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(回答先: 陸自第1陣、イラク撤収 30人がクウェート―「東京新聞」 投稿者 天木ファン 日時 2006 年 7 月 08 日 00:03:10)
http://newsworker.exblog.jp/4110203
イラク派遣の陸上自衛隊部隊の撤収をめぐって、以前のエントリーで指摘していたのだが、やっぱり報道に混乱が起きた。クウェートで予定されていた撤収第一陣の取材が、直前というかその場で一方的にキャンセルされた(共同通信記事)。
(引用開始)
額賀長官が報道を“妨害” 「隊員の安全」理由 [ 07月08日 00時17分 ] 共同通信
クウェートのムバラク空軍基地で予定されていたイラクからの陸上自衛隊撤収第1陣の取材や撮影が7日、額賀福志郎・防衛庁長官の指示で直前に中止され、報道各社に撤収報道の自粛が要請された。同基地には40人近い報道陣が待機、突然の一方的な通告で混乱した。
同日夜に防衛庁で記者会見した額賀長官は「迷惑をかけ心からおわびしたい」と陳謝しながら「大局から見て、安全を確保する上で撤収が完了するまで計画を明らかにすることは適当ではないと判断した」と繰り返した。
(引用終わり)
各紙の報道の中では、ここまでの舞台裏の動きも含めて、東京新聞の社会面サイド記事(防衛庁による「取材妨害」と表現している)が詳しい。同紙サイトにはアップされていないので、一部を紹介する。
(引用開始)
取材陣との事前取り決め 一方的に破棄
防衛庁の取材妨害は、「額賀福志郎防衛庁長官の指示」によるものだった。しかも、額賀氏は、6日のうちに広報課から取材対応の報告を受けており、直前になっての取材拒否への方向転換は、有終の美を飾りたい首相官邸の意向が働いたとの見方も出ている。
イラクからの撤収前、主要新聞・テレビ各社が加盟する防衛記者会と防衛庁は、「報道の自由」と「隊員の安全確保」のバランスから、報道するのはイラクからクウェートに移動する第一陣と復興支援群長を含む最終陣の二回に限るとの取り決めをした。
(中略)取り決めに基づき、七日夕、防衛庁から記者会に同日夜のイラク出国が伝えられ、クウェートの報道陣はムバラク空軍基地で待機した。
午後八時十五分(日本時間)、防衛庁広報課は「大臣の意向」として記者たちを報道官室に集め、辰己昌良広報課長から「安全の観点からクウェート取材はやめてほしい」と一方的に通告。記者会は「無視する」と席を立った。
同じころ、クウェートでは報道陣が強制的にバスに乗せられ、現地記者は「防衛庁と記者会がもめている」と事実と異なる説明を受けた。途中、午後九時十分(同)ごろ、航空自衛隊C130輸送機がムバラク空軍基地に着陸。予定された隊員への取材は防衛庁の意向でキャンセルされた。
東京では記者会室に説明に来た守屋武昌事務次官が二週間に及んだ防衛庁と記者会による調整を「承知していない」。記者会見した額賀氏は「取り決めは本日午後六時半ごろ知った。隊員の移動について防衛庁はコメントしない」と責任回避の姿勢に終始、取り決めの白紙撤回を宣言した。(以下略)
(引用終わり)
イラクからの陸自撤収をめぐっては、うかつにもヤメ蚊さんからTBをいただくまで知らなかったのだが、こんなこと(東奥日報=共同)もあった。
(引用開始)
英軍同行のイラク取材却下 日本政府要請で英外務省
【ロンドン29日共同】英外務省は29日までに、サマワを含むイラク南部への英軍同行取材を求める日本の報道機関数社の申請を却下した。日本政府が英外務省に対し、日本人記者に同行取材させないよう協力要請したため。
ロンドンの日本大使館は要請の理由として「邦人にイラクからの退避勧告を出しており、邦人記者にも適用される」と説明。当初は受け入れに前向きだった英外務省も要請に外交的配慮を示した形だ。
英政府は英軍が管轄するイラク南部バスラなどへの訪問を極力避けるよう勧告しているが、報道関係者については同行取材などの便宜を図っており、日本政府の要請については「極めて異例」(英外務省当局者)との見方をしている。
(引用終わり)
日本政府、額賀防衛庁長官は、何が何でも自衛隊の撤退は報道させたくないらしいことがよく分かる。しかし、ではその理由は何だろうか。撤退そのものは国際的にも周知の事実だ。今回の取り決めによっても、報道、つまりニュースが流れ記事が紙面に掲載されるのは、撤退の隊員がクウェートに到着した後のことであって、「安全」は理由にならない。本音は情報管理、報道統制の実験ではないか、と疑いたくもなる。
そう思うのは、一方でこの数日間、防衛庁は政府(官房長官)とともに、北朝鮮のミサイル発射に関しては、詳細な発表を続けたからだ。額賀氏は公式の記者会見にとどまらず、いわゆる「囲み」のぶら下がり取材でも、相当に踏み込んだ情報、見解を口にするサービス振りだった。マスコミ報道を介した危機の演出≠ヘ十分すぎるほどだったのではなかろうか。
これでもう「世界の中の日米同盟」も「在日米軍の再編」も、北朝鮮のミサイルの脅威を持ち出されれば、反対の声はかき消されていくだろう。悪い北朝鮮を懲らしめるために、憲法を改正して自前の軍隊を持ち、日本海をわたって北朝鮮に侵攻できるだけの軍備を備えよ、という論調が強まるかもしれない。
これが「防衛庁」から「防衛省」への昇格を画策している日本の軍事組織の情報統制の実態であり、シビリアン・コントロールの実情だ。イラクと北朝鮮という2つの危機に際して、情報管理、報道統制の実験(いや軍事組織だから「訓練」か)を実地に行い、十分な結果を収めた、と言えば勘ぐりすぎだろうか。
イラク撤退の一件については、メディア側は徹底的に抗議してほしい。防衛庁長官更迭にすら値する。しかし、それはできないだろう、という予感もある。言論・表現の自由や知る権利に直接かかわることでも、今のメディアは足並みがそろわない。当事者意識が鈍感であり、希薄だ。その先例はあまりにも多い。