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シバレイのたたかう!ジャーナリスト宣言。
ちょいカゲキなフリージャーナリスト 志葉 玲 が斬る、社会問題・国際情勢
陸自のサマワ撤退は目くらまし!拡大する空自の「対米支援」
イラク派遣自衛隊の撤収を発表 - 東京
【サマワ/イラク 21日 AFP】日本政府は20日、イラク南部の都市サマワ(Samawa)に派遣している陸上自衛隊員約600人を撤収することを発表した。経済面以外での影響力の行使を目指した小泉純一郎首相の陸自イラク派遣政策は、日本としては第2次世界大戦以来となる軍事ミッションだったが、国内では多数の支持を得られなかった。この度の自衛隊撤収は同首相の最後の任務の1つとなる。写真は同日、サマワの浄水所に集まる自衛隊員。(c)AFP/AHMAD ABDEL RAZAK
雑誌での仕事で忙しかったので、すっかりこの件について書くのが遅れてしまったが、 ご存知の通り、小泉首相は20日、自衛隊のイラクからの撤退を決定した…といってもあくまでサマワの陸上自衛隊(陸自)だけの話。クウェートから南部バスラやタリル空港へと米軍の物資や兵士達を輸送していた航空自衛隊(空自)は今後も活動を続け、さらにバグダッドなどイラク中部へも活動範囲が拡大される。これはタテマエだった「イラク復興支援」からホンネの「米軍支援」へと、自衛隊のイラクでの活動がよりハッキリしたことを意味する。だが、全国紙各紙の論説委員たちはノー天気にも「一人の犠牲者も出なくてよかった」と安堵して、「イラク復興支援は今後も続けなきゃ」などとのたまう。陸自撤退の問題とあわせ、空自の問題について社説で触れたのは朝日新聞のみ。陸自の活動の関しても、費用対効果やそもそも派遣が必要だったのか、などが問われることはなかった。
続き)
■本当に「一人の犠牲もなかった」のか?
自衛隊のイラク派遣は、これまで一応は「平和国家」として振舞ってきた日本の国策の大きな曲がり角だった。だが、大手メディア、特にその上層部は終始、問題意識ゼロで政府のオウム返しをしている有様なのだから、小泉首相もさぞかしラクだったことだろう。
各紙の社説では「一人の犠牲者もなく」という表現が目立ったが、本当に「一人の犠牲もなかった」のか。確かに04年1月の陸自のサマワ入り以来、(伝えられている限りでは)戦闘で殺された自衛官がいなかったことは喜ばしいことだ。だが、イラクに派遣された自衛官の内、少なくとも6人が帰国後に自殺していることも判明しており、イラク派遣によるストレスとの関連が疑われている。犠牲は自衛官だけではない。自衛隊派遣の事前調査という任務を負いイラク各地を飛びまわっていた奥参事官、井之上書記官は殺害され、事件の真相は未だに明らかになっていない。自衛隊派遣がゆえにイラクでは反日感情が高まり、04年の4月には日本人3人が誘拐され、あやうく殺されかけた。そして、同年10月には香田証生さんが惨殺された。これらの事実を無視して、「犠牲は出なかった。ノーヒットノーランぐらいすごいことだ」*等とはしゃぐノータリンな政治家をメディアは批判しなくてはならないのに、そのノータリンと同レベルになり下がっている有様だ。
*麻生外相の発言。24日の講演で。
■本当に自衛隊派遣の必要性があったのか?
自衛隊派遣の問題に関しては、これまで私はさんざん述べてきたので、詳しくは過去の記事を読んでいただきたいのだが、もし本当にその目的が「復興支援」であるならば、そもそも自衛隊派遣は必要だったのかという疑問はやはり残る。自衛隊のイラク派遣費用(空自・海自も含む)は現在わかっているだけで、735億円にも上る*。これに見合う復興支援を自衛隊は行えたのか。優秀なイラク人スタッフを2〜3人確保すれば復興事業のコーディネートは事足りる上、そもそも実際に現場で働いていたのは自衛隊員ではなく、イラク人労働者だったのに、計5500人もの自衛官を派遣するとは、すさまじいムダ使いである。その上、サマワ市中心部での水も電気の配給の滞りはイラク戦争以前よりひどい。仮に735億円を純粋に「復興支援」のみに使えたのなら、結果は違っていたはずだ。
*今年3月までの総費用。最終的にはさらに100億円前後、増えることになると思われる。
■いよいよ「米軍支援」というホンネがあらわに
陸自のサマワでの活動は費用対効果が悪すぎたし、特に米軍の軍事作戦が活発な地域で「米国に従う日本は敵」と対日感情の悪化につながり、民間の日本人がイラクで支援活動を行うことを事実上、不可能にしてしまった。それでも、陸自の活動は「人道支援」目的であった。
だが、空自の活動はより「米軍支援」の色合いが濃いと思われる。報道関係者に対しても、国会での野党議員に対しても、空自の活動実態が明らかにされることはないが、少なくとも米軍の兵員や物資を輸送していることは政府与党も認めている。少し古い情報だが、04年12月9日付けの共同通信の記事によれば、この記事が出るまでに空自が輸送した外国兵は約1200人で、ほとんどが武装した米兵。イラクの前線へ配置される兵士と、イラクから帰任する兵士がほぼ半数ずつで、クウェート〜イラク間を往復輸送していたのだという。
今年に入り、イラク駐留米軍のキミット准将が、陸自サマワ駐留継続に固執せず、むしろ空自の活動拡大を求める発言を繰り返していたのも、米軍にとって空自の活動が重要なものであることをうかがわせる。実際、空自は激戦地であるバグダッドに活動範囲を広げることを決定。やはり、空自の活動拠点として検討されているアル・アサドやバラドも、イラク全土の中で最も危険な地域の一つだ。しかし、自衛隊が行くところはどこでも「非戦闘地域」らしい。額賀防衛庁長官は「バグダッド空港は『非戦闘地域』」と発言。米軍が厳重な警備をしいているかららしいが、ここまでゴーインな解釈だともはや笑うしかない。バグダッド近郊では、昨年1月末、イギリス軍の飛行機が撃墜されているというのに。しかも、撃墜されたのは、空自が使用しているのと同機種であるC130なのだ。
■自衛隊イラク派遣の基本計画にも反する空自の活動
ところで、読者の皆様は「兵站(へいたん)」という言葉をご存知だろうか?兵站とは、戦争で必要な武器弾薬などの物資、兵員、食料etcを後方から前線に運ぶことだ。一見地味な作業ではあるけども、例えば先の大戦で旧日本軍は兵站をおろそかにしたため大敗したなど、兵站は戦争の勝敗を左右しかねないものなのである。それだけに、兵站は武力行使と一体とされるのは、戦時国際法での常識となっている。つまり、空自が米軍の物資や兵員を輸送するのは、「戦闘行為」と言えるわけだ。自衛隊イラク派遣にあたり、小泉首相はその基本計画の発表で、「武力行使はいたしません。戦闘行為にも参加いたしません。戦争に行くのではないんです」と力説していたが、これはウソだったということだろう。政府与党もそれを理解しているのか、今月22日の衆院イラク復興支援特別委員会で、額賀防衛庁長官は「陸自撤退後に自衛隊イラク派遣の基本計画を変更する」と発言している。より空自の「米軍支援」に都合のよい様に変えられるのかもしれないが、そもそも戦闘行為の一環である兵站は、自衛隊イラク派遣の法的根拠であるイラク特措法にも反する。本来ならば、米軍の兵士や物資を輸送していることが判明した時点で、即時活動を停止すべきだった。
■「人道復興支援」の偽善
政府与党は空自の活動範囲拡大について、「(イラク北東部の都市)アルビルの国連事務所への物資の運搬を行う」と、あくまで「人道復興支援」を強調する。OK、どうしても「人道復興支援」をしたければ、すればよい。ただし、アルビルは比較的安定している。無理して空自のC130輸送機を使わなくても、親日国トルコからチャーター機でも飛ばせばよいだろう。そして、あくまで「人道復興支援」に限り、米軍の兵士や物資など運ばぬことだ。そうすれば、小うるさい野党も文句言うことはないだろう。輸送の様子もメディア関係者達に公開すればいい。そうでなければ、やましいことがあるから公開できないのでは、と邪推したくなるものだ。
そして、何より「人道復興支援」などと偉そうなことを言う前に、政府与党が認識しておかなければならないことがある。
・「イラクが大量破壊兵器を保有している」という米国のデマカセに乗ってイラク攻撃を支持したこと。
・ファルージャ虐殺や最近明らかになったハディーサの虐殺など、米軍の無法ぶりに目をつむってきたばかりか、沖縄の基地を訓練・出撃のために米軍に使わせてきたこと。
・罪のないイラク市民を虐殺し続けてきた米軍やイラク内務省のために一体これまで何千億、何兆円もの税金を献上してきたか、ということ。
これらの事実に目を向けない限り、政府与党が「人道復興支援」などとほざいてもタチの悪いブラックジョークにしかならない。私の友人には、NGOや国連機関の職員として、本当に苦しんでいる人々を救おうとしている人が少なくない。彼らの奮闘を見聞きしている私はつい政府与党の皆様に、こう申し上げたくなってくるのだ。
人道復興支援をなめんじゃねぇ
カテゴリー[ イラク・中東 ], コメント[0], トラックバック[0]
登録日:2006年 06月 28日 19:50:32
http://www.actiblog.com/shiba/8939