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(軍事ジャーナリスト神浦元彰さんのサイト)
[概要]イスラエル政府は1日の緊急閣議で、レバノン国境から約30キロのリタニ川以南の地域からヒズボラ武装勢力を排除することを決めた。また国際部隊が展開する数週間は、この一帯をイスラエル軍が占領をすることを決めた。これによってイスラエルの国軍投入戦力は倍増の5個旅団となる見込み。
イスラエル軍の発表によると、イスラエル軍はレバノン国境沿いの7地点を突破し、激しい戦闘を行いながらリタニ側にむかい北上している。AP通信によるとリタニ川沿いの複数の目標に対し計3波の空爆があった。イスラエル軍は日本時間の2日午前7時から空爆を全面再開するという。
戦略目標のリタニ川は国境に平行するように流れる。70年代はパレスチナゲリラが周辺を拠点とし、78年にイスラエル軍が「リタニ作戦」を実施してゲリラ掃討を試みた。82年のレバノン侵攻後は川に沿う形で安全保障地帯を設置し、2000年まで実効支配した経緯があり、イスラエルにとっては心理的な「防衛線」と見なされている。だが広大な地域のため短期の制圧は難しく、占領が始まれば戦闘停止も困難で、国際社会の反発も強まりそうだ。また、現在停戦案として議論されている「国際部隊」も、「戦闘終結が前提」とっされており、イスラエルの戦線が拡大すれば停戦の枠組み作りが難航する。イスラエルの軍事行動は極めて危険な領域に入っている。
レバノンのシニオラ首相は親米的であったが、「イスラエル軍を撤退させるためにヒズボラは実に有効な役割を担っている」と称賛し、ヒズボラ支持の姿勢を鮮明にさせている。シニオラ首相は30日にライス国務長官の訪問をはねつけ、路線転換を明らかにしている。ヒズボラ指導者のナスララ師は「熱意を持って政府に協力する」と言い切った。
一方、イスラエルのベレツ国防相は1日、シリアからレバノンのヒズボラに武器が流入し、ヒズボラの弱体化を妨げているとし、「シリアからレバノンに向け武器を搬入する車両を今後攻撃する」と述べた。しかし同時に、「シリアとの間で戦端を開く意図はない」とも語った。
[コメント]確かにレバノン情勢はさらに悪化しており、イスラエルは極めて危険な領域に入った。そしていつも言うことだが、レバノンの背後にシリアがあり、その背後にはイラクの泥沼にはまった米軍がいる。さらにその背後にはシーア派のイランがいるのである。明らかにヒズボラはイランが育ててレバノンに送り込んだ。そしてシリアの武器援助で反イスラエル勢力として活動している。その意味ではイランの革命防衛隊の弟分で、戦略や戦術は民兵から発展したような武装組織とは全く違う。その経緯から、パキスタンが育てたタリバンよりもヒズボラの方が高い戦闘能力を保持している。
だからイスラエル軍がレバノン侵攻を行えば、リタニ川まで引き込む作戦をタリバン側が仕掛けた可能性がある。そしてヒズボラはイスラエル北部に向けた発射していた短距離ロケット弾を、こんどはレバノン南部に展開するイスラエル軍に向けて発射し、長期的にイスラエル軍の犠牲を出す作戦の様である。イスラエル軍は兵士の出血以外にも、経済的・精神的な負担をイスラエルに求めるのである。これがイランの革命防衛隊が考える作戦であり、レバノンに侵攻したイスラエル軍が避けられない罠になる。
だからといって、リタニ川まで侵攻したイスラエル軍が素早く「国際部隊」と替わることは難しい。イスラエルが交戦中であるのに国際部隊を受け入れることは、敗北を認めたことに等しいからである。
イスラエル軍は危ない橋を渡り始めた。長期・消耗戦というのはイスラエルにとって悪夢の再来である。