★阿修羅♪ > 戦争83 > 939.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
フセイン裁判「クルド人虐殺事件」に関して旧稿を抜粋再録。
以下、その情報の投稿と、わが旧稿の抜粋を続けて紹介する。
----------------------------------------------------------
2件目のフセイン裁判が21日に開始 1988年のクルド人虐殺事件 [アルジャジーラ]
http://www.asyura2.com/0601/war83/msg/930.html
投稿者 white 日時 2006 年 8 月 20 日 18:19:35
----------------------------------------------------------
http://www.jca.apc.org/~altmedka/gulfw-12.html
『湾岸報道に偽りあり』
隠された十数年来の米軍事計画に迫る
)第二章:毒ガス使用の二枚舌疑惑
「黒い水鳥」と並んで、イラク悪魔化に大きな役割を果たしたのが「毒ガス」である。
果たしてイラクは、毒ガスを「自国民の」クルド人弾圧に使用していたのであろうか。
[中略]
もちろん、この「化学兵器の使用」もしくは「毒ガス」問題の真相追及は、決してクルド人への同情を否定する発想ではない。むしろ、「アメリカはいつでもクルド人を都合のよいように利用しているだけだ」という、大国エゴ告発の一部である。
フセイン政権が「自国民のクルド人に対しても毒ガスを使用した」という趣旨の報道は、これまた総ジャーナリズムで展開された。
[中略]
ブッシュは、イラクがクウェイトに侵攻した直後の昨年八月十五日、ペンタゴンでの演説でサダムをこう形容していた。
「自国の男、女と子供に対して毒ガスを用いた男( the man who has used poison gas against the men, women andchildren of his country )」
[中略]
この演説の三日前の八月十二日に、イラクが平和提案を発表したが、それにはクウェイトからの撤退と同時にパレスチナ問題の解決を求める、いわゆる「リンケージ」提案がふくまれていた。これはアメリカにとって耳が痛い話だった。だから直接の反論を避け、「アラブの聖戦」を唱えているのは「毒ガス」を自国民に対して使った「男」なのだ、という喧嘩言葉で応酬したわけである。経過からして、あまり品の良いやり方ではない。
[中略]
問題の「自国民」への毒ガス使用事件が起きたとされているのは、一九八八年のことである。映像がその当時撮影されたものだとすれば、水鳥の場合と違って、湾岸危機発生以前から存在した素材が使われたことになる。だから、謀略だとすれば、非常に計画性が高いといえる。
そこで、今までに判明している事実関係を整理してみると、アメリカ側は少なくとも、次のような疑問点を知っていたはずなのである。
私が入手し得たかぎりの資料によると、物的証拠の分析と専門家の医学的調査に関する報告は、以下に紹介する松原久子(歴史学者、スタンフォード大学フーヴァー研究所スペシャル・スカラー)のものだけである。
第一回は『文芸春秋』(91・4)掲載の「アメリカは戦争を望んでいた」の次の部分。
「毒ガスはイラクとイランがお互いに使ったのであって、自国民(クルド族)に使用していないことは当時イラクの死者を検診したトルコの医者たちが、毒ガスの内容から証言している。それはイラン側の所有するシアン化物であった」
『イラン・イラク戦争』という元陸将補鳥井順の大著によると、イラクがイランに対して使用した毒ガスは「マスタード・ガス」と「タブン神経ガス」であり、「シアン化物」または「青酸ガス」はふくまれていない。
[中略]
問題となった地帯では、イラン・イラク戦争中、両軍が入り乱れて何度も戦っていた。毒ガスは風で流される。下手をすると味方まで殺してしまうという、危険な兵器なのだ。近隣の住民に被害が及ぶことは充分にありうる。
[中略]
松原久子は、翌月の『文芸春秋』五月号の「戦勝国アメリカよ驕るなかれ」で、さらに調査機関の名をあげて反論した。
事件当時の記録の審査に当たり、「国務省の主張」を否定した「アーミー・ウォー・カレッジ(Army War College)」は、「米軍士官学校制度の頂点に位し、参謀養成機関として厳選された米軍人のみを入れる大学であり、陸海空軍の統合参謀本部により運営されている権威ある機関」である。
「一九八八年、毒ガス死者に関する事件が二度あった。一回目はまだイランとイラクが戦争中の三月下旬、イラク国境のハラブジャ市。毒ガスでやられたクルド族は、アメリカの専門家による調査の結果、シアン化物使用の結果であったことが明らかとなった。シアン化物はイランのみ所有の毒ガスである」
「二回目は戦争の終わった八月で、北イラクのクルド族が戦争中政府に謀反を起こしたという理由で、親衛隊の復讐に会い、命からがらトルコへ逃げのびた。トルコの医者たちは患者や、病院における死者たちを詳細に点検し、毒ガスの徴候はなかったと言明した」
[中略]
ロンドンで原著出版の『サダムの戦争』には、次のような記述がある。
「一九八八年、イラクがクルディスタンを攻撃した際、多数の民間人が毒ガスで殺されたことを契機に、制裁法案が(米議会に)提出されてかなりの支持を集めたが、ホワイトハウスの反対によって廃案となった。イラク政権による残虐行為は、ワシントンに本部を置く組織ミドル・イースト・ウォッチ委員会によっても記録されており、その信憑性は明らかであったにもかかわらず、ブッシュ政権はイラクの独裁者にたいして寛大な態度をとったのであった」
ここでの「信憑性」の根拠は、「ミドル・イースト・ウォッチ委員会によっても記録されて」いるという「事実」である。だが、この委員会は、民間のクルド支援組織である。つまり、一方の当事者側の組織であり、専門的な要素を欠いている。また、残念ながら出典の注や資料リストがないため、これ以上の吟味ができない。問題の核心は、その「記録」なるものが果たして、医学的ないし化学的な鑑定として採用し得るものなのかどうかなのだが、それを判定できないのである。
先のアーミー・ウォー・カレッジによる記録審査は、このイラク制裁法案と同時期になされており、アメリカ国務省が保持する公式記録を材料としたものである。国務省の記録は非公開だそうだが、アメリカの専門家による調査やトルコ人医師の診断は、当然、被害を訴えたクルド側の主張を踏まえて行なわれている。記録そのものが間違いか嘘だという証拠でもあるのなら別だが、それらをアーミー・ウォー・カレッジがさらに吟味しているだけに、このハードルは高い。
また、今度のアメリカの宣伝が正しいのだとすれば、さかのぼって一九八八年、アメリカ軍の権威ある機関の信用は失われることになる。それなのになぜ、軍関係者は黙っているのだろうか。先に紹介した『司令官たち』における国防長官チェイニーの「不安」の原因は、ここにあるのかもしれない。『サダムの戦争』には、このほかにも毒ガス使用に関する記述があるが、そのいずれにも、専門家による調査だという主張がない。
[中略]
今度の湾岸戦争の最中にも何度か、イラク軍が毒ガスを使用したというニュースが流れており、そのすべてが誤報だった。また、残念なことだが、クルド側の情報には誤りが多かったというのも、日本の報道関係者が異口同音に認める事実だった。だから途中から、裏を取るまで報道しないように気をつけたというのだ。それなのになぜ、毒ガス問題だけがフリーパスだったのだろうか。まさかではなく、きっとそれが、アメリカ経由だったからではないだろうか。
ところがこの場合、裏づけのない情報をフルに活用しているのは、これ以前に二度もクルド人とイラク政府との対立を煽り、溝を深め、失敗すると捨て去り、今また三度目の国際謀略の犠牲にしようとしている超大国アメリカの政権なのだ。ブッシュは決して、クルド人に同情して、この事件を持ち出しているのではない。そうであれば、一九八八年当時に議会の制裁決議を支持し、今度の戦争をも未然に防ぐ努力をしていたはずである。
[後略]
----------------------------------------------------------
http://www.jca.apc.org/~altmedka/
憎まれ愚痴