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太田述正コラム#1219(2006.5.7)
<今年中にも対イラン攻撃か(続々)>
1 始めに
今年に入ってからも、既に2シリーズ、計3回にわたって同じタイトルの
コラムを上梓してきたところですが、最近、きな臭さが一層漂ってくる感が
あるので、再度この問題を取り上げておきたいと思います。
2 英ストロー外相の更迭
先般行われた英国での統一地方選挙での与党労働党の冴えない結果を受け
て、ブレア首相は、内閣改造を断行しました。
とりわけ話題を集めているのがストロー(Jack Straw)外相の更迭です。
もっぱら後任が女性(Margaret Beckett)であることが(英国の外相に女
性が就任するのは史上初であることから)注目されている(http://politics
.guardian.co.uk/labour/story/0,,1768925,00.html。5月7日アクセス)中
で、ガーディアンは、ストロー更迭の最大の理由が、対イラン武力攻撃をめ
ぐるブレアとストローのスタンスの違いにあることを二度にわたって概要以
下のように指摘しています。
(以下、このストロー更迭については、http://commentisfree.guardian.
co.uk/ewen_macaskill/2006/05/post_69.html(5月5日アクセス)、及び
http://politics.guardian.co.uk/labour/story/0,,1768929,00.html(5月
7日アクセス)による。)
政治家ははっきりモノを言うのを控えるものだが、ストローは、ブレア政
権の対イラク政策が英国内で不評を買っていることもあり、「対イラン武力
攻撃など考えられない(inconceivable)」、と言い続けた。
しかし、ブレアは、イランの脅威が今日の世界における脅威の中で最大の
ものだと見ており、この脅威の除去について、ブッシュ以上にご執心だ。も
ちろん、対イラン武力攻撃が確実に起きるというわけではないが、ブレアと
しては、イランの抑止のためにも、対イラン武力攻撃という選択肢は残して
おくべきだと考えている。
だから、英首相官邸(Downing Street)は外務省に対し、何度も電話して
ストロー外相に、対イラン武力攻撃を明確な形で否定するなと注意を喚起し
た。ホワイトハウスからも英首相官邸にストロー発言に対する苦情の電話が
あった。
よりにもよって、その後でストローは、ブッシュが選択肢として残すこと
にこだわっているところの、核を用いた対イラン武力攻撃について、「ばか
げている(nuts)」と切り捨てた発言を行ったのだ。
ブレアとしては、対イラン武力攻撃が現実のものとなれば、ストローの首
を切らざるをえないところ、早手回しにそれをやった、というところだろ
う。
3 武力攻撃は9月までにイスラエルによって
4月の下旬、ロサンゼルスタイムスは、対イラン武力攻撃が行われるとし
たら、今年9月までに恐らくイスラエルによってだ、と概要以下のように報
じました(以下、武力攻撃の時期と主体については、http://www.latimes.
com/news/opinion/commentary/la-oe-brooks28apr28,0,7214012,print.
column?coll=la-news-comment-opinions(4月29日アクセス)による)。
4月25日、ロシアはイスラエルのために偵察衛星を打ち上げた。この衛星
の目的はイラン核施設の監視であると考えられている。同じ日に、ロシア
は、イランに7億米ドルで29基のトール(TorM1)防空ミサイルを販売する計
画を予定通り進める意向を表明し、更に国連安保理がイランにいかなる制裁
を科することにも反対する、と改めて表明した。
ロシアのこの二股膏薬的対外政策は、中東で新たな地域戦争を勃発させる
ことを意図したものだという説がある。米国を困らせ、石油や天然ガスの価
格を高騰させることで得をするのは(石油・天然ガス産出国である)ロシア
だ、というわけだ。
この日は、イスラエルのオルマート(Ehud Olmert)首相が、「誰であれ、
われわれを破壊する能力ないし力を持つことは許さない」との決意を改めて
表明した日でもある。
9月にはイランで上記トール・ミサイルの(恐らく核施設周辺への)配備
が完了し、そうなればイスラエルだけではイランの核施設に手が出せなくな
るので、イスラエルは9月までに対イラン武力攻撃を行うだろう。
4 コメント
以上からすると、直接手を下すのがイスラエルか米国かは依然はっきりし
ないものの、対イラン武力攻撃に向けて、ファイナルカウントダウンが既に
始まっている、と言っても良いのではないでしょうか。
http://www.ohtan.net/column/200605/20060507