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『ゆったリズム』ゆえの抵抗 <特派員の目>
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kok/20060430/mng_____kok_____002.shtml
「革命は好きだが、改革は嫌いな国民だ」…。二カ月以上に及ぶ大混乱の末、撤回されたフランスの若者雇用策「初回雇用契約」(CPE)。「ノン」を叫び続けた仏国民、白旗を上げた仏政府に対し、欧米メディアの報道は大半が辛らつだった。
CPEは企業の雇用促進のため二十六歳未満の雇用に二年間の試用期間を設け、この間は理由なく解雇できる内容。
米メディアは「働かずに国や企業に面倒を見てもらう既得権を守りたいだけ」と論評。欧州各国の論調も同様に厳しく、「法律に不安定を書き込むのは暴挙だ」などと批判的だった仏国内の反応とは好対照だった。
フランスに一年半住んでいるが、この国の「働き方」には違和感を持ち続けてきた。役所や銀行窓口などのサービスは悪く、長いバカンス中は客を無視して手続きが止まる。三十五時間と短い週法定労働時間には「労働の価値をおとしめる」との批判もあるほどだ。
が、本当にフランス人は「改革」嫌いなのか。
フランス人が今回、漠然と不安を感じたのは、雇い主が主導権を持ち、経済効率や市場原理が優先される米英タイプの自由主義社会の到来だ。能力や意欲が生かされる社会でもあるが、小泉純一郎首相が構造改革の名の下に進めてきた日本では所得差などさまざまな問題点も噴出している。
留学中にフランス人の恩師が言った言葉が記憶に残っている。「英米のアングロサクソン系は経済のために文化がある。でも、フランスでは経済は文化を高める手段の一つにすぎない」
手厚い労働者保護策がさまざまな弊害を生む半面、「ゆったリズム」がこの国の誇る文化や芸術、独創性を生み、世界一の観光立国の要因になってきたことは忘れてはならないだろう。
CPEを撤回させたパワーの源は、経済効率が国際標準となる中で、独自の価値観を持つフランス人のささやかな「抵抗」だったとも言える。 (パリ・牧真一郎)