めたのである。同時に日銀当局者はこの金融政策の変更に際して、次のような諸点を明らかにしたのであった。

@ 量的緩和政策を解除し、金融調整の目標を「量」から「金利」へ戻す。
A 短期金利はおおむね0%に誘導する「ゼロ金利政策」を引き続きとる。
B 量的緩和の目安だった資金量(30兆円〜35兆円程度)を数ヶ月で6兆円程度に減ら
す。
C 中長期的な物価安定のイメージ(前年比上昇率0〜2%度)を公表、これを念頭に政策
運営する。

また日銀は、03年秋に解除の三条件を示していたが、その三条件とは

(1)人々が最も身近に感じる消費者物価指数が下落しない状態が安定して続くこと。
(2)将来もマイナスにならない見通しが立つこと。
(3)経済や物価の状況について総合的に見極める。

という三点であった。

こうして日銀当局は、この三条件をクリアーしたとして、「量的緩和」を解除したという
わけである。

実際に消費者物価指数の上昇率が、昨年10月頃より、対前年比ゼロ%以上(物価がマイ
ナスではないこと)が続き、今年の1月には前年比で0.5%上昇したことが日銀当局者の判断の決め手となったようである。

同時に日銀は、しばらくの間は短期金利「無担保コール翌日物」(※−1)の金利をゼロ
に維持していくことを明らかにしたのであった。すなわち当面は慎重にゼロ金利を継続するということである。

かかる決定についてマスコミ(経済紙・誌)は、長く続いた「超低金利金融政策」に区切
りをつけ、あらたな経済の発展の節目となるものとして、この決定を大々的に連日報じたことはすでに周知の通りである。

日銀の量的緩和の解除は、十数年以上続いたゼロ金利政策という異常な時代から金利機能
を活用する時代に戻ったということなのである。量的緩和という手段の解除とは、金融調整手段として、その目標を、当座預金残高量(※−2)から短期金融市場の金利に戻したということである。

かかる動向から我々は、明らかに異常とも言える金融政策(ゼロ金利や量的緩和)とは、
国民(労働者)にとっていかなる意味を持ち、かつ計り知れないほどの影響をもたらしてきたのだ!ということを怒りを込めて明らかにしなくてはならないのである。

量的緩和の解除

さて、まずは「量的緩和」政策とはいかなることなのか?についてごく簡単に把握してお
こう。

小泉内閣が発足したのが01年4月であった。その丁度一ヶ月前の01年3月19日に、
当時日銀は「政策委員会・金融政策決定会合」を開きそこに於いて、金融政策の目標を「金利」から「資金量」に変える政策を決定したのであった。これが量的緩和である。それ以前の政策は、金利を低く誘導する(実質的にはゼロ%金利状況に置く)政策であった。この決定の最大の動機は、日銀として景気の下支えとデフレ圧力の緩和が緊急かつ最重要課題であったからである。

後に触れるが、デフレの深刻化による景気の後退は、すでに平成大不況とも呼ばれるよう
な事態であり、しかも金融機関の破綻が相次ぐという状況にあったのである。こうした状
況にあって、ゼロ金利策をとっても一向に打開されない事態に危機感を持った日銀は、量的緩和という破天荒な手段を講じることを決意したのであった。

とにかくデフレの深刻化を阻止することに全力を傾けなくてはならなかったのである。

即ち日銀としては、デフレの克服を目的とし、その達成の手段として日銀にある各金融機
関の当座預金残高の「量」を指標としその資金量を増やすという金融政策に転じたのであった。

「率」から「量」への転換である。このように金融機関(金融市場)に供給する資金量を
もっぱら増やす政策が『量的緩和』政策と言われるものである。

今まで行っていた低金利0.1%〜0.2%という低い金利さえ排して、当座預金量をも
って金融政策を行うというのは極めて異常であり、かつ変則的な政策でもあるのだ。

実際に日銀総裁自身が次のように述べている。「異例の措置である」「量的緩和政策はデ
フレスパイラルの危機を脱出するための手段として採用した。こんな異常なものはいつまでも続けるわけにはいかない。」と・・・・。

次に「量的緩和」と共に、これも異例であり継続される「ゼロ金利」政策についても若干
触れなくてはならない。

日銀が量的緩和の前に、長期間ゼロ金利策を実施していることは、すでに触れた通りであ
る。

その場合は、公定歩合(※−3)の引き下げであるが、それとは区別されるものとして見
て於かなくてはならない。

すなわち、日銀は量的緩和解除後もゼロ金利を継続するのであるが、その場合のゼロ金利
政策とは、先にも述べたように、金融市場に潤沢な資金を供給するために、金融政策の操作目標となる「無担保コール翌日物」の金利をゼロにする政策を当面は続ける方針である。

こうした政策は物価下落(デフレ)と景気後退の悪循環(デフレスパイラル)の瀬戸際に
立って(しかし、政府も日銀当局者もゆるやかなデフレという見解にとどめて、デフレスパイラルと言う呼称は使ってはいないが)この危機的事態を回避するための手段として用いられたのがゼロ金利政策なのである。

ゼロ金利にしろ、量的緩和にしろ、日銀が厖大な資金を市場に供給して経済のテコ入れを
行うというものであるが、かかるような事態は、日頃言われている“市場原理の原則”などは完全に放擲されるのである。

さらにば次のような事をも明らかにしなくてはならない。

量的緩和は金融市場に潤沢な資金を供給する政策である。実際にマスコミなどはこれを
「ジャブジャブと資金を供給する」というような表現で報じているのであった。

また、これは銀行の不良債権処理の支援を含む、脱デフレと、景気を刺激するために実施
されたものであるが、すでに導入してから5年も経過している。

故に異常な政策による“副作用”の問題も検討されなくてはならないのである。

そしてより重要なことは、ゼロ金利下や量的緩和策のしわ寄せを受けてきたのはわれわれ
国民(労働者)なのであるということだ。

具体的にはこうである。本来得られるべき水準よりもはるかに低い金利政策の結果、得る
べき金利収入が得られなかったという問題である。(所得移転の問題として後述する)

そしてこの制度の最大の「光明面」つまり“誰が恩恵を受けたのか”が明らかにされなく
てはならないのである。

言うまでもなく不良債権の処理にメドがついたばかりか、大手6グループの銀行の収益は
急回復している。同時に企業も06年3月期の最終利益は過去最高の水準を更新する見込みである。

上場企業全体を見ても連結ベースの経常利益は3期連続で過去最高を更新する勢いとな
っているのである。

現在株式市場は連日30億株を越える大商い続き、3月30日には東証の日経平均は
17,000円台を回復している。だから今や、環境が一変して、今後は「金余り」に
伴う過熱こそ警戒すべきであると「予見」する脳天気な識者の意見さえ出始めているほ
どである。

そればかりではない。光明面はゼロ金利や量的緩和のおかげで政府はこの5年間で国債発
行残高を50%近く増加させながら逆に国債利払いは2割近く減らすことが出来たという
ことである。


量的緩和と我々

次に我々は量的緩和とは一体どのような問題をはらむ施策であったのか?などについて
労働組合(労働者)として深く考えなくてはならないだろう。

その場合当たり前のことであるが、私たちが働き、かつ労働運動を展開しているという立
場から経済面を分析してみるということである。

景気の底割れ(恐慌?)を防ぎ、デフレの悪循環(デフレスパイラル)を止めるという目
的。その達成のための手段である金融政策の一つが量的緩和である。

日銀は市場に使い切れない程の資金を供給して、世の中に出回るお金の量を増やすことで
あったのだ。

そもそも日銀とは、一般的には銀行の中の銀行と呼ばれる金融政策の元締めでもあり、そ
れ故に中央銀行とも呼ばれる存在である。

企業などのお金を借りやすくして、景気の後退を防ぎ、逆に過熱することをコントロール
する、通常その代表的な手段が金利の操作、つまり金利の上げ、下げによる政策が普通である。

実際にバブル崩壊以降、日銀は90年からほぼ一貫して金利を下げる政策を続けてきたの
であった。(90年8月に日銀は景気が回復しているとの判断からゼロ金利をやめて金利を上げて失敗した時期があるが)この金利操作は公定歩合を加減するのが一般的である。その結果、短期金利はすでに、ゼロ%近くまで下げられているのである。

だがいくらデフレを防止する策だとは言え、金利はゼロ%以下には下げることは出来ない。
そこで導入されたのが量的緩和策なのであった。

これは深刻なデフレや、金融不安の解消のため、よりイメージ的に言えば経済的混乱=恐
慌的事態を回避するための「非常時の手段」とも言える政策なのであった。

故に不況に陥った企業・金融機関を救うことが大目的であり、その目的を達成する手段で
もあったのである。

他方、小泉内閣は「構造改革」の名の下に「改革」を押し進めようとしているのであるが、この小泉内閣の政治路線は、当然にも経済面が深く反映されているのである。

金融政策は企業・金融機関の利益がまず保証されるのであり、決して我々のためではない
ことは自明のことである。

では、量的緩和の実際面を見よう。

量的緩和の実際面

銀行などの金融機関は、毎日やりとりする巨額の資金を、日銀内に設けた預金口座を使っ
て集中的に決済している。

この市中銀行が日銀内の口座に預けるお金を日銀当座預金と呼ぶ。急な払い出しに備えて
一定の預金残高を維持するように法律で義務づけられおり、その必要額は金融機関全体で約6兆円である。

量的緩和では、日銀が公開市場操作(オペレーション)を使って、金融機関に資金を、た
だ同然の金利で供給し、必要額より多いお金を当座預金に置いておけるようにしたのである。
つまり金融機関が資金繰りに追われずに融資を増やしやすくする効果を狙ったものなので
ある。

このように日銀は政策で動かす目標を当座預金残高と言う「量」に置いて、その量の目安
(指標)は当初の6兆円強から次第に増やし、量的緩和を解除するまでの間に残高は、30兆円〜35兆円程度に達するという空前の額が供給されたのであった。

破綻からの回帰

さてここでバブル破綻を期に転落した日本経済の恐慌的事態について見ておこう。

1987年国鉄改革の年の秋頃がバブルと言われた景気のピークであった。

87年12月には日経平均株価は史上最高値38,915円を記録している。これ以降急
激に景気は後退し崩壊状況に陥るのである。

91年6月には、4大証券会社のいわゆる損失補填問題が発覚したのであった。これは株
下落による損失を大手顧客については、そっと補填していた事が発覚して、大手証券会社の信用は、株価の下落と共に失墜したことを契機として以降金融不安へとつき進むのであった。

94年12月には、東京協和信用組合、安全信用組合が経営破綻。

95年には、コスモ信用組合、木津信用組合、兵庫銀行が破綻。

97年には、日産生命が生保では戦後初めて倒産し、同年秋には北海道拓殖銀行、山一証
券が破綻し、金融不安が日本を覆うのである。

そのために98年3月、政府は大手21行に対して第一次公的資金の注入を決定すると同
時に、日銀の独自性を強化した新日銀法を施行している。さらに大蔵省から金融行政を分離し、金融政策の立て直しを必死で計ってきたのであった。

だがしかし98年10月には、日本長期信用銀行と日本債券信用銀行が破綻し、一時国有化されるという異常な状況となったのである。かかる金融不安を除去するためのテコ入れとして、99年2月日銀はゼロ金利政策を導入、同時にゼロ金利導入後の3月に政府は大手銀行15行に総額7.5兆円もの公的資金注入を再び行っているのである。

そして99年秋から夏にかけて銀行の再編・統合が始まるのであった。

90年代の始めに於ける日本の大手銀行は

@全国に店舗を持つ都市銀行13行
A 金融債の発行で調達した資金を長期間貸し付ける長期信用銀行3行
B 財産の管理など信託業務の出来る信託銀行7行

計23行が存在していた。これが再編・統合されて、最近の三菱東京とUFJが統合され
て現在では

・三菱・UFJ
・みずほ
・三井住友

の三大金融グループと、

りそなホールディングス、住友信託銀行、三井トラストホールディングス、新生銀行あおぞら銀行、

の8銀行グループに統合されている。

かかるようにゼロ金利導入は金融不安とその解消に深く関係していることが判明するで
あろう。

所得移転

さて日銀が量的緩和の解除を決めたことは、約5年に及ぶ異例の施策に一応ピリオドが打
たれ、新たな転換点を迎えたことになる。

当局者をして「異例の措置」という事柄について、注目すべき報道もされているのである
がそれは実に驚くべき内容であった。

すなわちバブル崩壊後の低金利政策によって、家計などが失った利益(逸失利益)は累計
で280兆円にも達するということである。三菱総合研究所の試算によると、この失った利益は、主として金融機関や過剰債務を持つ企業に転移しているというのである。

主に100兆円を超える金融機関の不良債権の処理と、不振企業の整理につながった、と
試算しているのである。

かくして金融緩和政策は、「イタミを伴う経済のバランスシートの調整の後押しをした」
と言うわけである。

ゼロ金利や量的緩和策はこうした目的をもって実施されたのであるということは明らか
であろう。それだけではない、次のようにも報じられているのだ。

低金利によって預金者の得られる利子所得が大きく減少したことはすでに承知している
事であろう。

日銀が公定歩合を引き下げ始めた91年の家計の利子所得(預金などの受け取り利子から
住宅ローンなどの支払い利子を引いた所得)は約35兆円であった。

以降この利子所得は減少を続けるのである。91年度の金利水準を元にした場合、利子
所得がどれだけ減ったのか?が試算されている。

それによると92年は▲3.8兆円から05年には▲28兆円にまで拡大している。そし
てこれを累計すると▲283兆円にも達する厖大な所得利子が失われているのである。

他方これとは逆に企業は、利子負担が軽減されたことにより、05年までに累計で260
兆円もの債務負担を減らしているのである。

さらに銀行などの金融機関は利子所得を95兆円も増やしているのであり、その分が不良
債権の処理に充当されたことは言うまでもないことである。

見事なバランスシートではないか!ゼロ金利や量的緩和の目的は景気対策もさるこ
とながら、本性はここにあると言えるであろう。

実際に試算した三菱総合研究所の担当者は次のように述べている。「低金利を通じて家計
から企業・金融機関への巨額な所得移転が進んだ」と・・・・。
(06−3−10日経、「所得280兆円移った15年」参照)

また次にようにも論じられているのである。

低金利政策は企業と金融機関が過剰な債務(金融機関にとっては債権)、設備、雇用の整
理を進めやすくした面もある。いわゆる“三つの過剰”論である。90年代以降の銀行の不良債権処理額は100兆円を超えている。その原資を所得移転を通じて預金者が提供していたのだ、という見方も出来るのである。

バブル崩壊から15年、政府・日銀は、財政政策をフル出動させて企業や金融機関の救済
にやっきとなっていたのである。かくして日本経済はバブルのつけでもある、債務・設備
・雇用の三つの過剰が、解消されつつあるという状況である。だから日本経済の「復活」
の道筋が見えたと感覚した政府や日銀の政策は、多大な犠牲が必要であった「危機対応
モード」を転換しようとしている。(同・日経)という具合である。

要は超低金利政策は多大は犠牲を伴う「危機対応モード」であった。と経済紙があけすけ
に書いているということである。それによって「日本経済は蘇りつつある」というわけである。

こうした意味で量的緩和解除とは、金融政策正常化への第一歩であり、それは家計にとっ
ても、これからは利子所得の増加が期待できる一歩手前まで来ているなどと、評価しているのが日経などの主張である。

だが問題はその過程に於いて「多大な犠牲」を伴い、そして三つの過剰の犠牲はそのすべ
てのしわ寄せが、国民(労働者)に転移されたということであり、それを多大な犠牲と表現しているのである。

故に量的緩和を含む超低金利政策とは、つまるところ企業や金融機関を手厚く保護するた
めの政策なのであり、所得移転がそれを立証しているのである。

おわりに

最後に金融政策について、ごくラフに振り返ってみると、金融政策の性格が浮かんでくる。

かって、昔は戦費調達のための金融政策(国債の乱発)今は公共事業費の積み上げのため
の政策と、揶揄された時期があった。

この昔の戦費調達を厳しく戒めるために現財政法では固く赤字国債等の発行や、日銀によ
る国債の引き受けはしてはならないと禁じているのである。(財政法第5条)

にもかかわらず財政赤字を埋めるために赤字国債を乱発し続けて、今や日本は世界一の借
金大国と化しているのである。

それだけではない。日銀は解除後も毎月何と1兆2千億円もの国債を引き受けることとし
ている。長期金利の上昇を防ぐという理由からである。

金融政策においてもゼロ金利を続けて、金利が駄目なら「量」で臨むという異常な状況が
長期間続けられたのであった。一応量的緩和は終止符が打たれたが、依然としてゼロ
金利は継続しなくてはならない状況である。

超低金利政策政策の下では、100万円の定期預金の利息が10円にも満たない状況が更
に続くのである。

失われた10年とか、失われた15年という言葉が昨今使われるが、一体何が失われたの
であろうか!

より主体的に考えれば我々は一体なにを失ったのであろうか!そしてこの失った物を誰
が取得してしまったのであろうか?

今も続く異常な超低金利政策、それは巨大な利益がバブル崩壊によって失われたものをリ
カバリーする政策であったと言えるのではあるまいか。

巨大な利益を逸失させてしまった大資本が、失われた利益を取り戻すためには「三つの過
剰」が足枷となったというのである。だが一体この足枷は自らが作り出した物ではあるま
いか!と言わなくてはならない。

この「三つの過剰」を克服すること、それが政府や金融当局者である日銀、そして日本の
財界にとって焦眉の課題とされていたのである。

実際、谷垣財務相などは1月20日の衆参両院において次のような政府方針を述べている
ことからも判明する。

すなわち「日本経済は過剰雇用、過剰設備、過剰債務という三つの過剰は解消したが四つ
目の過剰といわれる政府の債務は極めて厳しい状況にある」と述べているのであるから・・・・。

「三つの過剰」は決して自然災害ではないのであり、それは資本の醜いまでのどん欲さに
よって生じたものである。にもかかわらず、その尻拭いはすでに述べたように国民(労働者)に架せられたのである。あろうことか、今度は政府の債務が深刻だ!と言うのである。
だからそれも国民(労働者)に背負わせるために、消費税などの重負担が準備されようとしているのである。

ところでこの量的緩和についての、いわゆる入り口論や出口論において、政府と日銀があ
たかも「対立」していることが節々で報じられたのである。たとえば解除を決めた日銀に対して「時期尚早だ」という声が政府内に強かったという事である。それは00年8月頃、「景気は回復基調にある」と判断して、一旦ゼロ金利を解除したにもかかわらず、実際には景気は更に落ち込んでしまい、あわててゼロ金利に戻し、しかも量的緩和に突き進んだという過去の苦い失敗があるからであり、その責任をめぐっての問題があるのである。

しかし、政府と日銀当局者が、唯「尚早だ」、「慎重に推移を見てから」という応酬は、
極めて表面的なものでしかない。

ゼロ金利・量的緩和を含む金融政策によって企業・銀行を守るという点では両者は全く一
致しているのである。

従って今後の大きな問題として、量的緩和解除後の、つまり出口論を経た以降の方向性と
その具体的内容が重要であろう。

すなわちインフレターゲットの設定(※−4)などについてさらに課題となるはずである。

いずれにしろ我々は、直接的な生産場面において「搾取」され、かつ社会的生活場面にお
いても「収奪」による強負担を強いられるのである。

これは明らかに、「搾取」や「収奪」が抵抗なく貫徹されているという、現代の労働運動
の産業報国会化を前提にしているのだと痛苦に言わなくてはならないだろう。

企業と金融不安を乗り切った小泉政府は今度は政府自らの財政危機を押しだしている。そ
れを国民(労働者)に強要するだけではなく、憲法改悪をより具体的に改悪する手段も講じられているのである。

だからこそ我々は自らの労働組合を強化していかなくてはならないのは当然ではあるま
いか!

(おわり)


※1 無担保コール翌日物金利
金融機関相互間の短期資金の貸借、ごく短期間で回収できるように「呼べば応える」とい
う状況からコールの名が生じている。かってはコール取り引きも有担保であったが85年
から無担保も導入された。
日銀は日々の金融調節を通じてコールレートを望ましい水準に誘導する。そのために無担保翌日物の金利が重視される。

※−2 当座預金残高
金融機関が日銀に預けている無利子の当座預金。銀行間の決済・送金やコール取り引きな
どの決済に利用されるほか、日銀との取り引きに伴う資金の受け払いも、この預金を通じて行われる。準備預金制度の準備預金の積み立てもこの口座である。

※−3 公定歩合
日銀が民間金融機関への貸し出しに適用される基準金利。05年8月現在の公定歩合は0.1%で世界で例を見ない超低金利となっている。この公定歩合の変更は、銀行の日銀からの借入金に大きな影響があることは無論、銀行の貸出金利、コールなどの短期市場金利にも影響を与える。

※−4 インフレターゲット
インフレ率誘導目標とも言う。これは物価上昇の目標値を設定し、その実現の責任を明ら
かにして金融政策を運営する方式である。
だが本来はインフレを抑えるための目標であるが、これをデフレにも適用しようとする意
見も多くある。
今のところ、アメリカのグリーン・スパン前FRB(連邦準備理事会)議長が、かって「数値を用いたインフレ目標値の有効性は疑問だ!」と述べていることから日銀は慎重な態度を現在はとっている。

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