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レイバーネットのニュース欄(9月15日付)に、週刊誌 Socialist Worker に載った“ Israel's defeat has transformed the region”(「イスラエルの敗退はこの地域を変えた」)の和訳が掲載されています。以下は http://www.labornetjp.org/news/2006/1158286195646staff01 からの抜粋引用です(英文の元記事は文字化けして読みにくい)。
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「イスラエルの敗退はこの地域を変えた」
週刊『ソーシャリストワーカー』2015号(2006年8月26日付)
原文:http://www.socialistworker.co.uk/article.php?article_id=9521
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社会研究センター(エジプト・カイロ)のサミア・ナグイブが、イスラエルの敗退の余波について、本紙ジョン・リーズに語った。
リーズ: イスラエルのレバノン攻撃の結果について、どう評価しているのか、お聞かせください。
ナグイブ: アメリカとイスラエルの計画がこの戦争で頓挫したのは、とっても重要なことです。今や明らかですが、レバノンへの攻撃はアメリカとイスラエルの両国にとって、イランやシリアへの攻撃も含むもっと広い地域に対する戦争の一環でした。
もしこの計画が成功していたら、この地域での帝国主義的軍事行動がこれまで以上にエスカレートしていたことでしょう。
しかしこの計画は失敗しました。大失敗です。全世界の反戦運動にとって、これはとても重要な勝利です。イランやシリアへの攻撃を阻止 ― 少なくとも当面のあいだ延期させることに成功したのです。
また、アラブの辻つじで、自信と確信が生まれ始めています。戦闘開始直後、人々はとても懐疑的でした。もちろん、ほとんどの人がレジスタンス(抵抗運動)を支持していましたが、戦闘には負けると考えていたのです。
サダム・フセインはバグダッドを守ると約束しましたが、その約束が反故になるまでにほとんど時間がかかりませんでしたので。また1967年にエジプトの指導者ガマル・アブドゥル・ナセルはテルアビブ(イスラエル首都)を滅ぼすと言いましたが、そんなことにはなりませんでした。
ですが今回、戦争の進展に伴い、小さいながら大切な勝利を積み重ねるなかで、レジスタンスの対イスラエル戦闘の能力に自信が芽生えてきました。変化は可能だ、という、もう長い間あきらめ打ち捨てられていた感性が息を吹き返したのです。
変わったのはパレスチナとレバノンのレジスタンスについての感覚だけではありません。エジプトの支配層に対し自分たちに何ができるか、いや、職場で自分が何をできるか、という思いさえが変わってきました。大きな意味でのあらゆるレジスタンスへの自信が回復したのです。言ってみればそれは、 どんなに情況が困難でも、自分たちが弱く思えても、反撃は可能だし勝利さえが可能なのだ、という思いです。
圧倒的多数の民衆がそう感じています。もちろん、人々が現実を過大評価してしまうとそれはそれで危険なのですが。
いずれにしても、これは重大な勝利でした。そしてこの勝利は、もっと強大な闘争での完全な勝利に向けた第一歩に過ぎないのです。
リーズ:これがアラブ世界の様々な異なる潮流に及ぼすだろう影響について、どう考えているかを詳しく説明して頂けませんか?
ナグイブ:イスラム最大の潮流は「ムスリム・ブラザーフッド」です。これはスンニー派組織で、これまでシーア派やイランとの間に大きなイザコザを生じてきました。
しかし問題は急速に解消してしまいました。エジプトのムスリム・ブラザーフッドの最高指導者マハディ・アケフは、戦争開始一週間後にある声明を発しました。それは、とても強い調子で、今やスンニーとシーアの違いは意味をなさない、と訴えるものでした。彼は言いました。我々全てが、レジスタンスを支持すべきである、ハッサン・ナスララこそがアラブレジスタンスの指導者である、我々は彼と共に戦うべし、と。
これは歴史的な声明です。スンニー派イスラムの中で、そしてアラブ世界のイスラム主義者の中に大きな波紋を呼ぶことでしょう。イラクのレジスタンスにさえ、シーアとスンニーがアメリカに対し共闘して戦うように、という建設的な影響を及ぼすかもしれません。
イスラム主義の逆行的・保守的な側面は、これによって弱まりました。少なくとも一時的には。実際、人々にとってはナスララがシーアでもスンニーでもどっちでもよかったのです。こんなことは初めてなのですが、これまで人々が問題にし議論してきたことは宗教信条の詳細諸々でした。今ではこれらの議論は影を潜め、レジスタンスの力が強まっています。
階級的な要素が目立つようになりました。同じレバノンの中でも、犠牲になっているのは貧困層であり、戦っているのも貧困層である、という構図が明らかになっています。以前から存在してきたレジスタンスだけでなく、新たな、レバノンの働く階級のレジスタンスが台頭してきています。誰でも、毎日のテレビを見ていればこの事は理解できるし、レバノン南部の悲惨な状態を自らの悲惨な状態に引きつけて共感してしまうのです。
エジプトの左翼も、今回の戦争の余波をもろに浴びて二極分解を始めました。たとえば、スターリン主義左翼、「右翼的左翼」はこう言います。帝国主義への反対はもはや重要ではない、民主主義の獲得にのみ力を集中すべきだ、イスラム主義者と共に立つなど絶対にありえない、パレスチナであれレバノンであれどこであれ、イスラム主義者はファシストである。
このような見解はこれまで左翼の一定部分に影響力をもって来ました。今では完璧に分解して、中間にいた人々は左翼のほうへと立場を移しました。
この結果が一体どうなるのか、まだ誰にも分かりません。左翼内部の真剣な討議、闘いは現在進行形です。これは決してセクト主義ではありません。本物の二極分解であり、新しい動きなのです。そしてこれは、エジプトで左翼一般がイスラム運動とどう関係を作っていくのか、中東の民族解放にむけどのような立場をとっていくのか、それらすべてに影響を与えることでしょう。
リーズ:エジプトと中東で、運動と左翼にとっての次のステップは何でしょうか?
ナグイブ:次のステップは、反帝国主義と反戦運動内部の異なる潮流が、できる限り団結する、という挑戦です。これこそが、カイロ会談を通してわれわれが目指してきたことであり、今また11月下旬のベイルート会談で計画していることです。
もし我々が、南米の、欧州の、そして中東の反帝国主義と反グローバリゼーションの闘争を結合させることができれば−特に、敵が比較的劣勢の今それが可能であれば−この試みは中東地域に大きな影響を与えるでしょう。
イスラム色や宗教色の無い運動を示唆するものもありますが、方向性としては同じ方向を向いています。考えても見てください。アラブの他の国家やイスラム政権が何らの行動も示さない中を、ウーゴ・チャベスはレバノン・レジスタンスへの支持を決断し、イスラエルからの大使を召還したのです。これは人々に、問題は宗教ではないんだ、もっと別のもの−階級的問題であり国際的問題なのだ、と言うことを教えています。
戦争の結果は、左翼に前進を促すものでもあります。これまでは、イスラエルに対する力強いレジスタンスを構築するという考えは、宗教色の濃いものでした。しかしヒズボッラはシーア系運動であり、典型的スンニー組織とは違います。宗教としてのスンニーは共産主義やその他に対するのと同様の諸々の問題をシーアとの間に持っているのです。
つまり、左翼にとってのチャンスとは、これまで以上に多くの人々が、貧者の闘い、レジスタンスの闘いに身を投じるようになっていることです。
容易な闘いではありません。でも、中東において帝国主義やグローバリズムに反対するより広範な運動を構築するにせよ、ラディカル左翼を構築するにせよ、これまで以上の好機が来ているのは確かなのです。