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【国際面】2006年07月29日(土曜日)付
ベイルートの避難所、生活悪化
【ベイルート=貫洞欣寛】レバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラとイスラエル軍の戦闘の長期化で、約70万人と推定されるレバノンの避難民の生活環境が悪化している。早期停戦への希望が持てないまま、人々はすでに2週間以上、不自由な避難生活を続けている。
28日、空爆を逃れてきたレバノン南部の住民が避難するベイルート市内の小学校で、NGOによる「心のケア」を受ける避難民の子どもたち=大野明撮影
●治療あきらめ
西ベイルートの繁華街に近いラウシェ地区にあるマナーラ女子小学校には、戦闘の激しいレバノン南部や空爆が続くベイルート南部ハレト・フレイクなどのシーア派地域から、約700人が避難した。各教室に、赤ちゃんやお年寄りを含め20〜30人が暮らす。
1階の手洗い場で、ハレト・フレイクから13日に逃れてきた裁縫業アハラームさん(39)が、長女の大学生フウェイダさん(22)とともにバケツで洗濯していた。
国立レバノン大学で生物学を専攻するフウェイダさんは「1日12時間しか水が出ない。飲み水の確保と洗濯に精いっぱい。この2週間シャワーに入れない。それに、私のような若い女の子にとって、着替える場所もプライバシーもないのは本当につらい」と言う。
弟の中学1年生アリ君(12)は、空爆を目の当たりにして、ショック症状を起こし、体の震えが止まらない。今も寝込んでいる。
「病院に連れて行ったが、鎮静剤の注射に30米ドル(約3500円)もかかると言われ、あきらめた」とアハラームさんはため息をつく。
レバノンの病院はほとんどが私立で診察料が高く、避難民には費用が払えない。持病のある人の病状の悪化も懸念されるため、国連は移動診療所の開設を検討している。
●食料も足りず
避難民の代表役としてほかの人々の世話にあたっているキファ・フセインさん(30)は「飲み水、食料、医療、衣類、寝具、すべてが足りない。国際社会の介入を訴えたい」と語る。
人々が暮らす教室に入ると、「これを見て」と、避難民の女性が食事の入ったプラスチック箱を持ってきた。レバノン風の炊き込みご飯が、箱の底にわずかに残っているだけだ。どう見ても数人分にしかならない。
食事は援助団体などが日替わりで持ってくる。取材した28日は故ハリリ元首相が設立したハリリ財団が、パンとご飯を持ってきた。だが、取材した教室は校舎の端にあるため、ご飯の箱が回ってくる間に、別の教室にいる人たちが先に取ってしまったのだ。
●村に家族残し
故郷に残してきた家族の身を案じる人も多い。イスラエル国境近くの村シャクラから逃れてきたウンム・アリさん(49)は、娘2人とともに13日、150米ドル(約1万7千円)を払って乗り合いタクシーで逃げてきた。
だが、結婚している長女と次女、その夫や子どもたちはタクシー代が払えず、今も村にいる。イスラエル軍は避難民を乗せたバスや救急車にも攻撃したため、危険を見越して車代が高騰し、ここ数日は600米ドル(約6万9千円)まで相場が上がっているという。普段なら、乗り合いタクシーでベイルートまで6米ドル前後だ。
ウンム・アリさんは「今の状況では、カネがなければ避難もできない。安く安全に避難できる方法をつくってほしい」と訴えた。
http://www.asahi.com/paper/international.html