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「イスラエルの暴挙停止へ世界の市民が行動を」 天木・元レバノン大使とダーヘル・レバノン大教授
イスラエル軍の攻撃によって多くのレバノン国民の血が流され続けているにもかかわらず、国際社会はなす術を知らぬかのようである。この悲劇を食い止めるために、私たちは何もできないのだろうか。天木直人・元駐レバノン大使とマスード・ダーヘル・レバノン大学教授は7月31日、東京の反差別国際行動(IMADR)国際事務局で緊急記者会見を開き、「イスラエルの暴挙と平和への挑戦を止める唯一の手段は、世界の市民が『こんなことが許されていていいのか』と抗議の声を上げて国際世論を動かすことだ」と訴えた。(アジア記者クラブ通信)
天木:私がレバノン大使時代に仲良くしていた友人の1人のレバノン国立大学のマスード教授がたまたま国際交流基金(ジャパン・ファウンデーション)の招待で東京外語大学で研究するということで久しぶりに会った訳ですけれど、教授が来た2日後にイスラエルのレバノン攻撃が起こった。
私は本当に驚いたのですけれど、ダーヘル先生はもっと驚いた。彼はそれから毎日のように奥さん、家族に電話して情勢をフォローされてきたのですが、日増しに情勢が悪化していく。彼はもともと研究のために来日したのですが、1日たりとも研究に手がつかないような状態だという。あたりまえですよね。
その彼が2日前のカナの攻撃を見て、ここまで非人道的なことが放置されていて、それに対して国連もどこの国も何ら具体的なアクションをとることなくいたずらに1日が過ぎていくことに耐えられなくなったという。私もそういう教授の意見とまったく同じ思いですから、ぜひ日本の国民にアピールしようと思い会見を開きました。日本の政府にアピールするつもりはまったくなくて、日本の国民に実情を知っていただきたい。
私の話はここまでで彼に話してもらいますが、彼が言おうとしていることはだいたい私が聞いた限りでメモにまとめましたので、彼の話の後に私が補足して、私の思いを話させていただいて、最後に皆さんの質問に彼が答えるということでやっていきたいと思います。
▽平和憲法を持つ日本国民への期待
ダーヘル:元レバノン大使の友人と今回こういう形で記者会見を開けて感謝しています。
私はレバノンの教授として長年日本と関係をもってきて、ときどき日本を訪れては両国の友好関係について研究を重ねてきた。今日は政治的な観点からでなくて、人道的な観点からぜひ話を聞いていただきたい。日本の皆さんが平和を愛する友好国の人びとであり、レバノンと日本両国の友好関係を知っていますので、ぜひ日本の皆さんに私のことを聞いてもらいたい。
まず自分の家族のことからお話ししたい。自分の家族は今友人のところに避難して、同じように何千人・何万人もの人が同じような状況にある。20万人が国を離れ、80万人が難民生活を強いられている。すでに750人くらいの犠牲者が出て、7000人くらいが負傷している。非常に短期間の間にここまでひどい状況がレバノンで起こっているということをまず申し上げたい。
とくに昨日起きた事件は非常にショッキングでした。すべてのレバノン人、アラブ人、そして国際社会の人たちが衝撃を受けた。実はカナに対する攻撃は2度目で、ちょうど10年前の1996年に同じように同じ場所で避難民が攻撃されて105人が死んだ。今回は63人が死に、そのうち37人が子供です。これは前回よりもっと悲惨なことが起こったということです。
ライスさん(米国務長官)が2度目のレバノンを訪れようとして首相がそれを断った。つまりすべての政治的な交渉が昨日の事件でストップしてしまった。何もこれが初めてでなくて、この1週間にあらゆる破壊が行われ、いまレバノンは国全体が非常事態になっている。その前は国連の監視団が攻撃されて死傷者が出ている。レバノンというのは小さいとはいえ主権国家です。これほどの国際法違反で一国が蹂躙されているというのに、もし国際社会が何もできずにこういう状態が続けばいったいどういうことになるか、皆さんに考えていただきたい。
レバノンは本当の意味で犠牲者です。これは人道に対する罪である。独立国がここまで無条件で攻撃されていることを訴えたい。
私はこの機会を利用して、イスラエルがこのレバノン攻撃を1日もはやくやめるように皆さんが記事を書いていただくようお願いしたい。皆さんを通じて日本国民に、平和憲法9条を持っている日本国民に、この攻撃を1日も早くやめさせるような人民の運動、そういうものが何らかの形で結成されて、それがイスラエルのレバノン攻撃をやめるような形になることを期待してアピールとさせていただきます。
最後にぜひ日本の皆さんがレバノンを何らかの形で救済していただけるようにお願いしたい。
▽大国の国際政治に翻弄される小国
天木:私は3年前までレバノン大使として両国の友好のために力を尽くして、私なりにレバノンの置かれている状況、中東紛争における国際政治をみてきました。今回のレバノン攻撃には非常に衝撃を受けました。それは驚きであり、悲しみであり、怒りである。なぜ驚いたかというと、そもそもの発端がヒズボラによるイスラエル兵士の誘拐であった。しかしながらヒズボラとイスラエルの小競り合いは、私がレバノンにいた2年半に毎日のように行われていて、その間にも残念ながら、ヒズボラがイスラエル兵を誘拐したとかいう事件はあったんですね。これが初めてではなかった。それは政治交渉で捕虜交換をしたりして解決してきた。一種のゲームであるとも言われていた。これが今回、このような形でイスラエルがレバノンを攻撃したというのは、私の2年半の経験から言うと非常に驚きであったわけです。
2つ目に私が悲しいと思ったのは、レバノンは常に大国の国際政治の犠牲になってきた。1975年から1990年までの15年間にまさに内戦に苦しんだ。この内戦も大きな原因はイスラエルとパレスチナの紛争に起因しているが、大国の代理戦争の犠牲として15年間苦しんで、国が徹底的に破壊された。私が赴任した2001年はその内戦が終わって十数年後で、ものの見事に復興したレバノンを見てきました。
当時、1年前に暗殺されたハリリ首相が自慢げにいっていたのは、大きな写真集を出して、見開きで片一方に完全に破壊されたベイルート、その同じ場所を15年後にどれだけ復興したかを対比して出して、それを彼は国際社会にアピールしていた。
写真を見たとき私は、こんなにひどい破壊を人間ができるのかと、人間の残酷性を感じたと同時に、これだけ短期の間にこれだけ復興できる人間のすばらしさを感じ、かすかな望みをもっていました。しかしながらそれが、まさに3年後に破壊された。そして私がつきあってきたレバノンの友人が、ダーヘル教授が言ったように(彼の家族も含めて)80万人が難民になった。
これが大変な悲しみであるわけで(涙声)。私の怒りはですね(間)、なぜここまでの不当な攻撃を国際社会が止められないのか(涙声)、これはもう政治以前に彼が言ったように、人間としての人道的な見地から許せないことと思います。私は彼と違ってもはや誰に気兼ねをすることもない1人の人間ですから、私は外交官としての自分の経験を生かしてこの際、日本国民、世界の国民に言いたいのですけれど、我々は米国とイスラエルをあまりにも甘やかしすぎた(涙声)。子供を殺し、国連の平和軍を殺し、そして地中海を石油で汚染する。どれ1つをとってみても政治とは関係なく、世界の人類がこれを許すことができない。にもかかわらず世界は米国とイスラエルの暴挙を止めさせるために何もできない。もしこれが許されるのであれば、私は世界に平和は絶対に来ないと思う。日本国民がいやしくも平和憲法9条を持って平和を愛する国だと、憲法を守るのだと言っているのであれば、なぜこれほどまでの平和に対する挑戦に対して行動がとれないのでしょうか。
私は国際政治の現実を知っています。いま世界は米国に楯突くことをやめたわけです。イラク戦争で世界は分断されて二度と再び米国と政治的に対立したくない。あるいはアラブの国は米国の圧倒的な軍事力の前に本当のことを言わなくなった。米国と一緒になって自分の政権を守りたい。日本だって米国・イスラエルと対決したくない。世界の国はこれほどまでに不当なことが行われてもまともに非難することをやめた訳です。
しかし、世界の国民は、アラブの国民は、欧州の国民はみんな怒っているわけです。私はこの機会を通じて世界の市民に「そんなことでいいのか」と訴えたい。彼らがそれぞれの国に圧力をかければ国も動かざるを得ない。私はイスラエルの暴挙を止める唯一の手段は国際世論の圧力しかないと思っています。
さらに言えば、もっと深刻な事態がこの3年間放置されてきた。それはガザなんです。いまでもガザで人が殺されている。このイスラエルのレバノン攻撃はまさにパレスチナ問題そのものなのであり、私が3年前に米国のイラク戦争に反対した最大の理由は、ここまでパレスチナ人が蹂躙されているときに、いっさいそれに手を打とうとしない米国が再びイラクで市民の犠牲を出そうとしたからです。これを許すことができないというのが、私が声を上げざるを得なかった理由です。
残念ながらまさに3年後に私が当時予測していた最悪の状態がいま中東を覆っているわけです。イラクをみてください。誰がみても手をつけられない内戦になっています。ガザはますます住民が追い込まれている。そしてこのレバノン攻撃。
ライスは今度こそ本当の平和を実現するためにイスラエルの攻撃に関与しないのだと発言している。それは何を意味しているかというと、まさに反イスラエル・反米、ブッシュや彼女がいう「テロ」を皆殺しにするまでは手を緩めないということです。これこそ人道に対する犯罪以外の何ものでもない。私は自分では何もできないけれども、私ができることは報道が正しく本質を報道しないなかで、私自身が自分の経験から本当のことを言いたいと思って、この機会を利用して話させていただきました。
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200608031220274