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【天木直人 ニッポン外交の迷走】2006年3月20日 掲載
◇岩国市民が拒否した「米軍再編の正体」
岩国市の住民投票が在日米軍再編を拒否した。87%という圧倒的多数で反対の声を上げた。小泉政権とそれに迎合する御用評論家やメディアは、こぞってこの問題から目をそらそうとしているように見える。だからこそ我々は今後の展開に注目しなければならない。
そもそも、住民投票の原因となった米軍再編問題とは何か。それは今や米国にとっての唯一、最大の敵となった「テロとの戦い」に備えて、米軍の機能を、冷戦時代の国と国との戦争から、終わりのないゲリラ戦争に大転換させることである。その米国の命じるままに在日米軍基地の機能を強化しようとするのが、中間報告という名の「在日米軍の再編」なのである。
日本にとって何の関係もないアラブの反米武装抵抗に対し、日本国民を守るはずの自衛隊が米国のために動き回るのだ。中東で人殺しを繰り返す米軍兵士の生活や訓練のために日本の領土が提供されるのだ。しかも、その経費のほとんどを日本が負担する。そして、その負担は増税や年金の削減によって下流国民にしわ寄せされる。
愛国者であれば、中国よりもまず米国に、その怒りをぶつけなければウソだ。
米軍再編に対する協力を、小泉首相は、基地住民はおろか日本国民にさえ知らせることなくブッシュ大統領に約束してしまった。「中間報告」という名でごまかしているが、米国にとってはこれが「最終報告」なのだ。
それを岩国市民が拒否した。この岩国市民の意思表明は他の基地住民に影響を与えないはずはない。だからこそ小泉首相もその周辺の関係者も、「国の安全保障問題は一地域の住民の判断になじまない」などと屁理屈を並べて火の手が広がらないように躍起になっているのだ。
本来、米軍再編に協力することの是非については、政治家が国会の場で大論争して決める重要な問題である。ところが野党第1党の民主党はもはや死に体である。共産党、社民党はまったく相手にされていない。平和を謳(うた)い文句にしている宗教政党は、イラク人を殺し続ける米国に小泉首相と一緒になって加担している。小泉対米従属外交を止めようとする政治家がひとりもいない中で、井原勝介岩国市長が立ち上がったのだ。そして、それに岩国市民が呼応したのである。
それでも小泉首相は住民の反対を押し切って米国との合意を強行するつもりだが、果たして全国の基地住民はどのような動きを見せるのか。それでも一般国民は小泉首相を支持するか。退屈な5年あまりの小泉劇場の最後に、小泉さんは最大の見せ場をつくってくれた。
●あまき・なおと 元レバノン大使。1947年生まれ、京大法学部中退で外務省入省。イラク戦争に反対する公電を送り、小泉首相の対米追従外交を批判して「勇退」を迫られる。著書に「さらば外務省!」「ウラ読みニッポン」(講談社)など。
http://gendai.net/?m=view&g=syakai&c=020&no=25370
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