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http://www.janjan.jp/book_review/0603/0603221236/1.php?PHPSESSID=46f89db39506fbafb6ae424f3d002c64
本書は21世紀の人類生活を展望する上で種々のことを考えさせられる高尚な本です。著者の主張を簡単に紹介すれば、EU(ヨーロッパ共同体)が目指している社会こそが人類にとって高次な世界であり、アメリカは近年益々駄目になっていくから、そういうことを踏まえて日本は今後の国家戦略を練りなさい、という主張を展開しています。
著者がどうしてここまでヨーロッパに惹かれたのかは知りません。しかし、本書で断片的に紹介されているEU憲法を読む限り、ヨーロッパ人が目指しているものが人類にとって極めて重要な挑戦であることがよく分かります。以下にEU憲法の一部を紹介します。
国内政策……「EUは人権を尊重する価値観に支えられて樹立されている」
外交政策……「外の世界との関係において、(中略)欧州連合は地球全体の平和と安全と持続可能な発展に貢献する。諸国民の間での結束とお互いの尊重、自由で公平な貿易、貧困の根絶と人権擁護に貢献する。」
経済政策……「極めて競争力の強い社会的市場主義経済に基づき(中略)、ヨーロッパの持続可能な発展めざして努力する」
憲法というのは最高法規、つまり全ての法律、法令、条令よりも上位にある強力な力です。ヨーロッパはその最高法規において、かなり理想的な条文を並べています。人権、統治システム、持続可能な経済的な安定と発展。
少し空想社会主義的じゃないかと思うほど、高邁な理想を掲げています。それ故、現実の場面でうまく機能せず、問題が表面化しています。例えば、EU本部はEU債を発行できない憲法規定や、欧州中央銀行の役割を物価安定に限定した憲法規定により、近年ヨーロッパでは高失業率と経済低迷が常態化しています。
ヨーロッパは何を人類に齎してくれるのでしょう?ドイツで新しい首相が誕生し、近く英国とフランスでも指導者が交代します。新しいヨーロッパがどう変貌し、それが世界にどんな影響を与えるのか楽しみにしながら、今後の政局を眺めたいです。
(石倉茂)
著者:福島清彦
出版社:亜紀書房
定価:2300円+税