★阿修羅♪ > 戦争80 > 410.html
 ★阿修羅♪
【岡崎久彦・岡本行夫・山崎正和】イラク開戦3年目に親米・右派文化人に問う(2)【成澤宗男の「世界を読む」:JANJAN】
http://www.asyura2.com/0601/war80/msg/410.html
投稿者 傍観者A 日時 2006 年 4 月 29 日 20:07:58: ebe9fDsQ1Z63o
 

http://www.janjan.jp/column/0604/0604273451/1.php?PHPSESSID=790224cc27a2b01c28912478cec09396
イラク開戦3年目に親米・右派文化人に問う(2) 2006/04/29

 前回、3年前のイラク開戦と前後した日本の親米・右派文化人の論議について検討を試みたが、取り上げるべき論者が抜けていたり、あるいは当然批判されてしかるべき言説を欠いていたことを認めなければならない。そこで、引き続き彼らの批判を継続したい。

 特に今回、筆頭に論じられるべきは岡崎久彦・元駐タイ大使だろう。この人物は今や自分の名を冠した「研究所」を持ち、『読売』を筆頭とする保守論壇主流派において外交分野に関する論者の中では大御所的な存在と見なされている。

 そのため少し細かな検討を加えたいが、イラク戦争に関するそのブッシュ擁護論は、結果として他国に思考を預けてしまった親米派の欠陥が浮き出る好例になっている。

 その例が、『諸君!』03年4月号の田久保忠衛・杏林大学教授との「棍棒と警棒を取り違える勿れ!」と題した対談だ。そこでは、この種の論者の傾向である不確かな現状認識が浮き出ている。冒頭、前回取り上げた1441のことだろうが、「安保理決議」は(核施設や関連文書の公開等の)「武装解除」を求めているのだから、「査察で証拠が見つかる見つからないの話ではありません」と発言している。

 当時の状況に即すると、国連は1441によってそうした「武装解除」が遂行されたか否かを確定するためにこそUNMOVICとIAEAに査察を行わせたのであって、「見つかる見つからないの話」こそが根本問題だった。だからこそ安保理の場でフランスのドミニック・ガルゾー・ド・ヴィルパン外務大臣(当時)が「査察は安保理決議1441の基盤そのものである」と協調し、査察の継続を訴えたのではなかったか。

 最初から「米国の鵜呑み」に徹しているため、こんな基本的な事実認識すらできてないのだろうが、この点では田久保教授も同様だ。これを受けての発言がふるっている。「1441は、虚偽の報告や深刻漏れがあれば『重大な違反』に当たると規定し、その場合は『深刻な事態に直面する』と警告していたんですから、パウエル国務長官の報告からも明らかなように決議違反は明白です」

 この時点で開戦には至っていないが、あたかもすでに国連が武力侵攻にお墨付きを与んばかりのようだ。「決議違反」を確定するのはあくまでUNMOVIC とIAEAであり、もし「重大な違反」があったら「直ちに安保理に報告する」ことが1441に明記されているが、この査察を継続した二つの機関から開戦までそうした「報告」はなかったはずだ。だからこそ、米英は武力行使を正当化する「新決議」採択に失敗したのではなかったのか。

 第一、当の本人が「イカサマ」だと認めた「パウエル国務長官の報告」なるものは、最初から安保理が決定を下す正規のプロセスには組み込まれていない。ちなみに田久保教授は、『正論』2003年4月号の「緊急座談会 アメリカのイラク攻撃、北朝鮮の核恫喝……」で、「今の日本には……『大和魂』がすっかり薄れてしまっている」と発言している。米国の言い分を鵜呑みにしかできない自立した思考の欠落者が、一方で「大和魂」などとやたらにナショナリストぶるのは昨今の親米派の特徴らしい。

 さらにこの後発言した岡崎元大使は、「その違反を突かずに、単純な反戦運動をあんなにやってみせたら、サダム・フセインが選択を間違えますよ」と口をすべらせている。「違反」か否かを決定するのは「査察」の結果によってのみなのに、「査察で証拠が見つかる見つからないの話ではありません」というのでは矛盾の極みだ。細かいようだが、こうした発言は端的に両者の問題の無理解を雄弁に証明している。

 元大使の発言は、ここでは何やらすでに国連の場でも武力行使を正当化する名目が立っているかのようなニアンスが濃厚だ。ところが、結局、米軍が安保理を無視して開戦した後の『産経』3月25日付の「イラク戦争 小泉総理の米国支持は近年にない快挙だ」になると、国連の二文字が消えている。

 代わって登場するのは、「日本が唯一指針とすべき事は、評論家的な善悪是非の論ではなく、日本の国家と国民の安全と繁栄である」というような言わば居直りの理屈だ。どう前述の対談を読んでも「評論家的」に米国の「善」と「是」を強調しているように思えてならないのだが、ならば最初からイラクの「違反」を云々したのは何のためだったのか。

 『産経』で言っていることは単純明快で、要するに「国連安保理」や「サダム・フセイン」といった「話ではありません」。なぜなら「日本が国民の安全と繁栄を守るためには、七つの海を支配しているアングロ・アメリカン世界と協調する他ない」のであって、「日本が直面する政治、軍事、経済の危機の全てにおいて日米同盟信頼関係が不可欠なのである」という事に尽きる。

 何のことはない。米国のやらかすことの「善悪是非」はお構いなしに、イラク戦争のようにそれに無条件に追随しろ――ということのようだ。

 この人物は事あるごとに「日米同盟」を持ち出す癖があるが、そもそもこの両国が「同盟」と呼ぶに値する関係かどうかぐらいの問題意識は持った方がいい。その点で関岡英之氏の労作『拒否できない日本』(文春新書)は参考になるだろうが、そこで描かれているように日本が国家の存立に関わる行政の中心的な課題をほぼ米国の言うがままに支配されている現状は、「同盟」どころかそれ以前に植民地と宗主国の関係に近い。そのため、持論である「同盟強化」とはいったい何のことかと空恐ろしくなる。

 そもそもイラク戦争のみならず、世界人権宣言や国連憲章、国際法、そして国連を始めとした国際諸機関が存在するのは、それらを「善悪是非」の基準とする法の支配を地球上に確立するためにある。そこにおいてのみ自国の「国民の安全と繁栄」ははじめて追求されるべきであって、逆が許されるならナチスの論理そのものではないか。

 このような人物が、巨大新聞を寄り所にして言説を振りまいている時代のいびつさ、恐ろしさを感じざるを得ないが、同じ外務省出身で、肩書きでは「外交評論家」となっている岡本行夫氏は、内閣官房参与や沖縄担当首相補佐官、首相の私的懇談会「対外関与タスクフォース」座長を歴任している。それだけ要注意だが、『朝日』の藤原帰一・東京大学教授、山内昌之・東京大学教授との座談会を読むと、やはり親米派の欠陥がよく理解できる。

 「米国は戦争が終わった後に大量破壊兵器を見つけることに強い自信を持っている」だの、「私はイラクが大量破壊兵器を持っていることはほぼ間違いないと思います」といった認識のお粗末さはここでも見受けられるが、3年後の今になっていったいどう弁解するつもりなのだろう。

 そして「(武力行使を支持した)小泉首相の毅然とした姿勢に感銘を受けました。大量破壊兵器の排除のために日本のとるべき道を『米国支持』という形で反対論を恐れずに示し、軸足を動かさなかったからです」という開口一番の発言は、さすが「首相補佐官」経験者らしいが、「外交評論家」としてはあまりに無惨過ぎはしないか。米国は「大量破壊兵器の排除」など最初から考えておらず、査察が継続されればウソがばれるため、その途中で無理矢理「実効性がない」などと難癖をつけて武力行使に踏み切った――という程度の「外交」的読みは、歴史の後知恵ではなく当時でも可能だったはずだ。

 岡崎元大使や岡本氏のように、「善悪是非」より権力を握った者や強い者に媚び、なびくのを優先する人間はいつの世にもいるが、ならば最初から賢者風に「善悪是非」を口にしないことだ。

 「公的」な色彩をまとった論者を紹介したついでに、もう一人取り上げよう。山崎正和・東亜大学学長は福田元官房長官の私的諮問機関「追悼・平和のための記念碑等の在り方を考える懇談会」の座長代理や、実質的には改憲の先払いに等しい「海外派兵拡大」を提言した首相の私的諮問機関「安全保障と防衛力に関する懇談会」のメンバーをつとめた。
 しかし、『読売』03年3月7日付の「米の軍事行動に正当性」なる「インタビュー」を読むと、かくも重要なテーマを扱う「メンバー」にしてはあまりに程度が低すぎるという印象が否めない。

 たとえば1441について「大事なポイント」が「大量破壊兵器の廃絶を自分で立証せよと、イラクに『挙証責任』を課したことだ」とし、「これが不履行なのは明白だ」という。

 確かに1441はイラクに対し「正確かつ全面的で、完全な申告を提出する」ことを明記しているが、これが「大事なポイント」だとは、岡崎元大使同様おそらく全文を読んでいないのだろう。繰り返すように1441の「基盤」は外部による査察にあり、だからこそ1441はUNMOVICとIAEAの活動について全文の3分の2以上を費やし極めて仔細に定めていたはずだ。

 こんな初歩的な知識すらないから「本来はイラク側が国連の査察官を(大量破壊兵器の)廃棄場に連れて行くべきで、査察官が車で走り回る話ではない」などと奇怪極まることを口走ることになる。評価は別にして国連の査察では「車で走り回る」のみならず、偵察機を飛ばしたり関係者の聞き取り調査までやる。それを明記したのが1441なのに、なぜ「車で走り回る話ではない」などと言えるのだろう。しかも、UNMOVICとIAEAが、いつ「不履行なのは明白だ」と安保理で断定したのか。

 さらに山崎学長は1441について、「(違反した際)『重大な結果を招く』という項目を含み、武装解除を目的とする米軍の軍事行動には正当性がある」と言う。実際、開戦になってもこんな滅茶苦茶な理屈は岡本氏ですら口にしてはいないが、繰り返すように1441はイラクの「軍備解除義務の順守」に「不履行」があった場合、UNMOVICとIAEAが安保理に「報告」するよう求めているだけで、「不履行」即「軍事行動」では決してないのだ。

 しかもこの両機関の「報告」がないのに、査察中であるにも関わらず勝手に戦争を起こしたのが米英であって、これがどうして「正当性がある」のか。

 考えてみれば、「諮問機関」や「懇談会」の類によく登場する人々は「学識」だの「見識」だのとは無関係に、要はいかに時の権力にとって好都合な話をするかだけが問われるという話は随分前からあった。山崎学長などはその好例なのだろうが、米国の「正当性」を論ずるのであれば、これではあまりに役不足ではないのか。

 イラク開戦後に明白になったことは、この日本で「主流」あるいは「体制側」とされる立場にあり、影響力があるメディアに登場機会がよく与えられている論者、あるいは文化人と呼ばれる人々の、米国追従の果てに陥った無惨なまでの破綻ぶりに他ならない。

 従来から「保守派」に属する論者で、あくまで事実に迫ろうとした例は2、3を除いて希であり、大多数は正確な認識を欠きながら戦争という大量殺戮の旗振り役を演じて恥じなかった。のみならず、それが何事もなかったかのように今日まで平静を装っている光景は、改めて親米・右派と呼ばれる人々の本質を物語っているのではないだろうか。

(成澤宗男)

【参考】
イラク開戦3年目に親米・右派文化人に問う( JANJAN 2006/04/14 )
http://www.asyura2.com/0601/senkyo20/msg/1207.html
投稿者 gataro 日時 2006 年 4 月 14 日 19:22:31: KbIx4LOvH6Ccw

http://www.janjan.jp/column/0604/0604122293/1.php?PHPSESSID=511d585355b6a453a5f90458481b3f45

 次へ  前へ

  拍手はせず、拍手一覧を見る

▲このページのTOPへ HOME > 戦争80掲示板


  拍手はせず、拍手一覧を見る


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。