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発狂して死んで行く現代西洋と、そしてこの西洋にしがみついて同じく狂死して行く現代日本。
更新 平成18年03月03日23時20分
平成十八年(二〇〇六年)三月三日(金)
(第一千六百四回)
○ジョン・グレイ曰く。
○「我々が十九世紀から受け継いだ社会理論は、
工業化(インダストリアリゼーション)は、生活に必要な物資の欠乏をなく
させることに成ると教える。カール・マルクスとハーバート・スペンサーの
間には、多くの点で意見の対立があるが、しかし彼らは、工業化が人類の物
質的窮乏と言う最悪の形態を追放するであろうと言うことについては、不動
の信念を共有した。かくして、過去に於て、人類を苦しめた窮乏から来る戦
争をもなくさせることになろう、とも。……
「この十九世紀の幻想的教義は、今でも、主流派経済学の根底をなして居る。
殆んどすべての経済学者にとって、欠乏などと言うものは存在しない。
問題は、価格のみ。もしも、自然資源に対する需要が増大すれば、価格が上
昇するであろう。かくして、新しい資源が発見されるであろう。或は新しい
技術が発展し、そして経済的成長は続くであろう。……」
(ジョン・グレイ著「異端派〈HERESIES〉」、五十九頁。二〇〇四年、未邦訳)
○ここで、
ジョン・グレイ(オックスフォード大学政治哲学教授。現在ロンドン スクール
オブ エコノミクス、ヨーロッパ思想史教授)が、述べて居ることはその通り。
○ここで、ジョン・グレイは、
ハーバート・スペンサーを問題にして居る。
○「スペンサー」は英国ではありふれた名前である。
○今、歴史に残って居るもっとも有名なスペンサーは、
エリザベス(一世)女王時代の詩人、E・スペンサー E・Spenser(一五五二〜
一五九九年)であろう。
○しかし、日本人にもっとも大きな影響を与えたスペンサーは、
社会進化論哲学者ハーバート・スペンサー H・Spencer(一八二〇〜一九〇三年)
である。
○日本は、明治前期、スペンサーを熱狂的に受け入れた。
○その状況を、中央公論社、「世界の名著」第三十六巻「コント、スペンサー」の
解説の中で、清水幾太郎が詳述して居る。
○しかし、今では、日本人はこのスペンサーを忘れた。
○忘れたと言っても、事実上、スペンサーは、今の日本人の常識と化して居る。
○前出の引用文は、
現代西洋=日本に於て、確固たる「ドグマ=公理」である。
○「ドグマ=公理」は、
証明の必要のない、自明の真理、又は法則、を意味する。
○しかし、その「公理」なるものは、
すべて、或る特定的の歴史的條件のもとでのみ通用する。
○太陽は東から上って西に沈む。
これは公理とされる。
○しかし、太陽にも寿命はある。
○太陽も死ぬ。
○そして爆発する。
○そのとき、太陽系も消え、
○太陽は東から上って西に沈む、と言う地球の人間にとっての公理も
消失する。
○工業化は人間に無限の進歩を保障すると言う。
○これは、公理などではあり得ない。
○あり得ないことを信ずることとは、狂信であり、妄信であり、
○結局のところ、発狂である。
○現代西洋人=日本人は、完全な気違い、狂人、以外の何ものでもない。
○そのことを、目覚めた者は、
明確に、明示的に発言しなければならない。
(了)
【参考文献】
JHON GRAY
HERESIES: AGAINST PROGRESS AND OTHER ILLUSIONS
二〇〇四年