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http://www.nnn.co.jp/rondan/tisin/060615.html から転載。
温故知新 −ビル・トッテン−
チャベスの貧困根絶政策
2006/06/15の紙面より
米国の裏庭とも呼ばれた中南米が変化を迎えている。ヨーロッパの宗主国だったポルトガルやスペインを追い出したあと、テキサスやメキシコだけでなく米国は中南米も支配下において侵略や略奪を行ってきたが、その状況が変わりつつある。
地球の地政学変化
日本に関係のない話ではない。ベネズエラの新聞によれば同国で油田採掘事業を行っていた帝国石油などの外資系石油会社は、石油事業国営化に伴い契約の改定や撤退を要請されているという。ベネズエラは世界第六位の原油国で輸出総額の80%を石油に依存している。中南米が米国支配から脱する試みを可能にした要因の一つは、石油などの資源が有限であるという事実だ。米国の覇権主義もグローバリゼーションも安くて豊かな石油なしには成り立たず、現在のように世界人口の5%にすぎない米国が全世界のエネルギーの25%を消費することは不可能となり、結果的に地球の地政学が変わることは必至だ。
反米姿勢は米国にとって許しがたい行為であり、ブッシュ大統領と関係の深い米国のキリスト教伝道師パット・ロバートソン氏は、昨年テレビでチャベス大統領は危険な人物で、暗殺すべきだととれる発言をした。彼は一民間人の声とするにはあまりにも影響力の大きな人物だ。
チャベス大統領はベネズエラ国民が民主的な選挙で選んだ指導者だ。就任以来、無料の国民医療サービスを提供し、民営化にも背を向ける政策をとっている。これが米国をいら立たせ、ラムズフェルド国防長官はチャベス大統領をヒットラーになぞらえるなど、世界から孤立させるプロパガンダを必死に行っている。
幸福になったのか
これまで中南米は米国のプロパガンダが通用していた。ボリビアのロサダ前大統領の選挙は映画にもなった。ロサダ氏の二〇〇二年の大統領選キャンペーンを撮ったドキュメンタリー映画『アワ・ブランド・イズ・クライシス』(危機こそわれらの戦略)がそれである。米国人の選挙コンサルタントの戦略は、国民に危機感をあおって、それを解決できるのは経験のある指導者だけだというものだったが、ボリビアの抱える失業や貧困を解決する策などロサダ氏も米国人コンサルタントにもない。そこでとったのはイメージ作戦だった。大統領になる鍵は政策ではなく選挙参謀がいかにライバルのひぼう中傷やあら探しをするか、そして無能な指導者をあたかも改革者としてイメージづけるか、これが米国流プロパガンダだ。
私がベネズエラやキューバといった国を賛美すると、インターネットの時代だけに、「お前のような反米の共産主義者は日本から出て行け」といった匿名メールがすぐに送られる。しかし私はソ連や北朝鮮、中国の共産主義や社会主義が理想だとか、それを手本にすべきだと思ってはいないし、それはありえない。私が言いたいのは、日本が妄信する米国流資本主義やグローバリゼーション、市場経済で果たして人間が幸福になったか、ということだ。
幸福の定義は難しい。文明の発達は先進国の生活水準を上げた。しかし世界に目を向けると貧困の格差は広がり、今では先進国の中でさえ二極化している。そんな中で、チャベス大統領はベネズエラの国民の多くを占める貧困層の生活を改善するために、たとえ国家経済の発展が遅れようとも土地や農村開発法などの法律を制定し、資源事業を国営化し、貧困地域の労働者に恩恵が及ぶように小規模企業向けの事業を推進するなどの方針を掲げ、それを実行に移した。自国内での貧困の格差是正に取り組んだ。
米国は「チャベス政権は(米国がテロ支援国家に指定している)イランやキューバとの関係を強化している、またコロンビアの左翼ゲリラのコロンビア革命軍や民族解放軍とも関係がある」(米国務省マコーマック報道官)などのネガティブキャンペーンを世界に流している。しかしわれわれは事実をありのままにみるべきだ。
米国こそ世界分断
事実とは、長年の米国支配下ではベネズエラの石油による利益は一部の富裕層または米国の手に渡っていたこと。チャベス大統領のもと、石油の利益が初めて国民の貧困を救うために使われるようになったこと。読み書きのできない貧しい国民のために学校が作られたということ。だからこそチャベスは米国や一部のベネズエラの富裕層の目の敵となっているということだ。
欧米のメディアは、これからもチャベスがイランと核兵器を作る計画だと攻撃し、貧困を根絶するという彼の政策をあざ笑うだろう。しかしイラクを侵略し、劣化ウランという核兵器を使って世界を分断しているのは米国の方だという事実は変わらない。(アシスト代表取締役)