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〈検証 再入国問題−中〉 基本的人権が政治判断によって制限
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65年初の権利獲得 91年「確立」とされたが
国連人権委第61回会議で在日朝鮮人に対する日本政府の人権侵害状況を告発する総聯代表(昨年3月、ジュネーブ)
「朝鮮」表示の在日朝鮮人に対し、初めて再入国が許可されたのは1965年のことである。この時には、千人を超える在日朝鮮人が朝鮮民主主義人民共和国向けの再入国許可申請を行ったのに対し、法務省は、そのうちの3人に対してのみ再入国許可を与えた(実際に同再入国許可に基づき朝鮮を訪問したのは3人のうち2人である)。
68年には、「朝鮮民主主義人民共和国創建20周年在日朝鮮人祝賀団」のメンバー12人が行った再入国許可申請に対し、法務大臣が不許可処分を行うという事件が発生した(いわゆる「在日朝鮮人祝賀団事件」)。この再入国不許可処分の違法性が争われた訴訟において、第1審の東京地方裁判所、控訴審の東京高等裁判所はいずれも、法務大臣の不許可処分が違法であるとして、再入国不許可処分を取り消す旨の判決を下した。
上記判決後、72年には、最初の在日朝鮮人代表団による祖国訪問(再入国許可)が実現し、翌73年には朝鮮創建25周年在日朝鮮人祝賀団が祖国訪問を遂げるなど、在日朝鮮人の祖国往来を目的とした再入国許可を得るための運動は確実に前進していった。
また、在日朝鮮人の第三国への渡航を求める運動も並行して進められ、72年にハンガリーを渡航先とする再入国が許可されたのを皮切りに、徐々に進展を遂げていった。
このような在日朝鮮人の再入国の権利保障の一応の到達点は、入管特例法の制定である。91年5月に制定された「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(「入管特例法」)」により、「協定永住」「特例永住」に分断されていた在日朝鮮人の在留資格は「特別永住」に一本化され、在日朝鮮人の在留権の問題は一応の決着が図られたが、同時に入管特例法10条は、特別永住者の再入国についての特例をも定めた。そして同法制定以降、在日朝鮮人は渡航先、渡航目的の如何に関わらず、原則として再入国許可を得ることが(しかも、単なる許可でなく、数次再入国許可マルチ≠)できるようになったのである。
このような権利獲得運動の過程を経て、在日朝鮮人の再入国の権利は一応確立されたかのように考えられていた。かつては「朝鮮籍の人間は海外旅行に行けない」という時代が長く続いていたところであるが、最近では、朝鮮表示の同胞であっても、原則として、4年の有効期限のある数次再入国許可が即日交付される状況にあった。筆者自身、再入国許可の取得にあたって特段の制限を加えられた経験は一度もなかった。
今回の「制限措置」は、日本政府が在日朝鮮人の再入国の自由を「基本的人権」として保障していたわけではなく、その時々の政治判断によっていかようにも制限できる「恩恵的権利」としてしかみなしていなかったということを明確にしたといえる。
許可制度自体が不当 「自国に戻る権利」の侵害
ところで、そもそも、在日朝鮮人の再入国を許可制度のもとにおいていること自体がきわめて不当である。「許可」を得なければ海外に行っても自分の居住地に帰って来られない! −永住者である在日朝鮮人をこのような制約のもとにおいていること自体が、国際人権の水準からすると大幅に遅れている。在日朝鮮人は断じて「かごの中の鳥」ではない。
市民的および政治的権利に関する国際規約(自由権規約)12条4項は、「何人も、自国に戻る権利を恣意的に奪われない」と定めている。同項の定める「自国」とは、「国籍国」のみならず永住許可を与えた国、つまり永住権者の「定住国」も含むと解釈される。自由権規約は、在日朝鮮人に、定住国である日本に戻る権利を保障しているのである。
日本は、自由権規約を79年に批准している。そして、日本も批准している条約法に関するウィーン条約(条約法条約)のもとでは、「全ての条約は、当事国を拘束し」、条約の締結国は、「条約の不履行を正当化する根拠として自国の国内法を援用することができない」(27条)。すなわち、条約を締結した国家は、条約に違反する状態にある国内の法律や制度を、条約に合致させていく義務を負っているのである。自由権規約を批准している日本は、自由権規約の保障するとおり、永住者である在日朝鮮人を再入国許可制度の制約から解放しなければならない。
この点、国際人権(自由権)規約委員会が98年11月6日に発表した、日本政府報告書に対する最終見解は、第18項で、「委員会は、締約国に対し、『自国』という文言は、『自らの国籍国』とは同義ではないということを注意喚起する。委員会は、したがって、締約国に対し、日本で出生した韓国、朝鮮出身の人々のような永住者に関して、出国前に再入国の許可を得る必要性をその法律から除去することを強く要請する」と指摘し、入管法26条の規定が自由権規約12条2項、4項に「適合しない」と結論づけるとともに、在日朝鮮人に対する再入国許可制度のあり方を厳しく批判している。
このように国際法上、永住者は、居住国から自由に出国し再入国する権利が保障されているのだから、再入国許可を法務大臣の裁量に委ねている現行制度は、在日朝鮮人の「自国に戻る権利」に対する侵害となる。
なお、大韓民国においても、永住外国人に対する再入国許可は免除されている。大韓民国出入国管理法は第30条第1項において、「法務部長官は、…大韓民国に永住することができる在留資格を持つ者に対しては、再入国許可を免除することができる」と定め、これを受けた同国出入国管理法施行規則第44条の2第1項は、「…永住(F−5)の資格を有する者で出国した日から1年以内に再入国しようとする者に対しては、再入国許可を免除する」と定めており、永住外国人に対する再入国許可を義務づけている。
永住者を再入国許可制度の対象として、その出入国を管理しようとしている日本政府の姿勢こそが、世界の趨勢から遅れた特異なものといわなければならないのである。(李春熙、田村町総合法律事務所)
[朝鮮新報 2006.11.16]
http://www1.korea-np.co.jp/sinboj/j-2006/02/0602j1116-00001.htm