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新政府発足も陸自撤収まだ遠く
米の動向も影響
政府は、イラク南部のサマワに駐留する陸上自衛隊の撤収に向けて調整を加速している。イラク新政府の発足を受け、「早ければ、6月から着手も」との期待感も高まっているが、新政府の体制が完全に整ったとはいえず、治安回復の見通しも立っていない。陸自撤収には、まだハードルが多い。 (梶雅一)
早期撤収の期待が高まるのは、イラク新政府のマリキ首相がサマワを含むムサンナ州で6月にも、治安維持の権限を多国籍軍から地元治安組織に移譲できるとの見解を示していることに起因する。
もし、それが実現すれば、陸自は秋口撤収の政府方針を前倒しして6月末にも着手し、7月には全部隊をクウェートなどに移動させる道筋も見えてくる。撤収は、ともにサマワに駐留する英豪両軍と同時に着手する方向で調整を進めている。
だが、6月の撤収着手は、すべての段取りが順調に進行した場合の「楽観論にすぎない」(政府筋)との見方が大勢。現在のイラク情勢は、陸自撤収の条件をまだまだ満たしていないからだ。
撤収時期は、イラクの政治プロセスや復興状況、治安情勢、多国籍軍の動向に照らして判断するというのが政府の大原則。比較的合格点に近いのは政治プロセスだが、治安を担当する内相などはまだ決まっていない。
比較的治安がよいとされるサマワでも今月中旬、警察への一斉攻撃事件が発生したばかり。マリキ首相の見解は、多国籍軍の駐留を望まない国民への配慮がうかがえる。
こうした中で、最も撤収時期を左右しそうなのが、陸自の駐留継続を望んでいる米国の動向だ。
小泉純一郎首相が「サマワから自衛隊が引き揚げても、復興支援は続ける」と重ねて強調しているのは、イラク政府と同時に米政府へのメッセージでもある。
政府はすでに、イラク新政府への約800億円の円借款を表明。クウェートを拠点に輸送業務を行っている航空自衛隊は、陸自撤収後も活動を続ける方針だ。今後は首都バグダッドや、国連が拠点を設ける北部アルビルにも航路を拡大し、国連や米軍の輸送支援を行う方向で調整している。
しかし、日本政府の「環境整備」にもかかわらず、米側からは色よい返事が伝わっていない。
小泉首相は6月末の訪米の際に、ブッシュ大統領とイラク問題についても意見交換する予定だが、「イラク派遣のお礼の意味で国賓待遇されるのだから、首相は撤収は口にしにくい」(政府筋)との見方もある。撤収への道はまだ険しそうだ。
(2006年5月29日)
http://www.tokyo-np.co.jp/feature/iraq/