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【持田直武 国際ニュース分析】中東の暗雲、第5次中東戦争の予見
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投稿者 迷える牧羊犬 日時 2006 年 8 月 12 日 10:26:08: FqUwaLW8ye0Cw
 

レバノン危機、イランの出方が次の焦点(2006年7月23日 持田直武)
持田直武 国際ニュース分析 http://www.mochida.net/report06/7ma5y.html

イスラエル軍と武装勢力ヒズボラの戦闘が拡大、死者が増え、街が破壊されている。戦火が、ヒズボラを背後で操るシリアやイランに飛び火すれば、第5次中東戦争になりかねない。アナン国連事務総長が停戦を提案したが、イスラエルと米は受け容れに消極的。停戦の前に、宿敵ヒズボラを徹底的にたたく構えなのだ。
・国連の停戦提案は宙に浮く

 戦闘は7月12日、シーア派武装勢力ヒズボラがイスラエル領に侵入し、イスラエル軍兵士3名を殺害、2名を拉致したのが発端。これに対し、イスラエル軍は大規模な砲撃や空爆でヒズボラの拠点を攻撃。一方、ヒズボラ側もロケットや小型ミサイルでイスラエル北部の町を攻撃。戦火はレバノンの首都ベイルート、イスラエル北部第三の都市ハイファにまで拡大した。戦火が、ヒズボラを背後で支援するシリアやイランに飛び火すれば、第5次中東戦争になりかねない動きである。

 この情勢に対し、ロシアのサンクト・ペテルスブルクで開催されたG−8サミットは17日の議長声明で「過激派が地域を混乱させ、より広範な紛争を引き起こすのを許すべきではない」と強調して、国連の介入を要求。これに答え、アナン事務総長は20日、安保理が次のような措置を取るよう提案した。
1、ヒズボラが拉致したイスラエル兵士を返す。
2、イスラエル国境沿いのレバノン領内に国際平和部隊を派遣する。
3、国際平和部隊はレバノン政府の治安維持能力の強化を支援する。

 アナン事務総長はこの提案をしたが、同時にイスラエルが停戦に反対しているため、早期の停戦は困難という判断も示した。同総長が現地に派遣した調査団の報告に基づく判断だった。それによれば、イスラエルは今回の軍事行動の目的として、拉致された兵士の奪還とともに、ヒズボラの脅威除去も目指している。そして、「その目的をまだ達成していない」と主張している。同総長はこうした情況から「停戦の早期実現はもちろん、双方が攻撃を緩めるのも今は難しい」との判断を示した。

・米国もヒズボラの脅威除去を優先

 危機は深まるが、主要国の方針は一致しない。英はじめEU諸国は早期停戦を主張するが、米はイスラエルを支持、停戦の前にヒズボラの力を除去するべきだと主張している。ボルトン国連大使は安保理で、「テロリストとどのような方法で停戦をするのか、だれも説明できない」と主張したが、ブッシュ政権内では、テロリストと停戦などを約束することは出来ないというのが常識だ。むしろ、今回の衝突を機に、ヒズボラを可能な限りたたく構えなのだ。イスラエルのギレルマン国連大使は安保理で、「テロとそれを支援するシリア、イランが問題だ」と主張したが、米とイスラエルはこの点でも一致している。

 ヒズボラは1982年、シリアとイランの肝いりで生まれたレバノンのイスラム教シーア派の組織。当時、イスラエルがパレスチナ武装勢力の攻撃を阻止するため、レバノン南部に緩衝地帯を設定して進駐した。ヒズボラはこれに対抗するために生まれた組織で、レバノン国内だけでなく、シリアの首都ダマスカスにも拠点を設置。組織も政治部門と軍事部門に分かれ、政治部門は学校や病院、農場などを経営して住民と交流するほか、合法政党として議会では128議席中23議席を占め、閣僚2人を出す与党として活動している。

 一方、軍事部門はレバノン政府軍とは関係のない、独立した民兵組織である。ニューヨーク・タイムズによれば、同組織は中心のゲリラ戦士300人のほか、活動家3,500人。ゲリラ戦士は、イランの革命防衛隊の訓練を受け、イラン製のロケットや小型ミサイルなど数万発を装備。今回の危機では、ベイルート沖に出撃したイスラエル海軍の艦艇に向けて巡航ミサイルを発射し、撃破した。イラン製シルクワーム・ミサイルとみられ、イランが最近ヒズボラ支援を強化している証拠となった。米とイスラエルはこのヒズボラの軍事力を一掃することを狙っている。

・当面、戦火拡大は避けられず

 国連安保理は20日からレバノン南部に派遣する「国際治安部隊」について協議を始めた。その一方で、イスラエルは予備役軍人の召集を開始した。空爆だけでは、ヒズボラの拠点一掃は難しいとみて、レバノン南部に地上部隊を派遣する、そのための準備という。地上部隊を派遣すれば、戦闘が長引くことは必至。戦闘が続く間は、「国際治安部隊」を派遣することはできなくなる。停戦の見通しは遠のき、戦火拡大の恐れが強まることは避けられそうもない。

 実は、レバノン南部には、すでに「国連レバノン暫定駐留軍」の2,000人が展開している。1978年の内戦終了後、地域の停戦監視役として派遣されたが、強制力もなく、イスラエル、武装勢力双方にとって頼りにならない存在だった。アナン事務総長は、「国際平和部隊」には、停戦監視だけでなく、武装解除などの強制力も持たせる案を示した。しかし、各国の意見は揃っていない。2004年の安保理1559決議は、民兵組織の武装解除を決めたが、この決議に従って武装解除した組織は、ヒズボラはじめ今のところ1つもない。これら過去の例がイスラエルに国連に頼らない理由を与えている。

 イスラエルの敵は、上記のギレルマン国連大使の発言に見られるように、ヒズボラとともに、シリア、イランである。イスラエルにとって、ヒズボラの力を除去しただけではまだ終わらないと見なければならない。80年代初め、レバノン南部の駐留軍司令官だったスネフ将軍はCNNに対して、「今回の戦闘は、イスラエルとイランの決戦の第1ラウンド」と解説した。戦闘が次の段階に進む前、国連はじめ国際社会が効果的に阻止しなければ、戦火は拡大し、第5次中東戦争に進みかねないだろう。

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引用元:http://www.mochida.net/report06/7ma5y.html

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