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温故知新 −ビル・トッテン−
2006/03/02の紙面より
http://www.nnn.co.jp/rondan/tisin/060302.html
イラン攻撃を準備
米国がイランの核関連施設への軍事攻撃に向けて準備を進めているとイギリスの新聞が報じた。英サンデー・テレグラフ紙によると、攻撃対象や使用兵器などがすでに検討されており、考えられる戦略の一つには、地下施設破壊を目的としたバンカーバスターも登載するB2ステルス爆撃機による攻撃もあるという。米国はイランのウラン濃縮活動再開を「国際社会への挑戦」と非難し、イランの核問題に対して強硬な態度を貫く姿勢を強調している。なぜならブッシュ政権は、イランが“長期的には核の平和利用ではなく核兵器保有を目指しているのは間違いない”とみているからである。
イスラエルや米国がイランの核施設を爆破する計画を持っていることは以前から欧米のジャーナリストたちが言ってきたし、ブッシュ政権はイスラエルが(米国提供の兵器で)イランを攻撃する際にはイスラエルを支持すると表明している。しかし記事をよく読めば、米国がイランを非難するのはイランが核兵器を開発する「意図」を持っていると信じているからにすぎず、これは大量破壊兵器を持っていると信じて始まったイラク戦争と同じである。
明確にすべきことは、イランは核拡散防止条約(NPT)に違反してはおらず、違反して「ミニ・ニューク」や「バンカーバスター」と呼ばれる新しい核兵器を開発し、核軍縮に尽力していないのは米国だということである。
しかし米国のイラン攻撃が口だけだとしても、それだけで石油価格が高騰する。すでにエクソンモービルは二〇〇五年の決算で、純利益が前年比約四割増の約四兆二千二百七十億円と過去最高を記録している。石油産業界と深い関係を持つブッシュ政権はそれだけでも大きな利益を手にすることになる。
米英に翻弄の歴史
イランが核兵器を開発する意図があるかどうかは、イスラエル、ロシア、パキスタン、インド、米国(ペルシャ湾とイラク)とイランの周りは核保有国だらけで、核を持ちたいと思ってもおかしくない。すでに世界には数万個の核弾頭があり、数個増えたところで急に危険だからやめさせろというのは理屈にあわない。それでも米国がイランに核兵器を持たせたくないのであれば、脅しや命令ではなく対話しかない。しかし不正直な米国政府にそれを期待することはむなしい。
また米国はイランをテロ支援国家だとするが、米国がイラクでやっていることこそテロ行為以外の何ものでもなく、また他国がNPTの規制をイランの正当な権利を押さえ付ける圧力として使うなら、NPT尊重の立場を見直すこともあり得るとイランのアフマディネジャド大統領が言うのは当然である。なぜならイスラエルはNPTを無視して、核弾頭を二百−五百個も保有している。インドとパキスタンも条約を無視して核兵器を開発し、パキスタンに至っては公然と核技術を輸出しているからである。
イランの歴史をみると米英に翻弄(ほんろう)されるのは初めてではない。一九五〇年代初め、民主的に選出されたイランの首相は米英の諜報部によって失脚させられた。これによって米英に支援されたシャーが独裁政権を打ち立て、国民の自由を抑圧する、近代まれにみる恐怖の警察国家が作られた。その独裁統治は一九七九年のイランイスラム革命となり、ホメイニのもとイスラム共和国樹立につながった。新政権は反欧米的姿勢を持ち、特に対米関係は一九七九年にアメリカ大使館人質事件が起きた。一九八〇年、イラクの侵攻によってイランイラク戦争が勃発し一九八八年までそれは続いた。イラクのサダムフセインを支援したのが米英だったことも忘れてはならない。
ドルの崩壊恐れる
ではなぜ米国が今になってイランを攻撃するのかは、イラク戦争を振り返ればいい。イラクは原油取引をドルからユーロ建てに切り換えたためにやられた。原油がユーロ建てになりドル一極体制が崩れればドル離れが速まり、貿易で米国に対して出超の日本や中国などから輸出代金が米国に還流しなくなるほど米国に都合の悪いことはない。米国の貿易赤字と財政赤字をみるといい。そしてイランは三月には石油をユーロ建てにする予定だという。うそつきの米国が恐れているのはイランの核の野望などではなく、ドルの崩壊だ。
イランは米国よりもずっと長い歴史を持ち、分別のある人間によって統治されている。うそのプロパガンダを流布し、イラクだけでなくイランにまでも攻撃準備をしている米英に日本政府を追随させることだけは分別のある日本国民がしてはならないことである。核の脅威はイランではなく米国である。(アシスト代表取締役)