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□ラリー・ジョンソン:「イスラエルの愚かな選択」 [暗いニュースリンク]
http://hiddennews.cocolog-nifty.com/gloomynews/2006/07/post_4b19.html
07/19/2006
ラリー・ジョンソン:「イスラエルの愚かな選択」
元CIAテロ対策アナリストで、現在はセキュリティコンサルティング企業BERG Associates社CEOとして報道番組等で活躍中のテロ専門家ラリー・ジョンソン氏のブログ『NO QUARTER』から、イスラエルのレバノン攻撃に関する7月15日付記事を以下に全文翻訳して掲載。
(参考)イスラエルとヒズボラの戦闘、及びイスラエル軍によるレバノン侵攻までの経過
(ワシントンポスト紙の報道から抜粋)
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/custom/2006/07/12/CU2006071200913.html
6月25日、イスラエルのガザ地区撤退以来初めて、パレスティナの武装兵士達がガザ地区からイスラエル側を急襲し、イスラエル兵2人を殺害、19歳の兵士1人が拉致された。拉致された兵士の救出のため、イスラエル軍はただちに戦車とブルドーザーでガザ地区へ侵攻し、空軍によるガザ地区への空爆も開始された。
7月3日、イスラム原理主義組織ハマスの発射したロケットがイスラエルの都市アシュケロンに着弾し、紛争は激化。7月12日にはイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラがイスラエル・シュローミ市街のイスラエル軍施設に向けてカチューシャロケットを発射し、さらにイスラエル国境沿いの街シュトゥラではヒズボラ武装兵士達がイスラエル軍兵士の車列を待ち伏せ攻撃し、イスラエル兵士の内二人が死亡、二人が負傷し、さらに二人がヒズボラ側に拉致された。
イスラエルはヒズボラの行為を戦争と見なしただちに反撃を開始、レバノン南部の市街地にある道路、発電所等を爆撃で破壊した。イスラエル側はヒズボラの武装解除と人質となったイスラエル兵士の解放を要求、ヒズボラ側はイスラエル側に拘束されている政治犯の釈放が人質解放の交換条件と主張した。
イスラエル側はその後もガザ地区への空爆を激化させ、一般市民の犠牲者が増加している。さらにイスラエル海軍はレバノン沿岸を海上封鎖し、レバノン・ベイルート国際空港や道路・橋等を爆撃し破壊。ヒズボラ側もイスラエル北部へのロケット攻撃を行い、イスラエル側は二人の犠牲者を出した。現在もイスラエル軍によるレバノン、ガザ地区への攻撃は継続中で、ヒズボラ側は全面戦争を宣言し、イスラエルのオルメルト首相も戦闘継続を宣言しており、戦争が長期化する懸念も出ている。レバノンでは在住外国人の国外脱出が始まり、レバノン市民の避難民はすでに40万人に達している。
イスラエルの攻撃を支持し、国連安全保障理事会での議長声明による停戦呼びかけに反対したアメリカ政府は、ヒズボラを密かに支援しているとされるイランとシリアへ非難の姿勢を強めており、中東全面戦争の危険性はいよいよ高まっている。
イスラエルの愚かな選択(Israel Takes a Stupid Pill)
by ラリー・ジョンソン:ブログ『NO QUARTER』2006年7月15日付記事
http://noquarter.typepad.com/my_weblog/2006/07/isarael_taks_a_.html
中東においてアメリカを自己犠牲的行動に駆り立てるだけで満足できなかったイスラエルは、レバノン侵攻によって自らに火をつける決定をした。ジョージ・ブッシュ同様、イスラエル首相のエフード・オルメルトは戦闘経験がない上に、物事を考えずに軍事行動に走った。実際、オルメルト首相は軍隊経験もないようだ。私がこれを問題と思うのは、現在進行中の軍事作戦について、イスラエルは或る簡単な疑問−戦略的軍事目標の設定について回答できないからである。オルメルトはイスラエル軍が戦略を無視し、急場しのぎで考えるように何とか説得しているが、その進行具合はいよいよ愚かしくなっている。今後数週間に発生する出来事で、テロリストを殺せば国家が安全になるという迷信の虚偽性が明らかにされるだろう。それは無理な話なのだ。
『テロリスト』を殺害することは政治的には意味があるが、戦略的軍事目標にはならない。それは急場しのぎのやり方で政治目標には沿うかもしれないが、イスラエルを安全にするという条件にはほとんど貢献しないのだ。イスラエルは現在、まるで酔った水兵が酒場でケンカしているみたいに、レバノン各地を攻撃している。武器を振り回し、深刻な手傷を負いながら、罪なき見物人を殴り、全体としては事態を悪化させている。これはもはや、あのエンテベの見事な闘いを成し遂げた頃のイスラエル軍ではない。
ハマスとヒズボラはどうだろうか?
連中はテロリストではない。テロ攻撃を実行しているが、テロリストとはいえないのだ。むしろ、彼等はそれよりはるかに危険だ。テロ行為を行う彼等は政治、社会、宗教、軍事組織として完全に機能しており、アルカイダやバスクのテロ組織よりもはるかに厄介な存在である。軍事行動を支える資源と人材に恵まれ、我慢強く作戦遂行でき、簡単には敗北しない。1973年のエジプトとシリアの軍隊とは違い、ハマスとヒズボラは簡単には屈服も敗走もせず、7日間戦争のような具合にはいかないだろう。イスラエル軍の作戦担当者がそうした見方をしているとしたら、馬鹿げた妄想だ。
アメリカ合衆国のほとんどの人々は、哀れな小国イスラエルがその存亡を賭けて、巨大で凶悪なイスラム国家と戦っているというハリウッド流のストーリーを黙従しているが、テレビ画面から伝わる現実は別の物語を示している。ポール・ニューマン主演の『栄光への脱出』は古代の歴史に過ぎない。ハマスとヒズボラは軍事目標を攻撃した−偵察中の兵士を拉致するという事実は戦争行為であり挑発的だが、しかしテロリズムではない。(もちろん、ヒズボラとハマスは過去にイスラエル市民に対してテロ攻撃を行ってきた。私はそうした事実を無視するつもりはなく、糾弾しているが、ここでは現在進行するダイナミズムを理解してほしい)イスラエルは兵士を撃った個人に攻撃しているのではない。イスラエルは大衆の懲罰に打って出たのだ。
イスラエルはどのように対応したか?彼等は市街地と民間施設を爆撃し、多くの一般市民を殺害している。自分にこのような権利が許されたらどうなるか考えてみよう。アラブ人『テロリスト』は軍事目標を攻撃し、少なくとも一台の戦車を破壊したので、テロリストと認定される。イスラエルはその復讐に、陸・海・空軍の戦力で市街地を攻撃し、それを正当防衛だとしている。もしもこの論理の偽善性に気づかないとしたら、我々はすでにプロパガンダと感情に深く蝕まれており、イスラエルやヒズボラ、ハマス同様、冷静に考えることができなくなっている。頭に浮かぶのは、部族主義と復讐心だけなのだ。
一方でイランは、有利な立場にいる。彼等は良く訓練され高度に競争力のある代理戦力をヒズボラ内に有している。金曜日(14日)に成功させたイスラエル海軍船舶への攻撃は、RPGを抱えたサンダル履きのイカれた連中とヒズボラとの違いを見せ付けている。イラン軍部の戦略アドバイザーが少なくとも1人、イスラエル船舶に向けたヒズボラのミサイル発射を手伝ったという説に私は喜んで賭けよう。しかし、イランは単純な報復活動以上の事を計画している。彼等は戦略的に思考するのだ。
イラクとレバノンで進行中の出来事は、テヘランの思い通りである。世界中のメディアから、アメリカ合衆国は市民攻撃を容認し実行している連中として提示されている。そうした認識は現実となり、合衆国がロシア、中国、さらにはフランスにまで支援を求めることは一層困難となった。北朝鮮とイランによる核の拡散に効果的に対処するには、国際的協力が必要である。それが今、世界の怒りからイスラエルを守るという試みのために、アメリカは身動きがとれなくなっている。
過去には、合衆国はイスラエル側とイスラム側の両者から充分に信頼され、両者間で起こる流血の惨事から距離を置いて、巨大な戦争へとエスカレートする前に介入し防止することができた。ブッシュ政権には、そうした介入と情勢の沈静化を目指す者は誰一人いないようだ。なにしろ、ジョン・ボルトンとエリオット・エイブラムスがこの件を主導しているのだから、我が国はイスラエル側ということになる。
映画『レッド・オクトーバーを追え!』で米海軍提督を演じたのは前上院議員フレッド・トンプソンだった。祖国を裏切った潜水艦の追跡を巡ってアメリカ合衆国とソ連の緊張が高まる中、彼は言った:
「この商売はやがて手に負えないものになる。生き残ることができたらラッキーだ。」
この言葉は現在の我々に重くのしかかっている。そのような事態が発生しないように祈ろう。
(以上)