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「歴史の終わりの著者フランシス・フクヤマ、最新刊でネオコンとの決別を宣言
http://www.asyura2.com/0601/war80/msg/292.html
投稿者 大西健二 日時 2006 年 4 月 23 日 13:48:45: Zg4goyIkX.Zhg
 


ロシア政治経済ジャーナル388号より
http://www.mag2.com/m/0000012950.htm

★フクヤマさんの悩み


全世界のRPE読者の皆さまこんにちは!

RPE北野です。

今回はかしこい人も悩むという話です。


▼フクヤマさんの苦悩


冷戦終結後、世界にもっとも影響を与えた本といえば、フクヤマさんの「歴
史の終わり」( http://tinyurl.com/cnn5u )(←名著です)でしょう。


フクヤマさんは、「リベラルな民主主義こそが歴史の終わりである」と断言し
ました。

「私は、リベラルな民主主義が「人類のイデオロギー上の進歩の終点」およ
び「人類の統治の最終の形」になるかもしれないし、リベラルな民主主義そ
れ自体がすでに「歴史の終わり」なのだ、と主張したのである。」(歴史の
終わり フランシス・フクヤマ )

そんな偉大な思想家フクヤマさん。

最近悩んでいるという情報が入ってきています。

何を悩んでいるのか?

ネオコンが、自分の思想を利用していると。(涙)

彼は最近「 America at the Crossroads」( http://tinyurl.com/rqd5l )とい
う本を出版しました。


フクヤマさんによると、昔からのネオコンには、4つの特徴がある。


1、人権・自由・民主主義は普遍であるという信念

2、ソーシャル・エンジニアリング(社会工学)に対する不信

(社会工学っていうのは、社会システム=工学システムと同じと見、社会
問題の解決方法を、学術的・計量的手法により提示する総合科学。簡単
にいえば)

3、国際機関に対する不信

国際連盟は第2次大戦をとめられず、国際連合発足後も山ほど戦争があ
った。

4、アメリカの力を、世界のモラルトランスフォーメーションに使う

今やってますね。

この4つの特徴をネオコンは昔からもっていたと。

さて、レーガン・ブッシュパパと、アメリカ大統領は代わっていきます。

レーガンは冷戦勝利の種をまき、ブッシュパパの時代に実がなりました。(ベル
リンの壁崩壊・ドイツ統一・ソ連崩壊)

で、若いネオコンたちは、いったい何に影響を受けたか?

フクヤマさんによると、ルーマニアの独裁者チャウシェスクが処刑されたこと。

これがネオコンの脳みそに、「自由の普遍性の証明」にうつったのだそうです。

ネオコンの頭の中。


1、全世界の民は自由を求めている

2、自由を求めている民衆は独裁者を倒し、自由を獲得する

ところが、賢いフクヤマさんは「世の中そんなに単純じゃないですよ」といいま
す。

いろいろなパターンがあるのだと。

1、平和なデモが政権交代につながるパターン

例、86年フィリピン・88年チリ・89年ポーランド・ハンガリー・00年セルビア・03
グルジア・04年ウクライナ


2、民衆が自由ではなく不自由を選ぶパターン

例、79年イラン革命


3、デモを政権が武力で鎮圧するパターン

例、89年中国・05年ウズベキスタン・06年ベラルーシ

フクヤマさんはこういう現実を見て、ある国が「自由を受け入れる準備がある
かどうかを分析しないといけない」としています。

なるほど〜。

どうしてカラー革命がグルジア・ウクライナではうまくいき、ウズベキスタン・ベ
ラルーシではうまくいかなかったのか?

「自由への準備」ができているかいないかの違いだと。

フクヤマさんは嘆きます。

「若いネオコンっていうのは、なんの分析もしないで、革命したり実際に攻撃
したりしやがるんだよ」(悩)(←もちろんフクヤマさんは、こんな下品な言葉を
使っていませんが)


▼ブッシュとネオコン


フクヤマさんによると、ブッシュは決してネオコンではなく、ただの民族主義者
だそうです。


そして、普通の民族主義者と同じように、二つの原則を信じている。

1、アメリカはいつも正しい(^▽^)
2、アメリカは特殊である(^▽^)

ところが、こんな論理で国際社会は納得しませんね〜。

ドイツとゲルマン民族に関するヒトラーの主張と変わりません。

アメリカは、二つの役割をしなければならない。

つまり、

1、国際社会のリーダー(^▽^)
2、自由世界のリーダー(^▽^)

でも役割を果たすためのイデオロギーがない。

そんなとき、助け舟を出してくれたのがネオコン新世代でした。

ネオコンのスローガンは、

情け深い(優しい・好意的)覇権(Benevolent hegemony)。

このスローガンは、二つの役割を同時に果たせるものである。

1、国際社会のリーダーとして
例、大量破壊兵器の拡散を止める、イスラエルとアラブの戦争を回避する、国
際テロをなくす等々

2、自由世界のリーダーとして
例、世界の国々に人権を守らせる、民主主義国を増やす等々


他の国は納得してくれるんでしょうか?

フクヤマさんによると、ネオコンには「他の国がアメリカの役割を認めてくれるだ
ろうか?」という疑問はなかったのだそうです。

しかし、彼自身は全世界で起こった反イラク戦争キャンペーンを見て、ネオコン
の唯我独尊性に大きな疑問を持ったのです。


(今のアメリカを見て、ああ情け深い優しい覇権国家だなあ(感動)と思う人も少
ないのではないでしょうか?)


フクヤマさん自身リベラルな民主主義が歴史の終わりといっていますが、ネオ
コンと彼の違いはなんなのでしょうか?

彼の意見では、マルクスがいうように、社会の進化というのは存在している。

しかし、歴史の終わりはマルクスのいう共産主義ではなくリベラルな民主主義
である。

で、若いネオコンたちは何なのか?

これは、「力と意志により歴史を前進させることができる」と考えているレーニン
主義者とかわりゃあしない。

というわけで、フクヤマさんは今のネオコンを支持することでできないと結論つ
けています。


▼どうすれば?


今のネオコンを支持できないフクヤマさん。

じゃあどうすればいいっていうのでしょうか?


1、覇権は忘れる

世界はその正統性を認めてくれないだろうと。


2、自由の普遍性を忘れる

中国や中東の例を見てもわかるように、「自由が普遍だ」というのは、歴史的
展望である。

ある国の国民が自由への準備ができるのは、10年後かもしれないし20年後
かもしれない。

ここで何がいいたいかっていうと、フクヤマさんは、自由への準備ができていな
い国を攻めるとか革命を起こすのは無駄だと。(イラクも含め)


3、武力で国際テロと戦うのはやめる

この戦いの根本は、知性と心の戦い。

武力ではなくイデオロギーによって戦わなければならない。

なんとなくわかります。


フクヤマさんの主張を簡単にまとめると、

・リベラルな民主主義は歴史の終わりである
・でもすべての国がそこに到達するには時間がかかる
・それをネオコンのように、無理やりやってもうまくいかない

ということなのだと思います。


▼支配者は理論を利用する


フクヤマさんの苦悩はわかります。

「リベラルな民主主義が歴史の終わりだ!」と彼がいったら、ブッシュはそれを
他国攻撃の理由にしてしまった。

彼の「歴史の終わり」という本が、他国侵略の正統性を保証している。

まあ、まっとうな神経を持つ人なら悩みますよね。

しかし、歴史を見ると支配者というのは、常にイデオロギーを利用していたこと
がわかります。

たとえば欧州はキリスト教を利用して植民地を獲得していきました。

「キリストの福音を世界に伝播する」といえば聞こえはいいですが、彼らは世
界のいたるところで大虐殺を繰り返してきました。

(例、スペイン人はアズデク・インカ帝国を滅ぼし、アメリカにわたったイギリス
人はインディアンを虐殺し、黒人を奴隷にした等々)

マルクスは、「資本主義がもっとも発展したイギリスあたりで、共産革命が起こ
るだろう」と予測しました。

しかしレーニンは、「帝国主義のくびきが少ない」のでロシアで革命が起こった
と、まったくマルクスと正反対の論理を展開しています。

そして、マルクス主義者だったレーニンはレーニン主義を、毛沢東は毛沢東
主義を、金日成は主体思想を、それぞれ勝手に立ち上げています。

要は、支配者はマルクス主義を信じていたのではなく、自分の都合のいいよう
にアレンジして利用した。

つまり、支配者というのは自分の悪事を正当化してくれる、耳障りのいい思想
をいつも探してるってことですね。

アメリカ思想界の重鎮がブッシュをみかぎった。(当然、彼一人の不満とみるべ
きではないでしょう)

しかし、真の問題は、アメリカがすでに戦争を開始してしまったってことです。

もし、今アメリカが戦いをやめれば、ロシア・中国・中東イスラムはユーロ圏を拡
大していくでしょう。

そして、世界の原油売買がユーロで行われるようになれば、アメリカの国家破
産は確実。(アメリカはユーロをすれない)

アメリカは止まれば没落、止まらなければ行けるところまで行って没落。

フクヤマさんの処方箋では、今のアメリカを救うことはできないのです。(涙)


▼アメリカは救われるか?


アメリカを救う方法はあるのでしょうか?

IMFのラト専務理事は3月末、カンボジアでこんな話をしています。

「アメリカ人の異常な支出が、貿易・財政赤字を生み出している。

ロシア・サウジアラビア・日本・中国は貿易黒字だが、アメリカだけは膨大な
赤字国である。

この不均衡は、遅かれ早かれ調整されるが、それが急激に起これば世界経
済は危機に直面する。

不均衡の責任はアメリカにある。

アメリカは、徐々に支出を減らし節約をするべきだ。

不均衡を調整するために、アメリカ経済の成長を鈍化させるべき。」


要するにアメリカ(と世界経済)を救うためには、貿易収支を徐々に均衡させ
ろってことですね。

アメリカが輸出を増加させることは無理ですから、輸入を減らすことになりま
す。

世界一の消費国(お客さん)がものを買わなくなる(輸入を減らす)と世界貿
易も縮小し、日本・中国・ロシアの成長も鈍化しますね。

しかし、それを急激にやると世界恐慌になるので、ゆっくりとやると。

IMF専務理事の提案をそのままやると、アメリカの経済はゆるやかに縮小し、
戦争なしで覇権国家からゆっくりと没落していきます。

この案を実現させるためには、世界的コンセンサスが必要です。

だって、日本も中国もEUも輸出が徐々に減っていくわけですから。

当然「アメリカは破滅寸前なので、段階的に輸入を減らしていきます」と宣言
しなければなりません。

(不景気を起こさず輸入・消費の自然減はありえないので、政府が介入して
人工的にやる必要がある。当然他国の協力が必要。で、他国は協力をする
にあたって、「なぜ輸入を減らす必要があるのですか?」と納得できる説明
を求めるでしょう。)

そして、「今まで威張ってきたけど、実は破産寸前なのです」と認めなければ
ならない。

さらに、アメリカは「その過程で、ドルを投売りしないでください。財政と貿易
が均衡するまで、国債買ってください.」とこめつきバッタの外交をしなければ
なりません。

そういう自己否定が彼らにできるか。。。

それに、「覇権国家から転げ落ちる」とわかっている処方箋を彼らが受け入
れることができるか。。。

これができたら、まさに世界史の大政奉還といえるでしょう。


(おわり)
ロシア政治経済ジャーナル388号
http://www.mag2.com/m/0000012950.htm

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