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イラク陸自、帰国後3人自殺 防衛庁「原因特定できぬ」
2006年03月10日07時44分
人道復興支援のためイラクに派遣された陸上自衛隊員のうち、幹部ら3人が帰国後に自殺していたことが分かった。部隊の安全確保の責任者である警備中隊長の経験者も含まれている。防衛庁は「イラク派遣に原因があるのかどうか特定できなかった」としているが、自殺だけでなく強いストレスから職場に順応できなかったり、自殺を図ったりしたケースも報告されている。防衛庁は正確な実態を把握しておらず、隊員のメンタルヘルスの見直しなど対応が急務になりそうだ。
イラクから帰国した隊員は04年1月の派遣開始以来、8次隊までに約4500人。防衛庁は「プライバシーの関係上、明らかにできない」(人事教育局)と詳細を公表していない。
関係者によると、3人の自殺者のうち1人は30歳代の元警備中隊長(3佐)で、昨夏、車に練炭を持ち込み一酸化炭素中毒死した。元中隊長は派遣期間中、日本に残した2人の部下が起こした不祥事や交通事故を気にかけ、帰国後も問題の処理に追われていたという。
警備中隊長の職務は百数十人の警備要員を束ね、指揮官を支える要職。元中隊長の部隊は現地でしばしば危険にさらされ、宿営地がロケット弾などの攻撃を数回受けたほか、市街地を車両で移動中、部下の隊員が米兵から誤射されそうになったこともあった。
元中隊長は一昨年に帰国後、地方の総監部の訓練幹部に異動。昨年あった日米共同訓練の最中に、「彼ら(米兵)と一緒にいると殺されてしまう」と騒ぎ出したこともあった。知人は「イラクでテロの巻き添えを避けるため、『米軍に近づくな』と言われていたのがトラウマになったのかもしれない」と話す。
自衛官全体の自殺者は、約24万人のうち04年度は過去最高の94人(0.04%)、今年度は70人(0.03%、1月末現在)。派遣隊員は0.07%と2倍近い。
派遣隊員の中で自殺未遂で入院したり、不眠症などで職場に復帰できなかったりするケースも報告され、帰国隊員を抱えるある師団では「数十人が似た症状を訴え、2人が職場復帰できていない」(幹部)という。
複数の症例を診療した医官は「イラクでのストレスだけでなく、帰国後の異動や転勤など急激な環境変化も要因と考えられる」と指摘している。
http://www.asahi.com/national/update/0310/TKY200603090525.html