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http://www.janjan.jp/column/0604/0604200697/1.php?PHPSESSID=f6ef9ad2d5340b47dcadaa15b5881931 から転載。
2006/04/21
私の書斎にある、若き日の、革命家カストロの写真(複製)
アメリカはキューバのカストロ政権を認めない上、経済制裁を続けている。
キューバがソ連圏の一員だった頃、ミサイル基地になったお陰で冷や汗をかかされた恨みが大きいこともあろうが、表向き、かれが国民の意思を抑圧しているからという理由である。
つまり、かれは呪うべき共産全体主義者なのだ。その手をのがれてフロリダへ逃げて行った自由主義者たちがいっぱいいる。かれらは口をそろえてかれを悪魔のように言う。
なるほど自由というものは尊い価値であろう。考えることも、表現することも、行動することも、人はなにものによっても束縛されてはならないものである。しかし、人が共存し、しかもその構成員が同一でない以上、民主主義の柱、平等は厳然として存在する。
生活の基本は衣食住であろう。それは人間が生きていくための最低の条件で、その上に思想とか芸術とかの精神活動が生まれる。だが、世界にはその最低の条件さえ満足に満たされていない人が多い。一方では、何百人分、何千人分の最低条件を独占し、それを自分の生活の基準としている人たちがいる。たしかに客観的な基準というものは存在しないのだから、それを非難することはできないのだが、正義の観点からすれば明らかに間違っている。
これがカストロの考えである。そのかれ自身の理想の実現に一国の人たちを従わせているのだから、かれは独裁者に違いない。だが、人々の多くが(少なくともキューバにとどまっている人のほとんどが)かれの政策を支持しているなら、これは独裁とはいえない。しかも、彼自身もその側近も平等という理想にまったく忠実で、一般の人たちとまったく同じように質素に生活している。
【カストロ兄弟が別々に居住している住居は、警備こそ厳重であるが、通常の住宅である。旧ソ連・東欧諸国の指導者の贅沢とは比較すべくもない。また、要人が使用している車を見ると、カストロ首相こそ数十年前に寄贈されたベンツを使用しているが、ラウル・カストロの車はソ連製ボルガである。他の党・政府高官は一般国民と同様、クーラーもないソ連車ラーダを使用している。ラヘ官房長官は、日曜日など、子息といっしょに自転車で工場現場を視察に訪れる。ロバイナ外相は外務省まで通常自転車通勤である。ましてや某国のように、黒塗りのベンツが走ってきたら立ち止まって最敬礼をするように教育をされたりはしない。(中略)
食料品についても同じことがいえる。大使館公邸に来る政治局員や閣僚に対して著者は「失礼ですが、閣下のお宅では食料品をどこで購入されますか」と聞くことにしていた。「一般の人たちと同じ場所で、配給手帳で買います。近所の人たちが証人です」との答えが返ってくる。】(宮本信生『カストロ』1996、中公新書。氏は元駐キューバ大使)
ふつう独裁者とは自分の私的な意志のために国民を犠牲にする者のことだが、カストロは理想主義者ではあってもそういう意味の独裁者ではない。かれは全国民の教育費無料、医療費無料という理想の1部を実現したが、米国の不当な経済制裁によって、豊かな理想的平等社会の実現ができないのを怒っている。
私の書斎の壁に、1枚の写真の複製がかかっている。数十人の武装した男女がジャングルを進むものだ。1954年モンカダ兵営を襲撃したときのものだろう。キューバ革命の嚆矢である。先頭を大きな背嚢と1丁のライフルを背負い、拳銃を腰からぶら下げたカストロが行く。彼はまだ若い。27だった。髪も髯も黒々としている。それから50年以上たつが、かれの意志は少しも変わっていない。
(貝原幸夫)
上記の記事についた意見
[17983] カストロのcuba
名前:小林光長
日時:2006/04/21 14:56
アメリカには民主主義の先進国として(最近はちょっと首をかしげることも多いが)常に賛成と反対の意見が出てきます。
結局 bush も 第一期目は圧倒的な支持率を誇ったが、やはりアメリカの正常な民主主義のゆり戻しが効いて、今や歴史的な低支持率に陥ってきている。アメリカのいいところは常に平衡感覚が効いて、一時は極論が態勢を閉めても、後で正常な感覚に目覚めるという民主主義の観点からは望ましい振り子の社会的作用が発生するところにあります。
ところが、こと cuba ということになると、長年にわたる非民主的な蛮行が、cubaに対し 外交的にも、財政的にも、人道的にも行われ来たにも関わらず、(これについては民主党も共和党も大差ない)さっぱり 反対の声が聞こえてこないことです。
cubaは アメリカに対し、革命当初は、例のミサイル危機がありましたが、それ以降、何の攻撃や嫌がらせをしてきたわけでもありません。なぜこれほど 苛め抜かなければならないのか、アメリカに住んでいて、本当にふしぎでなりません。アメリカ人に聞いても誰も興味を示しません。リベラルな人からも、特に大きな反対の声があがりません。私のアメリカに対する、最大の不満の一つです。
話は違いますが、私の生涯で、家族以外で、その死を知って大きな襲撃を受けた人が二人います。一人は ジョン レノン、もう一人は、チェ ゲバラです。それ故、カストロは、私の残された唯一の心の英雄です。革命以来その国家建設の苦闘を見てきただけに、アメリカの締め上げにも降参せず、過去50年、ラテンアメリカ的気質を守りながら、やむを得ない的独裁主義を貫いてきたこの指導者に、本当に頭が下がる思いがいつもしています。
歴史的に見ても、巨象の隣に位置する“ねずみ”がこれほど敢然と気高く、たたかれてもたたかれても、ひるむことなく国民とともに、平然と歩み続ける指導者を見たことがありません。
カストロとcuba 国民の、貧しいながらも安寧な生活と国家建設を祈るのみです。