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ドイツマスコミスキャン〜州議会に進出する極右 [JANJAN]
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投稿者 white 日時 2006 年 9 月 26 日 22:21:44: QYBiAyr6jr5Ac
 

□ドイツマスコミスキャン〜州議会に進出する極右 [JANJAN]

 http://www.janjan.jp/world/0609/0609241676/1.php

ドイツマスコミスキャン〜州議会に進出する極右 2006/09/25
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 ベルリン――17日に行われたメクレンブルク・フォアポンメルン州(ドイツ北東部)の議会選挙で、極右の国家民主党(NDP)が比例投票で7.3%の票を得て、6つの議席を獲得した。極右勢力が議席を確保した州議会はザクセン州、ブランデンブルク州に続き、これで3つ目。ハーラルト・リングストルフ同州首相は「人々は極右の宣伝にだまされてしまった」として極右の議会進出について遺憾の意を表明している。

《解説》

 ドイツの極右と聞くと、スキンヘッドにボンバージャケット、足元は黒ブーツというスタイルをイメージされるかもしれない。このスタイルでナチスのシンボル旗などを掲げていたら完璧だろう。

 しかし、これは極右と一部重なるところはあるけれども、必ずしもイコールではない。こうした「ネオナチ」スタイルは見た目に大きなインパクトがあるため、資料映像などでよく取り上げられるのだが、極右の全部が全部こういう集団だと思い込んでいたら、それは事実を見誤ることになる。

 よく考えれば当然のことなのだが、ネオナチ・スタイルで闊歩しているだけで有権者が投票してくれるはずはないのであって、議会に進出する政党としての極右は、見た目はごく普通――スーツにネクタイ――である。たとえば上の記事に出てくるNPDのウード・フォークト党首はこんな感じだ。顔はちょっと怖いが、別に坊主頭ではない。

 極右の極右たる所以は、見た目ではなく、むしろその政治信条にある。極右に分類される政党は複数あるけれども、おおむね次の点で一致している。

・ドイツ民族中心主義
・独裁的体制の支持
・保守的な社会モデルの重視
・社会主義的なスローガン
・ドイツ基本法の否定

 ドイツ民族中心主義というのは、政治、経済、文化においてドイツ民族を中心に置くこと目標とするものである。これがなければ右翼ではなくなってしまうので、極右政党には必ずこのイデオロギーは登場する。

 独裁的体制の支持とは、いわゆるヒトラー崇拝のことである。ただし、これは政党の理念としてはあまりあからさまに主張されることはなく、党幹部の個人的意見として表明されることが多いようである。この点でも政党としての極右はネオナチとは異なっている。

 保守的な社会モデルを重視するという態度は、リベラルな生活様式を排して伝統的な価値を復活・復権させようとする姿勢を意味する。具体的には、これは「家族」をどう見るかという点に典型的に現れていて、たとえばNPDの綱領には「家族は伝統をつなぎ止める留め金である。家族の中で言葉は学ばれ、文化や慣習は伝えられていく」のであり、「家族が崩壊したり、力を失ったりするのを手を拱いて見ているだけの国民は没落するであろう」とある。

 社会主義的なスローガンというのは、無制限な自由競争――特に経済活動に関する――を否定し、大企業よりも労働者を守る政策を主張することである。これは「国民が経済に仕えるのではなく、むしろ経済がドイツ国民に仕えるのでなければならない」(同綱領)という理念に端的に現れている。極「右」なのにこういう「左」的な主張は矛盾するように見えるかもしれないが、ナチスにしても「国家社会主義」を名乗っていたので、極右と社会主義は意外に親和性があるということだ。

 ドイツ基本法の否定というのは、単なる改憲の要求ではなく――憲法改正はすでに50回以上行われている――むしろドイツ基本法の精神を否定するような主張である。たとえば、基本法16条には庇護権(「政治的に迫害されたものは庇護権を有する」)が定められているのだが、これはナチスによるユダヤ人迫害の教訓から設けられた条文であり、その意味で過去に対する反省を示す――つまりナチスドイツとの決別を示す――重要な条文なのだが、移民の無制限な流入を食い止めるためとして、極右政党はこの廃止を要求している。

 以上からわかるように、極右政党の主張は――ヒトラー崇拝は別として――あくまで政治的な主張である。そして選挙の際にはこうした主張を有権者にもっと身近な形にして訴えるので、印象はさらにソフトになる。

 たとえばドイツ民族中心主義からは外国人排斥という行動が導き出されるが、これは、ネオナチによる外国人襲撃という事件を誘発する一方で、「ドイツ社会に寄生している外国人(移民)」をこころよく思わない人たち――特に失業者に多い――には訴えるところが大きい。「そういう人たちがいなくなれば、仕事が見つかりますよ」とささやくわけである。

 保守的な社会モデルにしても、言い方次第では「家族を軽視することがさまざまな社会問題を生み出している」という主張にもなるので、「家族という制度が『自己実現』やそれに伴う際限のないエゴイズムによって危機に瀕しているから何とかしましょう。そうすれば少子化問題も解決しますよ」などというふうに耳打ちするわけである。これは特に高齢者には受けがいい。

 また社会主義的なスローガンは「産業やサービス業の国外移転および低賃金国への賃金労働の移転は道徳的に弾劾され、税制上の罰を加えられるべきである」(NPDの綱領)と主張することによって、いわゆる経済グローバル化のために解雇を余儀なくされた人たちを惹きつけることができる。

 こうした選挙活動が結果的に上の記事にあるような議席獲得につながったのであろう。メクレンブルク・フォアポンメルン州は高い失業率と低い出生率、それにドイツ統一直後に約束されていた企業進出も実現しなかったため――企業は旧東独地域をスキップして東欧諸国に行ってしまった――今後の展望がもてないことで苦しんでいる地方だからである。

 こうしたやり方に対してはもちろん批判もあり、たとえば同州にあるロストック大学のグートルン・ハインリッヒ氏(政治学)は「市民による抗議政党という体裁を取りながら、裏では憲法に反する目的を追求している」と指摘し、「羊の皮をかぶった狼」的手法であると非難している。

 また、市民の抱えるこうした切実な問題に直接答えを出すことをしようとしない、もしくはそれができない既成政党(社会民主党やキリスト教民主・社会同盟など)の態度にも問題があると指摘する声も多い。

 たとえば『フランクフルター・アルゲマイネ』は「4年前の選挙ではたった0.8%しか獲得できなかった政党がもっぱら話題の中心になっている。SPDと左派党は、保守のCDUばかりを批判し、極右阻止の行動に参加しなかったため、NPDの選挙戦をいわばアシストしてしまったのである」と評している。

 『シュピーゲル』は「有権者離れと社会政治的遠心力はこれまでになく強さを増している」という見方を示したうえで、「しまりのない連合と化した政府は、左と右の両極が解けてなくなって」しまっているとして、大連立政権ゆえに小回りが利かず、シングル・イシュー・ポリティクスを展開する敵に対して、有効な手段が取れない点に問題があると見ている。

 『北ドイツ放送』のクリストフ・リュトゲルト氏も「メクレンブルク・フォアポンメルン州は美しい風景をもつ州である。けれども失業率は国の平均を大きく上回り、社会保険が義務づけられる職場はこの何年かで数え切れないくらい失われ、若くて資格をもつ人たちはどんどん州を出て行った。これが極右の温床となっている。この繁栄はまだまだ続くかもしれない」と悲観的だ。そして「民主主義はドイツでは相変わらず晴天用の催しだということを理解しなければならない」と述べ、「悪天候」のときにどう対応するかが今後問われるだろうと見ている。

 NPDが地方議会に進出するのは2度目であるが、これは統一後の話で、旧西ドイツ時代には、1960年代終わりから1970年代初めにかけて、7つの州議会で議席を獲得していた時期がある(設立されたのはドイツ北西部の都市ハノーファー)。その後はいわゆる五パーセント条項により、議席をもたない極小政党にとどまっていたのだが、2004年にザクセン州議会で議席を得てからは、着実に支持を増やしている。それだけ選挙戦術も巧妙になってきているのであろう。

 今後極右勢力がどうなっていくのか――他の地方議会にも進出するのか、連邦議会にも進出するのか――民主主義勢力の対応が問われている。

《参考》

NPDのホームページはこちら。綱領はこちらにある(日本語訳も――これはNPDの公式ホームページではなく、個人的に訳されたもの)。


"Die NPD transportiert Stimmungen der Bevoelkerung"(「NPD は住民の気分を伝えている」)
NPD gelingt der Sprung ins zweite deutsche Parlament(NPD がまたしても議会へ進出)
Demokratische Parteien reagieren geschockt auf NPD-Einzug in den Landtag(民主主義政党,NPDの議席獲得にショック)
Fluechtiger Spuk oder ernste Bedrohung?(一時の悪夢か,それとも重大な脅威か)
Flucht und Fliehkraefte(逃避と遠心力)
Debattenfruechte(議論の成果)
Radikaler Vormarsch(過激な躍進)
Scheindemokraten mit Schlagworten und -stoecken(見せかけの民主主義)
"Waehlt alle Adolf" - der Wandel der NPD(アドルフに投票せよ――NPDの変遷)
Vorlaeufiges Endergebnis fuer alle Parteien(メクレンブルク・フォアポンメルン州議会選挙暫定結果)


(竹森健夫)

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