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朝日新聞
【経済面】2006年10月19日(木曜日)付
中国、外貨減らしの時 準備高1兆ドル目前 対外投資を促進
中国の外貨準備高が9月末時点で9879億ドルに達し、世界一の水準を更新した。貿易黒字が過去最大で推移しているほか、人民元の上昇を見込んでの資金流入も続き、日本を1千億ドルも上回る外貨を積み上げている。10月末にも1兆ドルの大台を超えそうな中国の巨大マネーが金融市場などに及ぼす影響に、世界中の注目が集まっている。(吉岡桂子=北京、益満雄一郎)
米ドルと人民元を数える中国の銀行員=AP
●運用受託に欧米熱視線
「中国など新興国の外貨準備が急増している。通常考えられる安全水準をはるかに上回る」――。9月中旬、シンガポールで開かれたG7(主要国財務相・中央銀行総裁会議)時のセミナーで、サマーズ・元米財務長官が指摘した。「安全水準」の目安は、1年以内に満期が来る対外債務の総額や輸入額の数カ月分などとされるが、中国はそのいずれも大きく上回る。
急速に積み上がる外貨準備は、人民元高を抑制するための膨大な元売り・ドル買い介入の結果でもある。介入で売られた人民元が市場に過剰に出回り、投資の過熱やバブルを招くなど負の影響を与え始めている。「1人当たりにすれば多くない」(国営新華社通信)と反論してきた中国も、ようやく外貨減らしに取り組み始めた。
中国の中央銀行、中国人民銀行は4月、厳しく制限してきた金融機関による対外投資の促進を打ち出した。銀行や証券会社が、個人や法人の所有する外貨を集めて海外で固定資産や証券などに投資したり、保険会社が海外で固定資産や金融資産に投資したりすることを勧める。
国家外貨管理局も対外投資を促すために、米シティバンクの中国支店、中国建設銀行など9行に海外投資の代行業務を限度額付きで認可した。投資枠は106億ドルに達している。
一方、欧米などの金融機関は、中国が積み上げた巨大マネーの使い道に熱い視線を注ぐ。高い収益を求めて、外貨の余剰分をリスクのある債券投資などに振り向ければ、その運用受託を通じて大きなビジネスチャンスが期待できるからだ。
すでに、シティグループなど大手国際金融機関は運用の受託を念頭に、中国政府に対して積極的な売り込みを続けている。
伊藤隆敏・東大大学院教授も「(超過分のリスク投資は)中国にとって極めて合理的な選択。超高齢化社会が待ち受ける中国にとって、国民の財産である外貨準備の効率的運用は重要な検討課題だ」と指摘する。
●ドル建て一辺倒の不安
世界の外貨準備高は中国と日本が突出しているが、日中以外のアジア各国・地域も増加傾向にあり、アジア全体の外貨準備高は世界全体の約6割を占める。各国の通貨当局が中国と同じように、輸出産業の競争力を維持するためドル買い介入を繰り返しているからだ。
アジアに積み上がった外貨準備の多くは、米国債などドル建て資産で運用されている。過去最悪の8千億ドルを昨年突破した米国の経常赤字を、「アジアマネー」が穴埋めしている構図だ。
ドルへの一極集中はアジアだけの動きではない。外貨準備は世界に約4兆6千億ドルあるが、その3分の2はドル建て資産で運用されている。偏った状況への不安感はじわじわと各国に広がっており、イタル・タス通信によるとロシア中央銀行は16日、外貨準備として円の買い入れを始めたと表明した。ドル一辺倒の運用方針を見直して、円やユーロの買い入れを進める動きは、中国などアジア各国にも広がっていく可能性がある。
ただ、ドル以外への資金の流れが一気に加速し、米国への資金流入が細れば、ドル急落と世界の金融市場の混乱という深刻な副作用をもたらしかねない。世界一の外貨保有国である中国の動向に世界の注目が集まる理由の一つだ。
http://www.asahi.com/paper/business.html