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□今も行方分からぬ歴史的工芸品 イラク博物館の略奪から3年 [アルジャジーラ]
http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__2036433/detail
今も行方分からぬ歴史的工芸品 イラク博物館の略奪から3年
【アルジャジーラ特約3日】2003年4月のイラク・バグダッドの陥落、フセイン元政権の崩壊と同時に起こったのがバグダッドをはじめ全国にある博物館への略奪と歴史的に極めて貴重な工芸品などの略奪だった。
奪われた工芸品の数は数千点にも上るとされるが、混乱が続く中、今になっても正確な被害状況は全く分かっていない。バグダッドなど全国15州にある博物館は閉鎖状態が今も続き、学者らによる発掘作業や研究調査も中断されたまま、再開の目途さえ立っていない。
イラクに侵攻した米軍はこのような博物館略奪が起きる可能性を全く予期しておらず、事態が起こってから略奪品の追跡捜査をすると約束した。
また、国連安全保障理事会も03年5月、イラクの歴史的、文化的、宗教的遺産、さらに遺跡、博物館などの保護を必要とする決議1483を採択した。
それにもかかわらず、イラクの専門家たちの間からは略奪された工芸品などの密輸が今も続いているいると懸念する声が聞かれる。
この懸念を示すように、04年10月には、ヨルダン国境警備員がイラクから持ち出されようとした歴史的工芸品6点を、イラクからやって来た車のトランク内で発見、押収した。
アルジャジーラネットはこのほど、ロンドン在住のイラク人考古学者イラク再建開発評議会の顧問でもあるラミア・ガイラニ・ウェール博士に、歴史的工芸品などをめぐる現状を聞いた。主要な一問一答は次の通り。(翻訳・ベリタ通信=志岐隆司)
―アルジャジーラネット:イラクの歴史的工芸品の現状をどう思うか。
ガイラニ・ウェール博士「ひと口では表現できないほど、惨憺(さんたん)たる状態だ。治安状況を理由に博物館は閉鎖され、所蔵されている品々を確かめるのも極めて難しい状況だ」
「今必要なのは骨董・工芸品の目録を作成し、略奪された物を特定することだ。目録がなけれが、さらなる略奪が起き、それを03年4月に行われたとごまかすことが可能になるからだ。イラク南部にある遺跡では今も略奪が続いている。イラクの歴史的遺産が受けた被害の実態は想像すらもできない」
―イラクのそうした歴史的財産を取り戻すにはどうすればいいのか。
「その財産がイラク博物館から略奪された品々を言うのであれば、何年もかかるだろうし、永久に戻らないかもしれない。クウェート侵略に失敗した1991年以降、イラク南部の複数の博物館からは5000点以上が略奪された。戻ったのはほんのわずかだ」
―2003年以降ではどれだけの工芸・美術品が略奪されたのか。
「目録が作成しないと、どれだけの品々が略奪されたのかは分からない。推測で言えば、その点数は約1万5000点だろう」
―略奪には国際的な密輸団も関係しているのか。
「答えるのは難しい。確かなのは、全国の考古学的地区を徘徊し、略奪を行っている者たちが外部の仲介者たちと連絡を取り合っていることだ」
―レバノンの骨董品業者が関係しているようだが、取り引きされる骨董品はどこに持ち出されるのか。
「欧州と米国で姿を見せた物があるが、多くは湾岸諸国へ運ばれる途中で発見されている」
―そうした略奪品の所在を突き止め、取り戻す作業をしている国際組織があるのか。
「ある。国際刑事警察機構(ICPO)がそうだ。それにイタリアの骨董品捜査警察、欧米の関税局もそうだ」
―イラク政府は略奪品の回収、保存、保護にどう取り組んでいるのか。
「遺産管理局、中でも各州の同管理局が取引業者と略奪実行犯たちの追跡を行っている。保存問題で言えば、イラク博物館に所属する研究所が略奪時に破壊された品々の修復作業を行っている。イタリアの専門家たちもアッシリア時代のレリーフ(紀元前880−612年)の保存、修復に当たっている」
―大英博物館は05年1月に出した報告書の中で、バグダッド南方のバビロンに駐留する米軍部隊が紀元前600年に造られた舗装道路などの遺跡に被害を与えていると指摘した。米軍当局は今年4月、遺跡・歴史的都市の破壊に謝罪する声明を出した。あなたは同謝罪を不十分で侮辱していると断罪した。侮辱されたとはどういうことか。
「あの謝罪はわれわれを子ども扱いしたようなもので、真しな気持ちが伝わってこない。侵攻の当初から(遺跡などを破壊しないよう)警告してきたが、何の対策も講じていない」
「略奪品の回収に関しては米軍は協力的だ。米軍は03年4月の博物館略奪直後から、捜査班を総動員して何カ月にもわたって協力してくれた。その結果、紀元前3000年に制作された最古の祭事用花瓶など3000点以上が回収された」
―今、イラクで進んでいる考古学事業はあるのか。
「研究や発掘作業は全く行なわれていない。第一に治安が悪化しているからだ。第二に、国際法によると、対象国が占領されている間、外国人考古学者による調査は認められていないからだ」
「考古学者や博物館、遺産保護局の職員たちは今、ヨルダン、ドイツ、イタリア、米国、日本などイラク国外で訓練を受けている。もうひとつ重要な事業はイラク国内の考古学地区の目録作りで、これは国連教育科学文化機関(ユネスコ)などの支援で行われている。また、約20人の考古学者が訓練を受けている。イラク博物館開館準備を始めていたが、現状ではそれも中断している」
2006年06月03日01時38分