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[AML 7597] テロの「陰謀」という罠に陥れられるマイノリティたち
http://www.asyura2.com/0601/war81/msg/312.html
投稿者 Kotetu 日時 2006 年 6 月 17 日 23:29:01: yWKbgBUfNLcrc
 

[AML 7597] テロの「陰謀」という罠に陥れられるマイノリティたち
toshimaru ogura ogr at nsknet.or.jp
2006年 6月 15日 (木) 11:57:37 JST

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小倉です。このところ、テロ対策と称して、強引な検挙が各国で続いています。
以下の文章中の典拠などは
http://alt-movements.org/no_more_capitalism/modules/weblog/details.php?blog_id=68
でごらんください。

以下、転載自由
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テロの「陰謀」という罠に陥れられるマイノリティたち
小倉利丸
2006/6/15

このところイギリス、カナダとテロ容疑での逮捕者が続いている。イギリスで
は、イスラム系の住民二人がテロ容疑で逮捕された。

カナダのトロントのケースは大規模なテロを想像させる報道になっている。(朝
日、読売6月4日)

報道によれば、逮捕されたのは、17名、このうち5名が未成年で、いずれもカ
ナダ生まれのイスラム系住民。容疑は、「爆薬の原料となる硝酸アンモニウム3
トンを調達」(読売、6月4日)した爆弾テロ容疑。ところがその後、この硝酸
アンモニウムの件はあいまいになり、それに代えて「首相を含む政界指導者を拘
束、首を切断する謀議」とか「議事堂の爆破、国営のカナダ放送協会(CBC)
の乗っ取りの犯行計画」などがセンセーショナルに報じられるようになる。
(CNNジャパン、6月7日)

政治家の首を切断するとか議事堂を爆破するといった人々に残虐なイメージを与
える「犯罪」が実際に起こされたわけでもなければ、実行の準備がなされたわけ
でもなさそうだ。これらの報道は、いずれも検察側の「起訴事実」(読売、6月
7日)あるいは「起訴概要」(CNNJapan、6月7日)に書かれていることを「事
実」として扱っている。しかし、いったいどれほどの現実性があるのか不明なま
まで、検察側が提示した犯罪容疑もいずれも、「plot」として書かれているだけ
のようだ。plotは、「陰謀」とか「謀議」といった意味だから、かなり実現性の
低い話も含まれていてもおかしくない。逮捕された当事者の証言ではないし、裁
判で立証されてもいない。弁護士も被疑者たちには会えていない。また、被疑者
たちのありとあらゆる行為は、テロと関連づけられて意味付けがあたえられてい
る。飛行機の操縦を学ぼうとしたこと、予備役の兵士として武器の操作を学んだ
ことなどだ。アルカイダに影響を受けたグループとされているものの、どのよう
な意味で影響を受けていたのかははっきりしない。海外のグループとの連絡もあ
るといわれているが、「連絡」の具体性がまだ明らかではない。

中東問題の専門家のロバート・フィスクは英国のIndependent紙6月11日にカ
ナダのメディアが人種主義に侵蝕され始めていると次のように厳しく批判してい
る。("How racism has invaded Canada, What is the term 'brown-skinned'
doing on the front page of a major Canadian daily?")

「(カナダのメディアの報道は)公正な裁判の機会を抑えざるをえない非難の大
騒ぎに興じている。同時にこの国にいる70万人以上のムスリムの人々の心に、
恐怖の種をまいている。実際のところ、もし私が今、カナダのムスリムであった
とすれば、町を離れるために飛行機の時刻表をチェックしていたかもしれない。
いや、むしろこのように町からムスリムを追い出すことがメディアの目的だった
のかもしれない」

さらに、つぎのように、書いている。

「「事実」について詳細に調査することもなく、これらについての情報源に疑問
をなげかけることもなく、記者たちは、この17人が議会、CSIS[カナダの諜報
機関]、カナダ放送協会、その他雑多なターゲットを爆破することを様々計画し
ていたと読者に語ってきた。」

このトロントの17人の容疑は何ひとつ立証されておらず、被疑者の弁護士には
8ページ足らずの容疑概要が示されているにすぎないにもかかわらず、メディア
は犯人扱いをしていること、しかもその報道の仕方は、しかも当初最大の容疑と
された硝酸アンモニウムの件は、重視されなくなっているという。フィスクが危
惧するのはこうした逮捕に至る容疑内容の曖昧さだけでなく、この事件をカナダ
国内もまたテロから自由ではないと主張し、カナダに住む70万人に及ぶイスラ
ム教徒たちを敵視するような雰囲気がひろがっている点だ。フィスクは、カナダ
の有力紙『Globe and Mail』が、その一面で、逮捕の模様を目撃していた人の証
言を報じるなかで、わざわざ「茶色の肌の若者」という表現を用いていることに
注目して、なぜ肌の色を特に書かなければならないのかという疑問を呈してい
る。マスメディアが媚びへつらう有能な警察官については、「白い肌の警察官」
とは書いたりしないからだ。フィスクは、わざわざ肌の色を表現するという記述
の作法の中にメディアの人種差別を見抜いている。「この泥沼のなかで、カナダ
のジャーナリストたちは、この国のアフガニスタンへの新たな軍事関与の現実を
なんとか和らげようとしてきた」。しかし、アフガニスタンへの軍事介入を通じ
て、カナダははっきりと中東への戦争に関与している。このことが、国内のムス
リムの人々を「他者」扱いし、排除しようとする抑圧をもたらし、その結果、イ
スラムの人々の怒りを蓄積するという憎悪の連鎖が生まれたとしても決して不思
議ではない。こうした憎悪の連鎖の原因は軍事介入にあることはいうまでもない。

イスラム系住民17名の逮捕に対して、カナダ国内の反戦運動の中から、彼らを
支援しようという動きがすでに出ている。Mobilization Against War and
Occupation - MAWOは9日付けで、「トロントの17人を守れ!、国内の反ムスリ
ムの魔女狩りの犠牲者たち」という声明を出している。
DEFEND THE TORONTO 17! Victims of the Anti-Muslim Witch Hunt at Home

この声明のなかで、逮捕後1週間たっても、明確な犯罪の事実を捜査当局は示し
ておらず、弁護士に示された8ページの犯罪の概要に先にも述べたように、実行
性をともなわない「plot」としてしか犯罪「事実」が述べられていないことを指
摘し、これらの容疑はいずれも17人の若者の「おおざっぱな話、個人的な欲望
や考え」にすぎずないと指摘している。さらに、この声明のなかで、日本でも報
道されている3トンにおよぶ爆弾の原料は、じつは捜査当局がおとり捜査で被疑
者たちに売った疑いもあるという。日本では、おとり捜査が認められたのは最近
であり(薬物取引の捜査など法令上は限定されている)あまり知られていない
が、違法行為をさせるために、違法行為に誘導するような行為を自ら行なうとい
う汚い手を使うことがあるのだ。この声明によれば、逮捕された17人は弁護
士、家族との面会も認められていないようだ。「陰謀」の容疑といった曖昧な証
拠しかないにもかかわらず、カナダ政府はテロの恐怖を煽り、ムスリム系住民へ
の差別を助長し、結果として彼らに対する公正な裁判が行なわれない可能性を厳
しく批判している。声明では、このような事件のさなかに、CSISが、過去5年間
のアフガンやパキスタンからのカナダへの移民の90パーセントが十分なチェッ
クを受けていないと述べることによって、ムスリム系住民へのよりいっそうの監
視強化が図られることを警戒している。こうした政府やメディアの状況の中で、
かれらは誰も殺したわけでもないにもかかわらず、テロリストの容疑というだけ
で重刑に処せられる可能性がある。これまでも、米国では、911同時多発テロ
の共謀で起訴された被告は、実行犯ではないし、板行を否定しているにもかかわ
らず終身刑を言い渡されたり、キューバのガンタナモ基地に裁判もなく長期拘留
されるなど、「テロ」というレッテルによって過剰な刑罰がまかりとおるように
なっている。

先のフィスクのエッセイの最後にも触れられているのだが、冒頭で言及したイギ
リスのケースについて簡単に降れておこう。今月2日にロンドン郊外のフォーレ
スト・ゲートでテロ容疑で二人のムスリム系の若者が逮捕され、このうち一人は
銃撃を受けて負傷した。深夜マシンガンで重武装した250名の対テロ特殊部隊
による逮捕だった。この事件も日本では、「数カ月に及ぶ捜査の末に重大なテロ
計画を封じることができた」(サンケイ)などと報じられたが、その後誤認逮捕
としてすでに釈放されている。この事件も、検挙直後から、捜査当局の逮捕の手
法が極めて暴力的であったことや、被疑者とされた若者たちがテロリストだとす
る容疑への疑問が出されていた。しかし、捜査当局は居直り、疑いがあるという
だけでも、逮捕や強制捜査をすることは正当だと主張している。逮捕された二人
は警察を提訴するとしている。(Channel 4 "Brothers in terror raid speak
out")

このカナダとイギリスの事件は、私たちにいくつかの重要な問題を提起してい
る。フィスクが厳しく批判しているように、メディアの人種主義は日本のメディ
アにもいえることだ。「茶色い肌」といった言い回しの代わりに日本のメディア
は何のためらいもなく犯罪を国籍と結びつけるような表現をもちいる。犯罪の被
疑者が日本人か外国人か、外国人は白人か黒人か、アジア系かなどに好奇心をも
つ。捜査当局や政府も「外国人犯罪」という奇妙な犯罪類型を持ちだし、日本人
の犯罪と区別したがる。こうした人種主義が、テロとの戦争という政治と密接に
関わり合っていることを軽視すべきではない。

さらに日本のメディアの問題は、事件発生当初の報道しかなされず、イギリスの
ケースでは逮捕された若者たちのその後には無関心だ。その結果、実際にテロの
容疑が事実でなかったとしても、人々に事実に基づかないテロへの恐怖が植え付
けられ、人種的な偏見が増長されるという事態が起きている。こうした人種的偏
見への回復措置すらとろうとしていない。

またカナダやイギリスの捜査手法は、日本に共謀罪が導入された場合にいったい
どのような事が起きるのか、ということを考える上で見逃すことのできないケー
スだと思う。テロ対策の名目で強引な捜査が正当化されていること、しかも実行
行為にいたらないすっと手前の思想、信条、単なる感情の段階でまさに「共謀」
ともいえる「テロの陰謀」での逮捕である。かれらが考えたり話したりしたこと
を根拠にして逮捕しているという点で、日本に共謀罪が導入された後に必ず同種
の人権侵害が起きるであろうと予見させるような事件である。たぶん日本であれ
ば、ムスリム系の住民である可能性だけでなく、在日朝鮮人や中国人コミュニ
ティが同様の監視、排除、敵視の対象となる危険性が高いのではないだろうか。
イラク反戦運動は、この意味で、米国との同盟国がどこでもかかえはじめている
国内の住民に対する治安弾圧という課題に取り組むこと、とりわけ政府が敵国と
みなす国々の国籍をもつ人々や、国内の人種差別を被っているマイノリティの人
々への排除との闘いが、平和運動の重要な課題となることはまちがいないと思う。

http://alt-movements.org/no_more_capitalism/modules/weblog/details.php?blog_id=68

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toshimaru ogura
ogr at nsknet.or.jp
People's Plan Study Group(PPSG)
Asian Peace Alliance Japan(APAj)
Networkers against Surveillance Taskforce(NaST)
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http://list.jca.apc.org/public/aml/2006-June/007266.html

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