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手嶋 龍一,佐藤 優(著) 「インテリジェンス 武器なき戦争」秘密情報の98%は公開情報を再整理することによって得られる
http://www.asyura2.com/0610/bd46/msg/768.html
投稿者 TORA 日時 2006 年 12 月 10 日 15:51:48: CP1Vgnax47n1s
 

株式日記と経済展望
http://www5.plala.or.jp/kabusiki/kabu133.htm
http://blog.goo.ne.jp/2005tora/
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手嶋 龍一,佐藤 優(著) 「インテリジェンス 武器なき戦争」
秘密情報の98%は公開情報を再整理することによって得られる

2006年12月10日 日曜日

◆インテリジェンス 武器なき戦争 手嶋 龍一,佐藤優 (著)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4344980115

◆まえがき

最近、私の周辺が騒々しくなっている。去る(二〇〇六年)一〇月九日の北朝鮮による核実験のせいだ。実験から一週間を経た頃から、各国のインテリジェンス専門家たちが続々と東京にやってくるようになった。彼/彼女らの動静はマスコミでは報じられない。

しかし、蛇の道は蛇で、この世界の人々のネットワークは普段は眠っていても、こういうときに甦る。本文でも強調したが、私は蛇すなわちインテリジェンス専門家ではない。私はインテリジェンスの内在的論理を少しだけ理解することができる外交官だった。

しかも現役を離れてから五年近くになり、その内、約一年半(二〇〇二年五月一四日から二〇〇三年一〇月八日までの五一二日間)は、小菅の東京拘置所独房に閉じこめられるという得難い経験をし、犯罪者という烙印を押されている。

一般論としてインテリジェンス専門家は慎重だ。特にカウンターパートである組織(日本の場合、外務省もその一つ)と敵対関係にある人物とは接触しない。私と接触したことが外務省にバレた場合、当該情報機関と外務省国際情報統括官組織の協力関係、業界用語でいうところの「コリント(協力諜報)」に支障が生じる。私にアプローチしてくる外国人インテリジェンス専門家たちは「それでもいい」と腹を括っているのだ。

秘密情報の九八%は公開情報を再整理することによって得られるという。北朝鮮に関して、控えめに見積もって東京で熱心に情報収集活動をすれば、インテリジェンス専門家が必要とする情報の八○%を入手することができる。ただし、それを行うためには事情に通じた案内人が必要だ。

かつて付き合っていた外国人たちが案内人役を私に求めてきたが、「全体の案内人は現役の外務省員がやるべきだ」といって、ていねいに断った。ただし、昔から御縁のある人たちなので、あまり失敬な態度をとることもできない。

そこで相手が公開情報にないナマの情報を提供する割合に応じて、公開情報に対する私の分析を率直に語るという取り引きをした。その結果、いくつかのポイントが見えてきた。 (後略)

二〇〇六年一一月三日 (文化の日)   佐藤優


◆インテリジェンス機関の創設より人材育成を

手嶋
ところが安倍新政権では、インテリジェンスの器を整える議論が先行しているように思います。安倍新総理は外交・安全保障に関して二つの大きな提案をしています。その一つは総理官邸の外交機能を強化するための「日本版のNSC」、つまりアメリカのホワイトハウスと同じような国家安全保障会議を創設する。

もう一つが、いわゆる「晋三版CIA構想」と呼ばれるものです。これが新しい対外情報機関として想定されています。いまは対外情報の専門機関が存在しないので、ないよりはあったほうがいいのでしょうが、器をつくっても十全に機能しなければ意味がない。

佐藤
そうですね。しかも、いったんつくったものが失敗すると、次に立ち上げるのは難しくなるので、慎重に考えなければいけません。そもそもインテリジェンスの世界では、組織よりも人なんです。人材を育てるのが先で、組織をつくるのは最終段階。まず器をつくって、そこに自分たちをはめ込もうというのは、典型的な官僚の発想です。

それは同時に、インテリジェンスからもっとも遠い発想でもある。いま新しい情報機関をつくることになったら、日本の最悪の面が出てきますよ。警視庁と外務省の綱引きになる。そこに公安調査庁を持つ法務省も割り込んで、三つ巴の縄張り争いが始まるのは問違いありません。

手嶋
すでに、その情報機関をイギリス型にしようどいった声も聞こえてきますが、イギリスのSISは機構上外務省に属しています。その場合は日本でも外務省の統制下に置かれることになります。

佐藤
だから、霞が関周辺で「イギリス型で」という声を聞いたら、その時点で「ああ、外務省の息がかかった人ね」とわかるから、僕はもうその先は聞きたくないんですよ。ある意味で外務省のロビー活動がうまくいっているという証左かもしれませんが、要は外務省のアンブレラの下に置くという結論が先にあるわけです。

一方、「CIA型で」という声を聞いたら、「ああ、警察の人ね」とわかるから、その先は聞く必要がない。現在の内調を強化して、警察直結の組織をつくるという発想なんです。

話の入口を聞けば、誰の利害を代表して物を言ってるかわかってしまう。こういう組織文化があるかぎり、どうやってもこの綱引きは起きるんですよ。このスキーム(図式)をぶち壊すのは政治家にしかできないんですが、今は官僚の力が強くなっているので難しい。

官僚が縄張りを守ろうとするときは、尋常ならざるエネルギーを発揮しますからね。そういうことをさせないためには、組織をつくる前にワンクツション入れたほうがいいんです。急がば回れで、まずは人材の育成から始める。

国際スタンダードの本格的なインテリジェンス能力を備えた人間を五年間で五〇人、インデツジェンスを理解する人間を二〇○〜二五〇人ほど育てることが急務です。それだけのパイを作っておけば、そこから新しい組織をつくることができるでしよう。

その五年間に、器についての研究もすればいいんです。今は「イギリス型かアメリカ型か」という話になっていますが、選択肢はそれだけではありません。イギリス型とアメリカ型の中問に位置する「イスラエル型」も面白いパターンだと思います。

たとえばアメリカ型を採用しているロシアのSVR(ロシア連邦対外情報庁)はロシア外務省の電報を読むことができませんが、イスラエルのモサドの連中はイスラエル外務省の電報を全て読むことができる。しかしモサドは、イギリスの情報機関ほど独立性が高くありません。

つまりイギリスほどエリート主義ではないということです。現在の世界を見渡すと、英連邦諸国以外の国はほとんどがアメリカ型の情報機関を持っていますが、先入観にとらわれずに、あちこちのスタイルを比較検討してみるべきだと思いますね。

◆インテリジェンスの底カ

手嶋
しかし、どんなタイプの情報機関をつくるにしろ、まずは人を育てるところから始めなければならない。先ほど、インテリジェンスを理解する人問を五年間で二〇○〜二五〇人ほど育てるという話がありました。どんな教育がもっとも効果的なのでしょう。

佐藤
まずは学術的な基礎体力をつけないといけません。学術的な研究と現実のインテリジェンスをつなぐことのできる専門家を育てる必要がある。

たとえばネオコンの重要性について、非常に早い時期に指摘していた学者がいます。一九八五年に西ドイツ(当時)の杜会哲学者ユルゲン・。ハーバーマスが、「ドイツ連邦共和国とアメリカ合衆国における新自由主義、新保守主義の意義について」という論文を発表しているんですよ。

そこでは、レーガン政権の勝利はネオコンという勢力が思想の上のみならず政治でも勝利したことを意味している、ということが書かれています。ネオコンは従来のカトリツク系右派などとは基本的に違う勢力です。

ネオコンは、もともと民主党支持でリベラルな思想を持っていた。しかしリベラル派が社会福祉や教育などで国家に頼りすぎたことが、アメリカ人の自己責任感覚を鈍らせ、国家を弱体化してしまったと考えています。ネオコンは左翼からの転向者なのです。

さらに自然と闘って克服するというネオコンの自然観は、砂漢の民であるユダヤ人の伝統的な発想に近い。したがってネオコンは世界秩序を自分たちの基準に合わせようとする。そのため、今後は大変な緊張が起きるだろうーといってるんですね。

それに対して、たとえばドイツ連邦共和国の哲学者、アルノルト・ゲーレンの新保守主義には、自然に帰るという発想があって、ネオコンとは自然観がまったく逆だから、ドイツの新保守主義からは地域統合という内向きのベクトルが生まれてくる。しかし、そこでは自分たちのいる土地は特別な場所だという形でかつてのナチズムの影が出てくるかもしれないから、気をつけなければいけない。

つまり、アメリカとドイツの二つの新保守主義はベクトルがまったく違うといっている。このハーバーマスの論文は、一九九五年に『新たなる不透明性』(松頼社)という邦訳も出版されています。こんな具合に、社会哲学者が二〇年前に欧米双方の新保守主義的なトレンドを正確に見通していたわけで、こういう断片的なデータを収集して一つの情報を組み上げることができるのが、「インテリジェンスを理解する人間」ということです。

しかもそういう人間は、その情報を面白おかしく人に説明する能力を持っている。断片的なデータをそのまま渡しても政治家はわかりませんが、インテリジェンスを理解した人間が説明すればわかるでしょう。そういう説明のできる人間を二〇〇人育てれば、インテリジェンスに漠然とした理解を示す人間が永田町と霞が関で五〇〇〇人ぐらい出てくるはずですよ。器の議論をするには、そういう環境が必要だと思いますね。

◆官僚の作文に踊る政治家たち

手嶋
国家の舵取りに役立つ情報を提供するのがインテリジェンスの重要な柱です。それを受け取る政治指導者の資質がきわめて重要だと繰り返し申し上げました。しかし現実は悲しいかな、インテリジェンスを政治の舵取りに役立てる機能が恐ろしく脆弱です。

たとえばアメリカのプッシュ政権は、イラク戦争に際して、「サダム・フセインは大量破壊兵器を持っている」「そのイラクは、水面下でアルカイダとつながっている」というインテリジェンスを日本側に提供し、武力行使への支持を求めました。

残念なことに、当時も今も日本政府は、そのアメリカ情報の真贋を独自に判断するインテリジェンスをまったくといっていいほど持ち合わせていません。しかし現在はブツシュ大統領もCIAもDIAも、「アルカイダとイラクは関係がない」「大量破壊兵器もなかった」ということを認めている。

イラク戦争の開戦当時とは、事実関係が一八○度変わってしまった。ところが与党の責任者は、いまだに開戦前に外務省の課長補佐クラスが書き上げた国会答弁を繰り返し口にしている。なぜ、外交当局を呼んで叱責しないのでしょうか。

日本政府が、アメリカの対イラク武力行使を支持するにあたっては、第一次湾岸戦争時の国連決議にサダム・フセインが累次にわたって違反をしていることを最大の根拠として使っています。したがって国連決議を新たに取り付けることにアメリカが失敗したにもかかわらず、アメリカの武力行使は正当化しうる、という理論で構成されています。典型的な条約官僚の作文なのです。

外務省条約課の首席事務官か課長補佐クラスの人たちは、仕事ですからそう書くでしょう。しかし、これが最終的な総理答弁にもなっています。だから、大量破壊兵器が見つからなくても、条約官僚はあまり痛痒を感じないのかもしれません。

しかしアメリカの同盟国である日本が、こんなに表層的な理屈でアメリカの力の行便に支持を与え、こと足れりとしていてはいけません。情勢がイラク戦争開始当時とは大きく異なってきている。いつまでも国連決議にしがみついていてはいけない。

このあたりが、日本外交のもっとも悪いところです。条約官僚の世界では通用する。しかしながら、国際社会ではまったく通用しない。国家の舵取りに有益なインテリジェンスを誰も政治家に提供せず、使い捨てにしている。嘆かわしい現状です。 (P190〜P197)


(私のコメント)
株式日記では公開された情報やニュースを組み合わせて分析すればかなりの事が分かると書いてきましたが、そのためには知的な基礎体力が要ります。このような仕事は政治家では忙しくて出来ないから、優秀なスタッフをそろえて政治家に提供すべきなのですが、日本にはそれをするスタッフも機関もない。

それでは日本に中央情報部や国家安全保障会議を作ろうと言う話もありますが、そのような組織を作れば機能するかと言うとそうではない。それにふさわしい能力を持った人材を育てなければ組織を作っても役人達の天下り先になるだけだ。

本場のアメリカでもCIAやNSAやその他のシンクタンクなど夜空の星のごとく情報機関や組織が整備されていたのに、イラク情勢に対する情報分析が機能しなかった。アメリカには中東の専門家も山のようにたくさん居り、アメリカ軍をイラクに侵攻させればどうなるか分析されたのですが、あまりにも楽観的なもので、株式日記の方が正確な分析をしている。

日本では情報機関と言うとジェームス・ボンド的なスパイが活躍するところと見られていますが、CIAなどは国際情勢に対するシンクタンク的な役割のほうがメインであり、秘密工作的な役割は最近まで縮小されていた。

日本ではこのような役割は外務省や警察庁などが引き受けてきたのですが、必ずしも政治家との連携が上手く機能せず、情報を独占して担当大臣へも報告しないなどの嫌がらせもかなりあった。

このような弊害を無くす為に官邸に直属する情報機関を作ろうと言うのでしょうが、内閣情報調査室は百数十名程度の各官庁との連絡組織に過ぎず、ほとんどが中央官庁からの出向者によって成り立っている。これでは官僚の情報支配は変わらない。

「インテリジェンス 武器なき戦争」という本ではスパイ工作機関としての情報機関というよりも、国際情勢分析機関の必要性を説いている。日本では外務省や防衛庁などが担当しているから必要なかったのでしょうが、それでは集めた情報も各官庁に埋もれてしまって政治や外交に生かされてこなかった。

政治家はそれらの中央官庁の上に乗っているだけで、すべての情報を知る立場には無く、中央官僚が書いた作文で政治家はそれを演じているだけであり、国会答弁一つとっても官僚たちが書いた作文を朗読しているだけだ。しかしそれでは外交交渉などは外国とは出来なくなってしまう。実質的な協議は事務官僚がするというのが日本のやり方だった。

ところが欧米では大統領や首相などによるトップの交渉で決められるから日本はその中に入っていけない。だからこそ首相直属の情報機関を持ち適切な情報を提供して国際交渉に備える体制を整えるべきだ。軍隊における参謀本部の役割が必要なのですが、中央官庁は行政組織であり参謀本部ではない。

ところが大東亜戦争を見ても日本軍には参謀本部はあってもそれは機能していなかった。だから政治分野の参謀本部を作ってもふさわしい人材がいなければ有害無益な存在になってしまう。だから手嶋龍一氏や佐藤優氏は人材の育成が一番重要だと指摘する。

インテリジェンスの世界では一万人の凡人が集まって協議するよりも、一人の天才的戦略家の方が役に立つ世界であり、秀才はたくさんいても天才のいない日本では欧米に比べると不利になってしまう。では、どうしたら日本で天才的戦略家が育てられるかと言うと教育から変えないと難しい。東大出の秀才では分析する仕事は向かないからだ。

様々なニュースをかき集めて真相を浮かび上がらせるには芸術的な感覚が必要だ。そのためには直観力が勝負であり、天才的なひらめきが必要だ。相手国の嘘を見破るには情報も必要ですが、どれが正しいかを見分けるにはインスピレーションがすべてだ。

佐藤氏は秘密情報の98%は公開情報の再整理をしても得られると書いていますが、9・11テロの秘密なども最初は直感的に判断して情報を組み立てていけば98%は解明できるだろう。だから株式日記でも直感で書いているから陰謀論めいていますが、情報を集めていくうちに真相にだんだんと迫っていく事ができる。

イラク戦争も軍事侵攻すれば泥沼化することは軍人達は直感的にわかっていた。しかし一流大学を出たエリート達にはそれがわからず情報も生かされなかった。サダム・フセインが核開発していると言う情報もガセでしたが直感で嘘を見抜くことが出来なかったのだ。それよりも公開情報から分析した方が正確な判断が出来たのではないかと思う。


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