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http://onuma.cocolog-nifty.com/blog1/2006/08/post_47a5.html から転載。
2006-08-13
〔いんさいど世界〕 「英国テロ」を「アルカイダ」に「焦点化」することはあやまり 米国のテロ専門家が警告 NYT紙が報道 「世界をシンプル化」する「精神へのテロリズム」に反対する!
英国での「テロ計画」をすぐ「アルカイダ」に「焦点化」することは過ちを招く――米国のテロ専門家がそんな警告をしていると、ニューヨーク・タイムズ紙(電子版、8月13日付け)が報じた。
今回のテロ計画では、ラシード・ラウフという男がアルカイダとのつながりがある、というパキスタン当局の見方でもって、またもすぐさま、「アルカイダ黒幕」説が流れているが、NYTのスコット・シェーン記者によるこの報道は、そんな「思い込み」に一石を投じるものとして注目される。
シェーン記者はまず、CIA(中央情報局)の元当局者で、「テロのネットワークを理解する」という本の著者でもあるマルク・S・セイジマン氏の発言を紹介する。
セイジマン氏はこう言う。
「もしあなたが、アルカイダが9・11を実行したグループだといまも考えているのだとしたら、それは非常によい疑問だとわたしは思わない。われわれがアフガニスタンに行って壊滅させたあと、かつて存在したようなアルイカイダのようなものはない」
アメリカはアルカイダを壊滅させた。だから、アルカイダはもう存在しない。なのに、なぜ、アルカイダを持ち出すのだ、との指摘である。
セイジマン氏はしかし、こうも語る。
「わたしたちは古い(オールド)アルカイダとの戦いには勝利した。しかし、われわれは、アルカイダもその一部に含まれる、グローバルな社会運動には勝っていない。その運動に、若者たちが次々に参加しているからだ」
「グローバルな社会運動」を、「アルカイダ」の一言で片付けるな、との警告である。
シェーン記者は次に、かつてCIAのビンラディン追跡班のリーダーだったマイケル・ショイアー氏の見解を引く。
ショイアー氏はセイジマン氏が見る以上に、オールド・アルカイダの分子が残っているのではないか、との考えだが、今回の「テロ計画」にビンラディンは関与していないのではないか、という点では一致している。
ショイアー氏もまた、「アルカイダ」の役割は、より広汎な運動への「鼓舞(インピレーション)」と「(精神的な)支援(サポート)」にとどまっていると見るわけだ。
ではなぜ、米政府は(あるいは英政府は)、なにかと「アルカイダ」の名を持ち出すのか?
米連邦政府軍事アカデミー(米軍大学校)の「反テロセンター」に所属するブライアン・フィッシュマン氏は、こう指摘する。
「敵がひとつしかないとき、世界はよりシンプルだから」
国際的なジハード(聖戦)運動には「中央機関」は何もない、という事実を、ワシントンが認めたがらないのは、そういう事情があるからだ。
◇
――以上が、シェーン記者による記事の要点だが、まさにその通り、同感である。
問題はアフガンだかパキスタンだかの山奥に潜んでいるらしい「アルカイダ」ではなく、「社会運動」となって生起している、それぞれの生きる場で「自己ラジカル化」した、地球規模の広汎な動きである。
パキスタンの当局者に「こんどもアルカイダです」と言わせ、「英国テロ計画」に「9・11」の記憶を摺り込んで、「テロとの戦い」に動員し、イラク侵略を糊塗しようとする動きに、日本のわれわれもまた警戒心を強めなければならない。
「世界」を「わかりやすさ」の中に縮減し、敵意=戦意を煽ろうとする「精神に対するテロリズム=プロパガンダ」に屈してはならない。
その意味で、世界のわれわれに冷静な判断を求めた今回のNYTのシェーン記者の記事は、評価に価しよう。
このような記事が早速、載ったということは、ブッシュ政権にさんざんお先棒を担がせられてきたNYT紙に、ようやく「正気のジャーナリズム」が帰って来た、ということかも知れない。
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http://www.nytimes.com/2006/08/13/world/europe/13links.html?_r=1&oref=slogin