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机の上の空 大沼安史の個人新聞
http://onuma.cocolog-nifty.com/blog1/2006/01/post_ffd4.html
〔重要NEWS〕 CIAがイランに「核の設計図」を提供 NYT紙記者が新著で暴露 亡命ロシア人科学者、運び屋に ウィーンのイラン大使館に投函 その名を「マーリン作戦」 設計図のなかに「欠陥」を仕込む イラン当局がその「欠陥」を発見、改善し核開発の恐れ
英紙ガーディアン(電子版、1月5日付け)に、衝撃的な暴露記事が掲載された。
ニューヨーク・タイムズ紙のジェームズ・ライセン記者による、同記者の新著『State of War』の核心部分の要約。
そのポイント部分を紹介しよう。
それによると、米国CIAは2000年2月、当時のクリントン大統領の実行許可を得て、亡命ロシア人科学者をエージェントとして使い、「欠陥」を仕込んだ核の設計図を、ウィーンのイラン大使館に投函した。
暗号名「マーリン作戦」という名のオトリ作戦で、建前をしては、「欠陥」を仕込んだ核起爆装置の設計図をイラン側に手渡すことで、イランが進めている核開発を、その設計図に基づくものに変更させ(つまり、それまでの核開発を棚上げにさせ)、最終的には核実験の失敗、核開発の頓挫に追い込むのが狙い。
オトリの設計図を入手したイラン側の動き、出方についてはCIAのスパイなどを使ってモニターを続けていくことになっていた。
作戦実行にあたっては、CIAの手引きで米国に亡命していたロシア人科学者が、イラン側にロシア製核起爆装置設計図を手渡す実行エージェントに選ばれた。
ロシア人科学者は、サンフランシスコの高級ホテルで、CIA高官、米国人核科学者が同席した会議に連れ出され、作戦の説明を受けた。
ワインも出たその席で、ロシア人科学者は、イラン側に手渡す予定の、「起爆セット」とも言われるロシア製核兵器の起爆装置、「TBA480高圧ブロック」の「設計図」なるものを見せられた。
その「設計図」はたしかに本物だったが、ロシア人科学者はその設計図に「間違い」が含まれていることを、その場で発見した。
CIA側は、その場でロシア人科学者が設計図の「欠陥」を発見してしまうとは思っていなかったらしく、同科学者の指摘に戸惑った様子だった。
「欠陥」はたしかに仕込まれてはいるものの、核開発の要の部分にあたる起爆装置の設計図をイラン側に渡すことは、あまりにも危険の大きすぎる賭け。
動揺するロシア人科学者に対してCIA側は、これはあくまでも設計図を入手したイラン側の出方を見るためのオトリであると説明し、作戦への協力を求めた。
「マーリン作戦」で、ロシア人科学者が演じたのは、金のために核の設計図を売り込む、貪欲なロシア人科学者の役回り。
CIAのケース・オフィサーが1人、付きっ切りでロシア人科学者を指導し、実行エージェントに仕立て上げた。
このケース・オフィサー自身、「欠陥」が仕込まれているとはいえ、ほんものの設計図をイラン側に提供することに不安を覚え、CIA上層部の考え方を疑問視していたという。
このような「オトリ設計図」による撹乱作戦は、通常兵器では行われたことがあるが、核兵器ではこれが初めてのことだった。
ロシア人科学者のウィーン入りは、核問題を担当するイラン高官のウィーン入りに合わせたものだった。
冬のウィーンの街を、ロシア人科学者は、核拡散防止にあたるIAEA(国際原子力機関)の本部所在地で、核の設計図をイラン側に手渡すというアイロニーと不安を胸に、イラン大使館が入居する5階建てのビルに向かって歩いていた。
携えていたのは、CIAから開封しないよう指示されていた、設計図入りの封筒。
ロシア人科学者はCIAの指示に従わず、彼自身の今後の身の振り方を考え、「設計図の中には『欠陥』が仕込まれている。その欠陥を発見することに、わたしは協力できる」旨の「私信」を、封筒に忍び込ませていた。
ウイーン中心部の北端にあるそのビルで、ロシア人科学者は封筒をイラン大使館のポストに投函したあと、オーストリア公安当局にとがめられることなく、無事、ウィーンを脱出した。
投函から数日後、米国の秘密情報機関、NSA(国家安全保障局)はウィーン入りしたイラン高官が急遽、予定を変え、イランに帰る航空便のチケットを予約したことを確認した。
設計図の重要性に、イラン側が気づいたことが、これによりほぼ確認された。
「マーリン作戦」はクリントン政権末期に始まり、ブッシュ政権に引き継がれた。
米側は設計図手渡し後、イランの核開発の動向を探り続けていたが、やがて致命的な失策を犯すことになる。
米CIAの女性担当官が、あるイラン人スパイのもとに、送ってはならない情報をメールで送ってしまったのだ。CIAがイランに張り巡らしたスパイ・ネットワークのほとんど全部が書かれた機密情報だった。
あとでわかったことだが、そのイラン人スパイは、ダブルエージェント(二重スパイ)で、CIA本部から流れた情報は、イラン側に筒抜けになり、その結果、2004年までに、イランのスパイ・ネットワークは壊滅させられてしまった。
これにより米側は、オトリの核の設計図に基づく、イラン核開発の進行状況に関する情報収集を行えない事態に追い込まれ、今に至っている。
イラン側が自力、あるいは他国の核専門家の協力で設計図に仕込まれた「欠陥」を発見し、克服すれば、ブッシュ政権のいう「悪の枢軸」の代表格であるイランが核開発にすでに成功しているか、間もなく成功する、かのどちらかである。
〔大沼 解説〕
以上が、ライセン記者の要約記事を、大沼が「再要約」したものだが、同記者の暴露により、ブッシュ政権がイランの核開発に異常なほど神経を尖らせている謎が解けたような気がする。
なにしろ、自分たちが「設計図」をイラン側に供与していたわけだから。
ひどい話である。
以前、本ブログで、オランダの前首相が、「イスラムの核の父」、パキスタンのカーン博士をCIAが泳がせ続けていた事実を暴露したことを紹介したことがあるが、CIAにはどうも、こういうトンモナイことをしたがる傾向がある。
いわゆるマッチポンプというやつである。
ところで、ライセン記者の今回のガーディアン寄稿記事でなかで、特にわれわれ日本人が見逃せないのは、この「マーリン作戦」がブッシュ政権に引き継がれるにあたり、「北朝鮮などその他、危険な国家に対し繰り返すこと」が視野に置かれたのではないか、というくだりである。
つまり、北朝鮮に対しても、CIAにより「欠陥入り核の設計図」が手渡された可能性がある、というわけだ。
「悪の枢軸」に「核の設計図」を渡す「悪の演出国」アメリカ。
ライセン記者の今回の暴露に敬意を表するとともに、ニューヨーク・タイムズ紙にあって、NSA国内傍受問題取材の最前線で活躍する同記者の今後の健闘を祈る。
⇒
http://www.guardian.co.uk/frontpage/story/0,16518,1677541,00.html
Posted by 大沼安史 at 12:56