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大きな問題であるのは航空総隊司令部の横田基地移転である。 【北大路機関】
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投稿者 hou 日時 2006 年 5 月 21 日 01:03:00: HWYlsG4gs5FRk
 

http://harunakurama.blog.ocn.ne.jp/kitaooji/2006/05/post_99e6.html

日米の米軍再編 資料分析の狭間から
米軍再編を考える

 資料分析の狭間からというよりも議論の狭間からといった内容であるが、昨日、米軍再編に関して、憲法学の教授の呼掛けで小生と法学部の友人(本ブログでも幾度かカキコしていただいた方)との間で、意見交流のような、若しくは議論が行われた。今回はその議論から、日米間の米軍再編に関する思惑の相違や、双方の利益などを記述したい。なお、議事録ではないので編集者の主観が濃厚に反映されている点を此処に明記しておきたい。

世界規模での米軍再編、その目的

 今日ラムズフェルド国防長官の主導により進められている再編は、現ブッシュ政権以前からの戦略的環境の変化、即ち冷戦構造の周辺に伴う大規模武力紛争の可能性の相対的低下と、地域紛争の拡散に伴う“不安定の弧”の形成が挙げられる。

 冷戦時代であれば、ソ連軍の機甲部隊の津波のような侵攻に備えるべく十万規模の陸軍部隊を西ドイツに派遣し、また朝鮮半島にも複数機甲師団による全面武力侵攻を想定し、一個師団(機械化歩兵)を配置していた。しかし、冷戦後、機甲師団規模での戦闘は1995年のクロアチア軍による『嵐作戦』や1990年のイラク軍クウェート侵攻くらいしか思いつかず、60d近いM-1A2主力戦車や25dのM-2歩兵戦闘車が絶対的に必要な事案は考えにくくなった。事実、イラク戦争では第三機械化歩兵師団により大規模に運用されたこれら重装備も、アフガニスタンには派遣されていない。

 重装備というものは、本来的には海上輸送によって展開する。確かにC-5やC-17といった大型輸送機によっても空輸可能であるが、大型輸送機の絶対数は限られており、またその限られた輸送機も一方面に全力投入する事は出来ない。イラク戦争でイラク北方から米空挺部隊(第173空挺旅団)が展開し北方からイラク軍を牽制したが、同時にこの空挺部隊に装甲化された支援部隊を送る際、C-17輸送機24機を空挺部隊の兵站支援とともに重装備空輸に用いたのだが、戦車5輌、歩兵戦闘車5輌、装甲車(M113)12輌、自走迫撃砲4輌とその支援車輌を空輸するのに12日を要している。

 米空軍には500機程のC-130戦術輸送機があるが、これら重装備はC-130には大きすぎ、重すぎて搭載する事が出来なかった訳である。従って、従来どおり船舶による輸送により世界の紛争地域に展開する手法が用いられたが、従来型の民間LOLO船の場合12〜20ノット、アルゴル級高速輸送船で35ノットであり、展開にはどうしても一定以上の時間を要する。これを“距離の専制”といった。

 C-130に載るほど軽量で充分な火力と防護力をもつ装備はないのか、こうした問題への解答がストライカー装輪装甲車である。1993年10月にソマリアへ展開した米軍は、装甲化されていない軽量装備のまま首都モガディシオで戦闘に巻き込まれ19名の戦死者を出した、いわゆる“ブラックシーの戦い”である。これを教訓に地域紛争に対応でき、大規模紛争にも重装備が到達するまでの間暫定的に対応する目的で世界各国の装甲車と比較検討のうえで、スイス製装甲車を改良する形でストライカー装甲車は開発された。装輪装甲車というと日本の96式装輪装甲車を思い出すが、ストライカーは人員輸送型以外にも105_砲を搭載した機動砲型や対戦車ミサイル搭載型、155_自走榴弾砲型、自走迫撃砲型などのバリエーションがあり、309輌の各種車輌でもって一個旅団を編成する。これはエリックシンセキ陸軍参謀総長の主導で進められたが、ラムズフェルド国防長官は個々に目をつけた。

 全陸軍歩兵旅団のストライカー旅団化を掲げ、これを55個旅団分編成するという構想である。海軍のフリゲイトを代替する沿海域戦闘艦には、さらにストライカー一個中隊の輸送能力が盛り込まれ、展開を補完する。また、戦車や歩兵戦闘車、自走榴弾砲は現行の重装備はFCS(将来型戦闘システム)に統合される。10dクラスの共通車体に120_滑腔砲を搭載した対戦車型、砲身の短い155_榴弾砲(砲身が短いと火薬燃焼効率が低下し射程が縮むが、新型砲弾により補う構想)型、人員輸送型や偵察型を派生型として開発し、C-130に搭載可能な装備で固めた重装備師団によって任務を代替しようという考えである。

 こうして、将来的に米軍の展開能力は飛躍的に上昇する為、現在行われている欧州と北東アジア地域における米軍の前方配置を根本的に見直し、米本土と世界数箇所の戦略展開拠点から必要に応じて適宜展開させ任務終了後は撤収するという態勢へ移行しようとしたのが今回の米軍再編の根幹である。

日本側からみた米軍再編

 日本側から見た米軍再編は、その本質的意義を踏まえていたかについて懐疑的な点が多い。

 基地再編に関しては、第三海兵師団主力のグアム移転、普天間海兵隊航空基地の閉鎖と沖縄県辺野古沖への代替新航空施設建設、厚木基地における陸上空母発着訓練中止を目的とする航空母艦艦載機の岩国基地移転、神奈川県キャンプ座間への第一軍団司令部移転、そして航空自衛隊の要撃航空作戦全般を指揮し、全国28箇所と空中早期警戒機、早期警戒管制機からの情報を一手に引き受ける航空総隊司令部の米空軍横田基地への移転が挙げられる。

 普天間海兵隊航空基地返還に関しては、沖縄に駐留する第三海兵師団が事実上の予備部隊化し、その駐留規模が著しく低下した時点ですでにその意義は失われていたもので、1990年代に嘉手納基地などへ機能移転するべきであったものを新しく新基地へ移転させた点である。加えて言えば、輸送対象の海兵師団主力がグアムに移転するのならば、ヘリコプターを沖縄県内に置く意義はあるのかという事になる。無論、これは長崎県佐世保基地の米海軍強襲揚陸艦の艦載機としての性格を有している為であるが、沖縄県に配置する蓋然性はなくなるわけで、海上自衛隊大村航空基地や陸上自衛隊目達原駐屯地や高遊原駐屯地(双方ともヘリコプター部隊が駐屯)への機能移転も議論されるべきではなかったのか。また強襲揚陸艦そのものもグアムへの移転は行い得なかったのかということとなる。

 厚木基地の陸上空母発着訓練は、新聞記者の言葉を借りるならば異口同音に『艦載機が厚木の市街地に墜落すれば安保体制を揺るがす問題となる』といわれる。この点、騒音問題となっているのは陸上空母発着訓練であり、航空機部隊の駐留そのものにあるのではない。米海軍は距離の関係で忌避したとされるが、例えば硫黄島や小笠原諸島への陸上空母発着訓練機能移転や、比較的過疎地域にあり(従って騒音被害発生が考えにくい)茨城県の航空自衛隊百里基地への陸上空母発着訓練任務移転を充分に検討するべきであったが、結果的に山口県岩国基地に大量の税金を投入して滑走路の海上延伸工事が実施された。平成20年度予算で航空自衛隊小牧基地のC-130輸送機の空中給油機化が実施される。給油方式は救難ヘリコプターへの給油を対象としたものであるが艦載機のものと同じである。距離が遠いと却下された小笠原方面への陸上空母発着訓練移転も、この空中給油機により支援が行え得る態勢(たとえば若干すうを埼玉県の航空自衛隊入間基地に派遣するなどして不測の事態に対応する)を採れば、岩国移転も、工事費用ももっと別の有意義な方策に用いられたのではないだろうか。

 軍団司令部が来る!として大騒ぎしている神奈川県キャンプ座間への第一軍団司令部移転であるが1994年まで第九戦域軍団司令部がおかれていたことを忘れてはならない。たしかに第三機械化歩兵師団や第25軽歩兵師団をその編成に含む第一軍団は任務担当範囲がグローバルであり、日米安全保障条約に含まれていた極東条項に抵触する可能性は否定できない。第九戦域軍団司令部が任務対象としていた範囲は主に台湾海峡と朝鮮半島であったといわれるからこの点は確かに重要である。しかし、インド洋・アラビア海において作戦を行う米第三艦隊を横須賀の第七艦隊旗艦ブルーリッジが指揮していたというこれまでの慣行と比較すればどうだろうか。グローバリゼーションの一つの柱としてインターネットを介した知財の全地球規模での移転が挙げられている。指揮命令も同じく電気信号化されWeb上で合通している訳だ。加えて、幕僚機構のみの移転であれば、規模はかつての第九戦域軍団司令部と同規模、もしくは自動化が進み減少している事だろう。

 対して、大きな問題であるのは航空総隊司令部の横田基地移転である。弾道ミサイル防衛に関する米空軍からの迅速な情報移転を目的とした点が理由付けされているが、そんなものはリエゾンオフィサーを置くだけで充分であった。データリンクの端末で情報交換を行えば良いのであって、航空自衛隊が独力で得た全ての情報を無料で渡す事はなかったはずである。航空総隊司令部といえば規模こそ違うもののNORAD(北米防空総司令部)と同じ任務を負っている。そのような重大施設を日本国内とはいえ、米軍基地内に移転するというのは国家主権をも揺るがす重大問題である。ただちに撤回する必要があろう。弾道ミサイルに関する情報はハワイのヒッカム空軍基地米太平洋空軍司令部に集まる。弾道ミサイル情報を得るのであれば航空総隊司令部のヒッカム移転がより有効であるが、これは非現実的である。したがって、航空総隊司令部はそのまま府中基地に置き、弾道ミサイル防衛情報交換室を横田基地・ヒッカム空軍基地に置き、データリンクで結べばいい。

 最後に、移転費用の日本側負担であるが、額賀防衛庁長官とラムズフェルド国防長官が日本側負担7000億円で合意した三日後に3兆円への拡大がウォレス国防次官から発表された。日米閣僚級協議を吹き飛ばす暴挙であったが、在日米軍駐留分担経費(思いやり予算)12年分という膨大な額である。思いやり予算そのものもドイツの同様の予算の16倍程度、イギリスの駐留経費一部分担金の30倍以上であるからその整合性も議論するべきであったのだが、なによりも3兆円は捻出困難である。師団の旅団化にともない駐屯地に余剰があり訓練場も豊富な北海道帯広や間もなく旅団化が実施される真駒内への移転も充分検討されるべきであった。上陸演習が可能な浜大樹海岸や榴弾砲の長距離射撃が可能な矢臼別演習場があり、強襲揚陸艦やドック型揚陸艦の母港として青森県に海上自衛隊の大湊基地がある。

憲法と自衛隊

 昨日こうした議論を行った中で、憲法と自衛隊の関連について話が言及したが、憲法改正が自衛官の士気高揚に当たるという考えはどうだろうか。最高裁が統治行為論と判断した以上、内閣法制局の統一解釈が違憲ではないとした判断が自衛隊と憲法の関係性である。

 自衛官の話を聞けば、憲法問題には関心はないが、左翼団体や平和団体が駐屯地や基地周辺でデモをやると、炎天下であっても警備に動員される為疲労著しく、むしろ反対運動に対して憤りがあるという。シビリアンコントロール、民主主義を考えればこうした反対運動は命令を出した永田町や議事堂前でやるべきであって、自衛官への嫌がらせはやめて欲しい、ということだ。全くの正論だ。

 対して、憲法改正で士気高揚につながるかと聞けば、微妙であるという。憲法改正で具体的に自衛隊と自衛官の身分はどのように変わるのか、自衛官は無論のこと政治家、官僚、学者、研究者が夫々異なった解釈や定義、想定で話をするためこの部分が不透明であるのがその理由であろう。憲法問題と自衛官の意識を考える事自体がナンセンス、憲法問題よりも保守政治家や憲法を盾に自衛官に迷惑行為を働く平和団体や左翼団体に対して、自衛官や自衛官家族、若しくは支持者が憤っているように感じる。

 防衛庁の省昇格であるが、これも同様だ。省に昇格すれば内局は地位が向上するが、統合幕僚長が統合幕僚庁長官になったり、する訳ではなく、自衛官の任務は余り変わらないだろう。これも政治家や官僚主導の問題であって、自衛官には余り関わり内容に感じる。

 自衛官の米軍に対しての感情はどうか、学者が持つイメージとは異なり、充分な装備、良好な居住環境、美味い食事に憧れを抱く程度である。

米軍再編後の自衛隊

 米軍再編後の自衛隊はどのように変わるのか、最後の議論テーマであった。

 小生の私見であれば、多分変化は乏しいであろう。米軍の膨大な量に及ぶデータリンクにはNATO諸国ですらも追随できないという。また、日米両軍には言語の壁という問題がある事を忘れてはならない。自衛隊の小銃班と米軍のライフル分隊が共同任務を行えるかとなれば、まず言語の壁にぶつかろう。

 米軍にとっての日本からの最大の恩恵は基地の供与である。航空基地一つとっても三沢・横田・厚木・岩国・嘉手納、いずれも充分なキャテパシーを有し、基地そのものも航空自衛隊の要撃網、陸空自衛隊の地対空ミサイルにより防護されており、日本列島そのものも海洋を隔てて周辺国と緩衝地帯を有する為、在日米軍基地は極めて安全である訳だ。また政治形態も安定しており、安保条約も解消する可能性は遠い将来にも考えにくい。米軍再編後、余り変化はないのではないだろうか。

 第一に考えるべきはステレオタイプからの脱却である。まず知るべきなのだ。小生はこう考えるのである。

 一方で幾度か述べたが、米軍再編の根幹である“軽く展開能力に優れ、充分な防護力と火力を有する装備”は本当に可能なのか、デスクトップパソコンより全ての面で優れたノートパソコンを要求しているようなものだ。この新装備が実用性を欠いていた時、再度の米軍再編が行われる可能性があるのではないか。

 意見その他のコメントがいただけると幸いである。

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