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□「イラク人学者たちを暗殺から救え」 人権擁護組織が懸命の訴え|アルジャジーラ
http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__1851824/detail
「イラク人学者たちを暗殺から救え」 人権擁護組織が懸命の訴え
【アルジャジーラ特約10日】2003年の米軍によるイラク侵攻以来、イラクの学術分野を代表する学者たちが相次いで殺害されている。人権擁護組織によると、殺害された学者の数は約1000人にも達し、そのうち105人について、その経歴や殺された状況などを記録したリストが作成された。人権擁護組織は、これら105人の学者たちが(銃撃や爆撃などに)巻き込まれて命を落としたのではなく、明らかに「暗殺」されたと報告している。
リストで最初に取り上げられているのはバグダッド大学のムハマド・ラウィ学長のケース。ラウィ氏は03年7月27日、自ら開いていた診療所にやって来た2人組に射殺された。2人組の1人が激しい腹痛を訴え、体を折るようにして診療所に入って来たが、ラウィ氏はその腹部に隠されていた銃で撃たれ殺害された。
この事件以降もイラクでは暗殺が続き、05年にはマジド・アリ博士が背中に弾丸4発を受け、殺害された。同博士は物理学の権威で、イラクで最も優れた核エネルギー学者の1人だった。
こうしたイラクでの事情を懸念して、国際な非政府組織(NGO)「アラブ人権擁護委員会(ACHR)」(本部・パリ)はこのほど、国連の経済社会理事会と協力、「イラク人学者を救え」とのアピールを出し、同学者たちが直面する窮状に国際社会が救いの手を伸べるよう呼び掛けた。
アルジャジーラネットはこれを機に、ACHRのバイオレット・ダゲール会長(心理学者)と「イラク大学機教授保護委員会」のカイス・アザウィ理事長の2人にインタビューした。(翻訳・ベリタ通信=志岐隆司)
一問一答は次の通り。
―ACHRはイラク人学者暗殺阻止に向け行動を開始したのか。
ダゲール会長(以下D)「自由と学者たちを守るため世界中に、しっかりと張りめぐらされたネットワークの中で活動している。このネットワークは広範囲に及び、北米、欧州さらに世界各地域の組織が参加している」
「暗殺された学者たちを専門分野別に分けることが必要。そうすることで、所属していた労働組合や団体が統一行動をとりやすくなるからだ」
アザウィ理事長(以下A)「既にイラク側および国際組織と緊急に接触を開始した。イラク人学者が参加する労組と密接に協力し合っている。また、カタール政府の国連教育科学文化機関(UNESCO)大使とも既に会い、イラク人学者たちをどのように守れるかについて意見交換した」
「世界のさまざまな地域の大学など学術組織がわれわれの運動に支援を表明してくれ、その中から出てきたのが、イラク人学者たちを危険から守るため、海外の大学が彼らを客員講師として受け入れるという案だ。それによると、支援を申し出てくれた大はがイラク人学者3人を同講師として1年間にわたり受け入れることになる」
―一般的には、暗殺の対象となった学者たちは、大量破壊兵器開発計画に携わったか、携わったと思われる科学専門家たちと言われている。それでは、アラビア文学や同歴史を専門とする学者が暗殺されるのは、どのような理由からだと思うか。
(D)「専門分野とは関係なく、暗殺の標的にされるのは『知識人』と思われる。彼らはイラクの文化的復興に不可欠に人材だ。イラクは科学分野だけでなく、人文分野においても優秀な人材を輩出してきた。たとえば、ジャワド・アリ氏はアラブの前イスラム史の、また、アブドゥル・アジズ・ドゥーリ氏はアラブ経済史のそれぞれ権威だ。そのほかにも多くの専門家がおり、アラブ世界の詩、文学、法学の分野でもイラク人は優れた役割を果たしている」
「さらに、イラクで目立ち始めているもうひとつ危険な現象は、人権活動家や法律家たちも(暗殺の)標的にされていることだ」
(A)「どの国においても、優れた才能を持つ学者たちは、その国の発展を支える中心的役割を果たしている」
―(学者たちを狙った)暗殺には政治的意図があると思うか。
(D)「特定の学者を選んで暗殺することで、イラクが受ける精神的打撃は大きく、その死が国内の亀裂を深めることになる。これこそイラクの敵が狙っていることなのだ。イデオロギーを掲げるどのグループ、どの勢力も暗殺という手段を使っている。彼らは、国には損失となる暗殺が自派に役立つと考えているのだ」
「レバノン内戦はその典型だ。外国勢力が介入した同国民への暗殺がまず相次ぎ、その後、内戦状態となった」
(A)「われわれが得ている情報によると、イラクで起きている暗殺事件は宗派間や政治勢力が関与している」
―暗殺が外国勢力の指示によるものとの証拠はあるのか。
(D)「国を愛する者たちは自国の破壊をもたらす行為には手を染められない。論理的に考えれば、証拠は見つかる。外国勢力は自らの目標を明らかにはしない。目標とする国の内部に汚れた仕事を行う勢力が存在すれば、外国勢力が自ら手を下す必要はないからだ」
―宗派の狙いは何なのか。
(D)「イラク国内で宗派間の抗争をあおる意図があることは明らかだ。こうした宗派間の抗争がイラクを破滅させる目的の大きな要因になっているのは確実だ。宗派間の緊張と抗争が深まれば、国民の間に恐怖感が生まれる。恐怖が支配するようになれば、違った宗派の信者たちを恐れるようになり、平常心を失ってしまう。自らと違うということだけが考えを支配し、ついには宗派の違う者たちを敵視するようになる。社会の分裂が起き、自らの属する宗派、民族そして政治勢力に閉じこもってしまうのだ」
―イラク人学者たちに接触し、同国政府が科学者や学者たちへの保護策を講じているかどうかを確認したか。
(D)「『イラク大学機教授保護委員会』と協力を進めている。同委員会は国際社会に向けて、イラク人科学者と学者を守るよう緊急アピールを出したばかりだ。ACHRが目指しているのはアラブ諸国と世界の他の諸国との橋渡しだ」
―イラク人科学者を標的にすることで誰が得をすると思うか。
(D)「イラクを破滅させ、さらにアラブ世界での影響力回復を阻止するため、何年にもわたって画策してきたのと同じ勢力だ。イラクが持つ膨大な原油資源が災いとなっているのかもしれない。イラクが同資源を自前で開発するのを嫌う勢力があり、イラクの持つこうした当然の権利を否定、奪ってきた」
「歴代の米政権はユダヤ人のロビー活動に影響され続けている。彼らの手口は、対象国の国民の志気と道徳心を失わせるため、まずは精神的な攻撃を徹底的に行い、それから最後の一撃を加えるのだ」
(A)「われわれの情報筋および面会したイラク人学者の全員が、イラクの発展を嫌う勢力が自分たちを標的にしていると確信していた」
―イラク国民の間に、米主導の駐イラク軍、イランそしてイスラエルを名指しした文書が出回っている。これをどう思うか。
(D)「さまざまな例からこれら3勢力が相当関係していることが分かる。特にイスラエルの関与が目立つ。政治、経済的な意図を持つこれら3勢力は、イラクが分裂状態に陥るのを望んでいるからだ」
(A)「多分、(イランとイスラエルの)両国が今回の暗殺事件に関与しているのだろうが、残念ながら、それを証明する確かで客観的な証拠はない。そうした中、多くのイラク人学者が拉致され、イラク出国を確約しない限り解放されていない。学者たちをこの国から排除することで得をするのはどこなのかは明白だ」
―今回の暗殺事件多発はイラクの教育システムにどんな影響を与えているのか。
(D)「暗殺の多発により、多くの科学者と学者たちがイラクを離れているため、(教育分野への)影響は極めて大きい。次の世代に学問を継承していく上で、これは重大な打撃だ。これからのイラクは文化、現代科学を育て、宗派主義や暴力・敵意を排除するため、有能な人材を必要としているからだ」
(A)「イラク政府の高等教育相によると、約160人の大学教授が殺害され、約2000人の同教授がこの国を離れ、この結果、大学院の計152学部が閉鎖に追い込まれているという」
―こうした事態にイラク政府はどう対応しようとしているのか。事件捜査が進み、何らかの結果が出ているのか。
(D)「私もこう問いたい。『イラクの現為政者たちは(暗殺事件の)捜査に本気で取り組む姿勢を持っているのだろうか』。この国で暴力と過激主義が続く限り、外国の敵勢力はイラクの生き血を吸い、防衛力を奪うダニのように活動し続けるだろう」
「いまこそ、全米科学アカデミー(NAS)が学者たちの権利擁護に向けて仲介に乗り出すよう強く要請したい。ACHRスタッフのうち2人がNASの人権擁護賞を受賞している。NGOの努力でグアンタナモ米軍基地での出来事が国際的関心事となったように、イラクで今起きている暗殺事件が同様の関心を持たれるよう期待したい」
(A)「暗殺事件のすべてが『証拠不十分』でうやむやにされてきた」
2006年04月14日17時40分