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□イラク戦争の真の目的は? アラブ識者は地域分断と大イスラエル主義とみる [アルジャジーラ]
http://news.livedoor.com/webapp/journal/cid__1726950/detail
イラク戦争の真の目的は? アラブ識者は地域分断と大イスラエル主義とみる
【アルジャジーラ特約9日】アルジャジーラのアハメド・ジャナビ記者はこのほど、米国のイラク侵攻の真の動機をアラブ、イスラエルの識者の意見にさぐる記事を公にした。以下は、その要旨である。
米国のイラク武力侵攻と占領の動機について、さまざまな説明がなされてきたが、イデオロギー的あるいは宗教的な意識が真の動機ではないかという議論が今も続いている。米国が「対テロ戦争」を2001年9月のできごとに対する「十字軍」と説明したことを、アラブ・イスラム世界で多くの人々を怒らせているが、そうした人々はこの戦役が聖書を間違って解釈した宗教的な動機によるものだと考えているのだ。
ブッシュ米大統領はこれまで、こうした立場から距離を置こうとしてきた。「十字軍」という言葉は大統領のボキャブラリーからそっと外された。が、しかし、中東では、これは政治的な目的のためで、確信がなくなったからではないとみる。
イラク・イスラム学識者協会(AMS)スポークスマンのムハンマド・アヤシ・アル=クバイシ博士は「政治家の間では、論議を招きそうな問題で発言しようとする際に一般的なことがある。(最初に)発言しておいて、否定的な反響が起きると、『その意味での発言ではない』と言うのだ」と語った。
キリスト者シオニスト問題の専門家であるムハンマド・アル=サンマク博士は、米国での決定過程で宗教が中心的な役割を果たしていると信じている。同博士は「それは秘密でも何でもない」として、「米国の大統領のほとんどが宗教的で、ブッシュもその一人だ。彼らは間違いなく宗教的信条に従って行動している」と述べ、「例えば、レーガン大統領はテレビ演説で、自分たちの世代はアルマゲドンの戦いを経験するだろうと予言した。これは非常に聖書的だ。自分が宗教的信条に支えられていると考えなければ、そんな言葉を使う人はいないだろう」と話した。
さらに、同博士は「彼らは、大イスラエルが実現し、すべてのユダヤ人がそこに集合するまで、キリストは再臨しないと信じているのだ。彼らはそのための道を切り開くために働くべきだと思っている。大イスラエルを助けることがたくさんある(イラク戦争の)理由の一つだ。イラクは13年間も経済制裁を受けてきた結果、その国の政府と軍隊を抹殺されてしまう戦争となったが、それはイスラエルの平和を全く受け入れない政府だったからだ」と述べた。
しかし、米国防省の顧問をしていたハーラン・ウルマン氏はアルジャジーラに対して、ブッシュは単に「混沌と暴力の状態」にある中東の安定化を望んだのであって、宗教が理由ではないとして、「ブッシュの狙いは地域に平和をもたらし、民主主義を推進するためにイラク戦争を起こすことだった」と語った。「この目標を達成したことで、地域に幾つかの前向きな変化がもたらされた。民主主義が導入された。イラクはイスラエルを承認するだろう。なぜなら、両国とも民主主義国家になるだろうし、イランとイスラエルの間でも解決があるだろう」と言う。
サダム・フセイン政権当時、イラクとイスラエルの公式な立場の対立は過去20年間にわたり、紛争とうわさのタネになっていた。フセイン大統領(当時)の息子のウダイは父に対して、ブトロス・ガリ国連事務総長(当時)のきょうだいが中東和平プロセスにイラクが参画する代償に、イラクへの経済制裁を解除するという提案をしていると書き送っていた。
アルジャジーラは、フセインの秘書が1994年に書いた返書コピー入手した。その書簡は、フセインがイスラエル承認と経済制裁解除の代償としての和平プロセス参画を拒否することを明言している。
ヨルダンの汎アラブ主義の民族主義者であるアハメド・アル=ナジダウィ氏は、イスラエルに対するフセインの姿勢が2003年のイラク侵攻につながったとして、「サダム・フセインは、米国がアラブ人の記憶の中から消してしまいたいアラブ史の一時期の原則を代表していた」と語った。彼は「あの戦争には、アラブ人の頭の中から、イスラエルと外国によるアラブ人固有の地の占領を拒否する価値観を除去しようとする意図があった」「サダム・フセインの裁判でのイメージこそ、彼の国が占領状態にある中で、米国がアラブ人とイスラム教徒の心の中に植え付けようとしているイメージなのだ」と語った。
アル=サンマク博士は、古い歴史がイラク占領に一定の役割を果たしていると言う。「約2500年前、バビロンのネブカドネザル大王がパレスチナのユダヤ人領に侵攻し、ユダヤ人をバビロンの虜囚にしたことで、(イスラエル支持の米国政治家は)イラクに復讐することを望んでいる」と語るのだ。
他にも、米国の政治家が中南部の都市ヒラに近い古代遺跡バビロンを頻繁に訪れることを指摘するイラクの識者もいる。
昨年11月21日、駐イラクのカリルザド米国大使とバイデン米上院議員(民主党)はイラク憲法に対する支援と復興計画の開始を発表する場としてバビロンを選んだ。
イラクの政治評論家、リカ・マッキ氏は「このバビロン訪問は、エジプトのナイル川からイラクのユーフラテス川に至る大イスラエル建設のスローガンがあることを証明している。それが今も目標なのだ」と述べた。
しかしイスラエルの民衆的なシオニスト組織であるレヴァヴァの最高指導者であるダヴィド・ハルヴリ氏は「イラク侵攻の命令が下った時、イスラエルの将来がいかなるレベルでも要因であったとは思わない」とアルジャジーラに語った。同氏は「米国はユダヤ人の安全のために兵士を戦場に送りはしない。兵士たちは多かれ少なかれ自国の利益のために戦争に行くのだ」と述べた。だが、同氏は、サダム・フセインが「ユダヤ人の敵」だったから、フセインが権力の座を追われたことには満足の意を表明した。
ウルマン氏もまた、イスラエルの安全保障はイラク戦争では二次的な問題だったとする。
にもかかわらず、アラブの識者は、米国と西側同盟国はイラクで「分断と征服」の政策を実施したと信じている。イスラエルの戦略的思想家、オデッド・イノンが1982年に書いた報告「1980年代のイスラエルのための一戦略」を引用して、イラクの解体がイスラエルにとって必要だったというのである。
アル=ナジダウィ氏は、米国のイラク戦争はイラクをばらばらにすることを意図したとして、「間違いなく、米国はイラクを崩壊させたが、それはイラクがアラブの団結を求め、イスラエルとの握手を拒んだからだ」「今、彼らはイラクで何をしているのか。この国を分裂するために何でもやっている。最終目的はわかっている。ダチョウが砂の中に首を突っ込んで隠れたつもりになっているようなものだ」と語る。
アル=サンマク博士は、オットマン・トルコの支配下にあったアラブの地を英仏の領土に分割した1916年のサイクス・ピコ協定を手本にして、分割することが中東における(西側の)戦略目標であると信じる。同博士は「彼らは口には出したがらない。連中はコントロールしやすい小国家群を作るために仕事をしているのだ。ユダヤ人国家の安全を図るのに最新式の武器はいらない。真に安全なのはアラブ諸国をぶちこわしてしまうことなんだ」と語った。
しかし、ハルヴリ氏はイラクにおける「米・欧帝国主義」がイスラエルの主権にとっても脅威となる前例とみなしている。「連中は、わが国にも彼らのルールを強制するかも知れないし、多いにあり得る。米国と欧州連合はみなキリスト教国だ。もちろん、彼らの信仰は、彼らが「民主主義」で啓蒙しようと国を選ぶ際、その政策と決定に影響を及ぼす。民主主義は彼らの(イラク侵攻の)言い訳にすぎないさ」と語った。(翻訳・ベリタ通信=日比野 孟)
2006年02月21日17時08分