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東京新聞【色あせる米の『中東民主化』】レバノン侵攻
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http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20060811/mng_____kakushin000.shtml
核心
色あせる米の『中東民主化』
イスラエルのレバノン侵攻は12日、開始から1カ月となる。米国は同盟国イスラエルの攻撃を支持し「新しい中東」の入り口と位置付けているようだ。真の脅威とみなすイランを排除し、地域秩序の再構築を目指す狙いだが、アラブ大衆から見れば、またも「対テロ」の口実で、破壊に手を貸しているだけだ。「中東民主化」という米国の国家戦略は、確実に、色あせつつある。 (エルサレム・萩文明)
■毛布と武器■
「大衆にとってナスララは英雄だ」。ヨルダンのアブドラ国王が地元紙に述べた一言が、中東の親米政権が抱く危機感を象徴する。
レバノンでイスラエル軍と戦うイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラの指導者ナスララ師を、ヨルダンやサウジアラビア、エジプトは当初、強く批判した。
これら親米スンニ派政権の真の敵は、イラクで政治力を増したシーア派だ。核開発に進むイランが背後にいる以上、その伸長は体制の存亡にかかわる。レバノンでの早期停戦よりヒズボラ壊滅を望む意思が鮮明で、サウジでは聖職者がヒズボラ支持を禁じた。
だがイスラエルが激しい攻撃を加え、ヒズボラが根強い抵抗を続けている結果、アラブ世論は宗派を超えて「ナスララ支持」一色に染まった。同師がパレスチナのイスラム原理主義組織ハマス(スンニ派)との連帯を表明し「シーア・スンニと米国・イスラエルの戦い」と宣言したことも、世論の高揚に火を付けた。
親米政権は波及をおそれて静観をやめ、米国に打開を要請した。それでも米国は、レバノンに「人道援助」で毛布を、イスラエルには武器を供給する。「親米」の無力さが暴露された。
■「新植民地」■
パレスチナ自治政府を担うハマスの支持者は「中東民主化とは新たな植民地化」と力説する。
テロ抑止のためとされる中東民主化。だが親米のエジプトやサウジでは、公正な選挙が実施されなくても、米国の圧力は弱い。
一方でハマスは、米国が「自由で公正」と絶賛する選挙で勝ち、権力を握った結果、経済封鎖に直面し、内閣は崩壊寸前だ。ヒズボラは、米国が「重要な一歩」と称賛した昨年のレバノン総選挙の結果、初入閣を果たしている。
そのヒズボラやハマスを国際テロ組織アルカイダと同列視する米国の発想は、アラブには容認できない。アラブから見れば、ヒズボラなどは社会福祉で住民に奉仕し、イスラエルによる占領と戦っている。アルカイダの無差別テロとは根本的に違うのだ。
米国は友好国の独裁を放置し、そうでない者には民主主義の手続きを強制して、結果が気に入らなければ暴力で倒す−。これが、アラブに広がる「中東民主化」観だ。
■「厚い雲」■
イスラエルはヒズボラとハマスへの両面作戦を続けるが、アラブ圏紙には、「民主的」選挙後、内戦に近づいているイラクを含めた「三正面」との分析もある。この三つの暴力の主因を「米・イスラエル連合の占領」ととらえる見方だ。
米国と蜜月のイラクのシーア派は、ヒズボラ支援の大集会を開催。駐イラク米大使でさえ「レバノン危機はイラクに影響する」と懸念を表明。シーア派が米国離れを加速させれば、既に絶望的とすらいえる政治・治安情勢の先に、内戦以外の結論はない。
アラブ為政者らはレバノン破壊が、穏健なイスラム教徒を変ぼうさせる危険を警告。実際、ヒズボラに触発されたイスラム原理主義思想はさらに広がり、イランの地域的影響力も増している。教義の違うアルカイダは新組織の加盟を公表した。
「もう私には、中東の新しい政治地図を描けない。地平線で厚い雲に覆われている」。ヨルダン国王は英BBCに、その苦悩を吐露した。「ヒズボラが滅びても、二、三年で新たなヒズボラが現れる。ヨルダン、シリア、エジプト、イラクで」
イラク戦争の開戦時、エジプトのムバラク大統領は「この戦争は百人の(アルカイダ指導者)ビンラディンを生む」と語った。
またも繰り返された、同じ警告。「新しい中東」は、米国の描く姿とは百八十度異なる輪郭になるかもしれない。
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