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(回答先: 事件板リンク:護憲運動家は何故殺された? 投稿者 戦争とはこういう物 日時 2006 年 5 月 31 日 02:25:28)
殺害された海洋学者は、平和運動などでも知られていた。それを邪魔に思う者も少なくなかった筈。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜(引用ここから)
「筑波研究学園都市研究所・大学関係9条の会:河井智康氏
講演レジメ」
http://peace.arrow.jp/tsc/060422/resume.html
「科学者と憲法9条の価値」
河井 智康
I.日本の科学者が世界平和に果たすべき役割
第2次世界大戦の中で、日本はアジア諸国を侵略し犠牲
を強い、また日本国民も多くの苦難に直面してきた。その
とき、本来平和を説くべき日本の科学者も、例外的な正義
派を除き日本軍国主義に加担し、時にはアジア侵略に積極
的な役割をも演じてきた。この痛苦の教訓を、今の憲法改
悪の時流に当たって、十分に発揮することが求められてい
る。それは世界平和に対して果たすべき日本の科学者の重
要な役割である。以下、3つの点で科学者の役割を考えた
い。
1.科学者の社会的責任と平和の課題
1)日本学術会議「科学者憲章」(1980)
自己の研究の意義と目的を自覚し、人類の福祉と世界の平
和に貢献する。学問の自由を擁護し、研究における創意を
尊重する。>
諸科学の調和ある発展を重んじ、科学の精神と知識の普
及を図る。
科学の無視と乱用を警戒し、それらの危険を排除するよ
う努力する。
科学の国際性を重んじ、世界の科学者との交流に努める
。
2)日本科学者会議の目的(会則、1965)
科学の反社会的利用に反対し、科学を人類の進歩に役立
たせるよう努力するとともに、国内国外の平和、独立、民
主主義、社会進歩、生活向上のための諸活動との連帯を強
めます。
これらは、戦後に日本の科学者が到達した視点である。
これらの指摘を結合して運動を展開することが求められて
いる。
2.日本における科学者の特徴と役割
人口1万人当たりの研究者数は世界1であり(日本61.7人
、アメリカ45.2、ドイツ32.2、フランス30.4、EU27.5、
…平成17年度科学技術白書)、客観的条件として科学者の
影響力は諸外国に比べて強い。
日本の民主的科学者運動は世界一流であり(日本科学者
会議、日本学術会議、世界科学者連盟の中心役など)、そ
の効果が期待される。
相対的に国民の中で信頼されている階層であり、科学者
の主張は受け入れられやすい。
3.核兵器開発に協力した世界の「科学者」の責任
核兵器の廃絶に責任を負う
核兵器時代の世界平和に責任を負う
唯一の被爆国日本の科学者は世界に訴える責任を負う
よって、日本の科学者は憲法を護る運動の先頭に立つ条
件と責任がある。
II.科学的視点で9条を考える
1.9条の世界的・歴史的価値を明らかにする
1)国際的合意を背景にした9条
1945年7月26日のポツダム宣言は、日本の非戦・非武装
を要求し、日本政府も同意した。占領の主体はアメリカで
あったが、国連がイニシャチブをとる限り憲法9条の内容
は変わらなかったと言えよう。したがって、日本国憲法9
条は国際的合意を背景に作られたものであり、世界平和に
向けた人類叡智の到達点であったと見ることも出来る。ア
メリカの押し付け憲法といった中傷は断じて当たらない。
2)核兵器使用後にできた9条
今日国際的基準とされている国連憲章は、1945年6月25
日に批准された。この中では、個別の戦争を否定しつつも
武力による自衛権を一定の形で承認している。しかし、広
島・長崎に原爆が落とされた後には「自衛権」の概念にも
疑問が生まれた。核兵器を用いた自衛が許されるか否かで
ある。そこで国連決議第1号は核兵器の禁止を謳ったが、
アメリカの妨害で未だ実現していない。日本国憲法は非武
装を義務づけており、その意味では国連の言う「自衛権」
も認められていない(憲法制定当時は自衛権も無いとした
が、今日の日本政府見解では自衛権はあるとし、そのため
の自衛隊を合憲としている)。つまり日本国憲法9条は国
連憲章を上回る平和主義に貫かれており、全力で守るべき
世界の宝である。
3)世界平和の牽引車としての9条
現在本物の非武装国(日本は入らない)は世界で27ヶ国
あり、徐々に増えている。しかしその人口はいまだ4000万
人程度であり、世界人口の0.6%である。日本が名実とも
に9条を護りこれに参加すれば、一挙に人口は2%増えるこ
とになる。これは1999年のハーグ平和アピール(世界各国
で9条と同様の決議をしようとの宣言)を実践する日本の
今日的ありようと言える。
2.自民党の新憲法草案の本質を明らかにする
1)国民だましの戦争憲法
9条第1項(戦争放棄)を手つかずに残すことであたか
も平和主義を装っているが、第1項の政府解釈は自衛のた
めの戦争は肯定しており、戦争に対しては何の制約もない
ことになる(今日ではすべてを「自衛のための戦争」と言
い、自ら「侵略戦争」とはアメリカも決して言わない)。
そして第2項に自衛軍の設置と国際協調を謳うことで、世
界どこへでも軍隊を派遣できることになる。そもそも9条
のタイトルを「戦争の放棄」から「安全保障」に変えたと
ころに、「戦争の放棄」の放棄という本音がある。
2)立憲主義否定の国民統制憲法
近代の立憲主義は、憲法によって国民の権利を定め、国
民を規制する一般法とのバランスをとるという考え方であ
る。しかるに自民党案では、憲法によってまず国民を縛り
、さらに関連法で国民をムチ打とうとするものである。は
じめに前文で国を護る気概を持てとのべ、第12条では国民
の人権や自由も「公益及び公の秩序」の範囲でしか認めな
いとしている。現行憲法での自由に対する制約は唯一「公
共の福祉」であった。つまり、自民党案は9条との関連で
、戦争(緊急時)になれば人権も自由もないのだという宣
言である。すでにそのときを想定した「新憲法」先取りの
有事立法や国民保護法も出来上がりつつある。
3)国民投票法案の悪巧み
自民党の新憲法草案は、だんだんとその真意が見えて来
つつある。自民党としても、万が一にも岩国の住民投票の
ように負けることがあってはならないと真剣である。そし
て絶対負けない仕組みを国民投票法に組み込もうとしてい
る。その最たるものが言論弾圧の仕組である。すでに民主
勢力のビラ配布の弾圧では予行演習を始めているようだが
、法案ではマスコミに対する露骨な干渉が準備されている
。とりわけ国民の新聞意見広告などを禁止しようとしてい
る。近年国の政策に対する賛成側の宣伝がめだっており、
それは取り締まらずに反対側だけを弾圧することが予想さ
れる。まさに権力側も必至の構えで臨もうとしている。
3.9条を護る道を考える
科学者は常に物事を客観的に、また全体的に捕らえるよ
う訓練されている。その力を世界平和のために発揮するこ
とが、科学者の社会的責任といえる。そして今日の9条を
中心とする改憲論は、客観的に見ればアメリカの世界戦略
に加担する世界平和の破壊者である。以下の4点を提起し
たい。
1)9条批判への反論と宣伝
9条を変えようとする根拠には、
アメリカ押しつけ論
普通の国論
敵に攻められたらどうする論
国際貢献必要論
もう古い論
勝ち組になりたい論
等がある。こうした議論に関する「想定問答集」は有効
な手段となろう。
2)改憲反対とともに日本の針路を語る
アメリカの世界支配の側につくのか、アジアの一員とし
て世界平和に貢献するかが問われていることを訴える。い
ま世界世論は急速に戦争の無い世界を求め始めており、ヨ
ーロッパ、中南米、アジアでは平和の共同社会構想が発展
しつつある。日本の針路が唯一日米安保条約の範囲内にあ
るのではないこと、アジアの一員として平和を展望するな
らば、現行憲法を変える必要が無いことを主張する。なお
今日の風潮として、「改悪も改革の内」という発想があり
、日本の将来の方向を示すことはとりわけ科学者として重
要である。
3)戦争の真実を伝えるのは高齢者の役割
今回の改憲論と、日本のかつての戦争責任への見方が連
動している。とりわけ靖国神社遊就館流の宣伝(太平洋戦
争はABCD包囲網の中で止むにやまれぬ正義の戦争だっ
たとする主張)は青年の心を刺激しやすい。それを否定す
るには自らの体験を踏まえた反論が有効であろう。平和運
動に高齢者が多いのはその意味で有利である。むしろ高齢
科学者の今日的役割として、戦争の真実を積極的に語って
いくべきである。
4)9条を護る国際世論を構築する
日本の政治は国際世論に弱いのが一つの特徴である。憲
法改定や靖国参拝は内政問題として政府は必死に潜り抜け
ようとしているが、すでにその論理は国際的には破綻して
いる。しかし国民はそれにまだごまかされている人が多い
。国際的な宣伝・普及も科学者の責任範囲である。
以上
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜(引用ここまで)
今回の事件は犯人が誰にしろ、護憲運動にダメージとなったことは間違いない。