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【天木直人 ニッポン外交の迷走】 2006年4月17日 掲載
米・イラン攻撃はイスラエル次第
ここにきて、米国のイラン空爆の可能性を指摘する報道が相次いでいる。口火を切ったのが4月8日付ニューヨーカー誌(電子版)の「ブッシュ政権がイラン空爆作戦策定に力を入れている」という記事だ。続いて米国の有力紙ワシントン・ポストも9日付の1面で「イランへの軍事攻撃の選択肢が検討されている」と報じた。
いくら米国といってもイラン攻撃はできないと普通の人なら考えるだろう。ブッシュ政権は混迷するイラク情勢で手いっぱいである。それにもし米国がイラン攻撃に踏み切ったならば反米テロは激増するに違いない。すでにイランはパレスチナ、レバノン、シリアの反米組織を支援し、いざという時に備えているという情報もある。加えてイランへの空爆が始まれば原油価格は一気に100ドルを突破し、世界経済は大打撃を受ける。ブッシュ大統領も10日ワシントンで行った講演で、これらの報道を「でたらめな憶測に過ぎない」と一蹴した。
ところがである。このブッシュ大統領の言葉を額面どおりに受け取れないのが国際政治である。米国の中東外交を決めているのは米国の大統領ではない。それはイスラエルである。そしてイスラエルの唯一、最大の関心こそイスラエルの安全保障なのである。我々はこの現実を知らなければならない。
日本ではほとんど報じられていないが、今欧米の関係者の間で話題になっている衝撃的な論文がある。ハーバード大学ケネディスクールのステファン・ワルド教授と、シカゴ大学のジョン・マーシマー教授の共著による「イスラエルロビーと米国外交政策」(原題:ザ・イスラエル・ロビー)。その内容は、一言で要約すると、ユダヤ・ロビーに完全に支配されてしまった米国の外交は、もはやアメリカの国益を犠牲にしてまでもイスラエルを支援する外交になってしまったということだ。そんな米国の中東政策の行き着く先が、イスラエルを脅かす勢力への容赦ない軍事攻撃である。
国際批判を顧みずイラク攻撃を強行したのも、イスラエルの安全を脅かすサダム・フセインを排除すべしというイスラエルの意向があったからだ。今やイスラエルにとってイランの核保有は、何としてでも防がねばならない至上命題である。
こう考えると米国のイラン攻撃も十分ありうる。その結果世界がどうなろうともイスラエルの安全には代えられないのだ。その米国と軍事同盟強化を急ぐ小泉首相は日本外交史に残る過ちを犯そうとしている。
▼天木直人(あまき・なおと) 元レバノン大使。1947年生まれ、京大法学部中退で外務省入省。イラク戦争に反対する公電を送り、小泉首相の対米追従外交を批判して「勇退」を迫られる。著書に「さらば外務省!」「ウラ読みニッポン」(講談社)など。
http://gendai.net/?m=view&g=syakai&c=020&no=25875
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